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適当男の転生軍師 2  作者: TUBOT
テルシオとの戦い
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ハルタナ

 フェリエは大きな町にまでやってきている。

 天使型の使い魔を連れているというのは、護衛を百人雇うよりも効果のある護衛だ。

 フェリエは、自分が連れてきた営業の上手い社員に交渉事は任せて、自分は交渉が成立したら立て看板を立てる役をしている。

 まさか、この隊のリーダーがそんなドカタ作業をしているとはだれも思わないだろうし、フェリエには自分の家の社員達の命を守るという役がある。

「それも必要ないでしょうがね」

 レイティエルがいるだけで十分にその効果はある。彼の姿を見るだけで大抵の奴は逃げていくだろう。

 自分は作業着用のジーンズをはいて、赤い髪はいつもはきれいに結い上げているが、今は後ろに一つに束ねている。どう見ても作業員の中の一人にしか見えない。

 すこしはフェリエも頭を使う事を覚えている。この完璧な変装で自分の事を狙う敵をやり過ごすことも可能だろう。

 今は町の真ん中にあるギルドの前で馬車の荷台に乗って待機をしている。ここはかなり発展をしている町で民家も石造り。外敵を阻むための壁も真っ白な大理石でできあがっている。しかも、その壁は十メートルあると言われフェリエが高く見上げないと頂上を見る事はできない。

 そこそこ腕のいい建築家がデザインをしているのが分かる、きれいな屋根に屋根の端にはガーゴイルの像が飾られている街のギルドの建物。

 窓がいくつもあり窓越しにも中でギルド員が何かの仕事のために書類仕事をしているのが見える。その中のいくつかの窓では何事か? と、いった感じでいぶかしげにしてフェリエ達の事を見下ろしている人がいた。

 ギルドの建物の中から社員が出てくるとフェリエ達に向けて両手で大きく丸を作った。交渉がうまくいった合図である。

「行きましょう!」

 フェリエは立て札用の角材を持って街の中心にある広場のど真ん中にそれをたてかけた。

 フェリエがまっすぐ立つように支えた角材を社員が槌を使って打ち込んでいく。

 それに糊を付けて、看板を立てかけ新聞を立て看板に張り付けたのだ。

 それからフェリエは鐘を鳴らす。

「号外! 号外! 平民が騎士相手に勝利した事件だよ!」

 フェリエ自身が鐘を鳴らしながら叫んだ。

 それに、反応して人が家の中から出てくる。やはり「平民」が「貴族」に勝ったという話に興味を持ったのだろう。

 十分人が集まってきたのを確認すると、フェリエは馬車に指示を出して次の町に進もうとする。

「すまない。間違っていたら失礼なのだが」

 馬車の外からこう声がかかった。交渉役の男に目で指示を出すと、交渉役の男は真顔を営業スマイルに変えて馬車から出ていった。

「何の御用でしょうか?」

 馬車の幕をくぐった社員はにこやかにして話しかけた。

「この馬車にフェリエ・ドロランドというご婦人が乗っているだろうか?」

 話を聞くとずいぶん丁寧な話し方だ。しかも幼い女の子のような声である。

「いないと言いなさい」

 フェリエは隣に座る社員に小声で指示を出した。脇腹を肘でつつくとその社員は小さく首肯をした。

「いないぜそんな奴」

 馬車の中から声を出すとそれを察した交渉役の社員も説明をした。

「どうも我々の事ではないようです。申し訳ありませんがそのような名前の者はおりませぬ」

 ペコリと頭を下げた社員。それから馬車の中に戻ろうとした。馬車の幕を上げた時フェリエはチラリと相手の顔を確認した。

 その声の主はフェリエと年も変わらないような子供であった。あんな子がこんな丁寧な話し方をするというのに少し疑問を感じたフェリエ。

「いるではないですか」

 その声はフェリエも身震いするような冷たい声だった。

 交渉役の男を蹴り飛ばし馬車の中に強引に入り込んだ。腰にあるナイフを抜きフェリエに向けて突き刺していった。

「レイティエル!」

 フェリエは指示を出すがレイティエルの反応も遅い。ナイフはフェリエの喉元にまで届いて行く。

 だが、そのナイフはフェリエの喉の直前でピタリと止まった。

「私はロドム=エーリッヒからの依頼を受けた『ハルタナ』だ。フェリエ=ドロランドの護衛を依頼されてきた」

「また同じくらいの年の女の子ですか」

 フェリエはうんざりしながらハルタナを見た。ロドム絡みでやってきた女の子。当然かわいい。この切れ長の目を見ると、あと数年たてば『綺麗』と評されるような美少女になるだろう。

「話を聞いていなかったか? それとも私が女だと言うのでバカにしているのか?」

 イラついた様子のハルタナ。ハルタナはナイフを腰に戻すとフェリエの事を値踏みするようにしてみた。

「依頼主からの伝言だ『僕が危険な事ばかりしていると言うが、君だって危険な事ばっかりしているじゃないか。ハルタナが僕からの刺客ではなく敵からの刺客だったら君はもう死んでいたぞ』以上だ。ずいぶん仲のいい話だな」

 前回の村での意趣返しというつもりだろう。やっぱりロドムはいい性格をしているとフェリエは改めて思った。

「しかし、なぜあなたが送られてきたのですか? 経験豊富なベテランには見えませんが? ロドム様が金をケチりでもしましたか?」

 ここでロドムの払いが悪いだのという話であれば後でいびってやろうと思ったのだ。

「金は十分もらっている。ギルドの奴らはラルファル帝国にたてつくのを嫌がっていてな」

 アサシンギルドの面々もラルファル帝国に買収をされているという事だろう。金の弾薬をケチるからこうなる。戦争の前には金が飛び交っていくものだ。こうやって主要な箇所を金で買収するのは基本中の基本である。

「あの女王だし。あの日和見な大臣だし」

 あの二人がまったくこういう戦争前に必要な作業をせず、和平交渉でいいように負け、あらゆる権利を放棄してしまったしまったツケがやってきているのだ。

 少し前のフェリエならこんな事は考えもしなかっただろうが今のフェリエはその事でイラついた。

「さっきと全く違う話し方ではないですか? 依頼者に向けてタメ口をきくなんて、教育がなっていないんじゃないですか?」

 不機嫌なフェリエは言葉使いの事をつついて嫌味を言うが平然としたハルタナは一言だけ答えた。

「君主の君主は君主ではない」

 契約をした人間だけが君主である。例え、依頼者の上官だろうが君主だろうが関係ない。

 金を払った人間に従うだけであるという事だ。

「こういう奴は、金のためならなんでもするから」

 ハルタナの事を横目で見るフェリエ。ハルタナはそれを気にもせずに前を見据えていた。

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