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適当男の転生軍師 2  作者: TUBOT
テルシオとの戦い
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貴族の危機

 あれから、俺は三人からの説教を受けた。

 それは大した問題ではないと、言いたいところだが、俺が言ってはいけないな。

 説教は割とあっさり終わったのだ。やっぱり有事だしこんな事にかまっていられる状態ではない。それに、あそこでの戦いには大きな意味があった。

 平民が騎士達を殺したという事実である。この事はフェリエの新聞で大きく取りだたされた。

 平民たちにとっては、いままで怖くて手を出せなかった騎士達。だがクロスボウという簡単な作りの弓一本でその常識は覆された。

 しかも、今回の戦争では貴族たちはまったく戦っていないのだ。

 平民は普段ふんぞり返っている分こういう有事に彼らは命を賭けて戦ってくれるという期待をしていたのが、騎士を少しばかり敬う気持ちにさせる理由であったのだが、この状況になって戦いもしないという事実に、平民たちの不安は最高潮になった。ところどころで騎士や貴族を襲う事件が頻発しているというのだ。

「騎士団は大変そうですね」

「まったく、私達には『資金不足で戦えない』などと言っておきながら」

 シィとネリフスが二人で相談をしているのを俺は黙ってみていた。

 資金不足で戦えないだと。そんなの見え見えのウソだ。

 女王が騎士団への予算をかなり絞った事に対する抗議のつもりもあったのだろうが、その言い訳が今では自分の首を絞めていたのだ。

 大きめの町には自警団なんてものが組織されまくっているという。本来治安を守るのは騎士などの貴族の役目だ。

『貴族の力には頼らない』

 そういう意識が平民たちにも芽生えてきた証拠だ。これではこの先ヤバい。

 まあ俺にとってやばいってのはある。俺だって貴族の一人だ。こうなってしまえば特権が危うくなる。

 できる事なら親衛隊の方々には目を覚ましてもらいたい。このまま、この状況を放っておくと君らの特権が危ないですよーって気づいてくれないといけないと思う。

 まあ、気づかないだろうし俺がそんな事を親衛隊に言ったとして『何かの罠か何かではないか』と、疑われるし、そもそも危険が身に迫っているわけでもない限り貴族たちは動かない。

「それにこの状況はラルファル帝国がこの国を攻め滅ぼせば一気にまくれる」

 この国そのものがなくなれば、新体制となり貴族たちの再編が行われる。そんときにでも貴族の力を平民に見せつければいい。

 奴らはそう思っているから動かないのだ。

「国のために一番に命を賭けないといけない親衛隊や騎士達は、そう考えて戦うのを放棄している」

 聞こえていたのね。

 ネリフスは俺の方を見ている。俺に対して悪い感情しか持てちないのが分かる冷たい目であった。

 まあ別にいいけどね。ネリフスと仲良くなりたいなんて思わないし。

 問題はネリフスが何を考えているか? ひいては女王の狙いは何か? だ。

 この有事に自分の利益を守る事しか考えずに戦う事を放棄している貴族や騎士達に、彼女らは怒りを感じているのだろう。

 今度は口に出さないようにして考える。

 この国を変えようとしていないか?

 俺は前の世界の知識を持っており、自由思想、共産主義なんかも話もした。この世界の人間には王のいない国の存在なんて全く考えられないようで俺の言葉は軽くあしらわれた。

 その事を耳にしているのではないだろうか? もしかしたら女王はこの国の再編をしようとしているのではないだろうか?

「なんだ? 気持ちわるい。何か言いたいことでもあるのか?」

 口には出さないが俺の視線はしっかりとネリフスに届いていた。

「この国を変えようとしているね?」

 ネリフスはそれを聞いて頭を掻いた。

 まあ、敵国に侵略をされても戦わない貴族達に価値などないからな。

「君らが考えているのは独裁政権と言われていて、前の世界では嫌われていたんだよ」

 女王達は平民の地位の向上を考えているのだ。そして、革命を起こし民衆の支持を集めて独裁政権を作ろうとしている。

「いらない事には頭が回るんだな」

 俺の事を忌々しそうにして見る。

「私達が政権を取ったらお前にも地位が与えられるぞ。それに、貴族が戦わなければいけない時代は終わる。戦うのは平民出身の志願兵だ。楽して食えるんだぞ」

「この話はそこまでにしてくださいな」

 俺とネリフスの会話に割って入ってきたシィ。

「そんな話は敵を撃退してからでもいいです」

「それでは遅いだろう」

 俺は今フェリエがそこらじゅうの村や町に新聞を配りに行っているのは知っている。その内容は今の貴族がいかに無能か? クロスボウがいかに有能か? を宣伝する内容になっている。

 寒村の人間が百人の騎士達を返り討ちにしたのだ。このニュースは平民たちの間に希望を与える内容になっている。

 自分の大切な人を守る力を自分も持てる。騎士達の力など借りなくても自分達も戦える。騎士や貴族の力などあてにならない。自分の身は自分で守らないといけない。

 この意味を理解している者は貴族たちにはいない。

 そうで『ラルファル帝国は強大だから多少なりイメージが悪くなっても後でどうにでもなる』とでも考えているのだろう。

 日和見な貴族たちはその事に期待し『動かない』という選択を取っているのだ。

 そういう事ならいいのだが。

「フェリエに護衛ってついているかい?」

「あの人の護衛が必要ですか?」

 シィは俺の質問に逆に質問を返してきた。だが言いたいことは大体わかる。だがフェリエだって無敵じゃない。食い物に毒を混ぜられたら? 毒の霧を噴射されたら? 寝こみを襲われたら? そう考えるとフェリエを殺す方法がいくらでもあるのだ。

「護衛くらい自分で雇えますよ。あの人は商家のお嬢様なんですから」

 今はこちらに進撃をしてくる敵に集中しないといけない。もうそろそろ大きな街に敵軍が到着をするころだ。ラルファル帝国はこの町に狙いを定めるだろう。

 敵を返り討ちにする方法を考えないといけないのだ。

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