ロドムへの説教
『まだピンチではありませんか?』
フェリエがシィに向けて言ったことだ。
「ギリギリまで待ちたいです。もう少し御辛抱を」
シィはその言葉に不機嫌そうな声を返す。
『言うまでもないでしょうけど、助けるのを待ちすぎて、ロドム様がやられてしまったとしたら、どう責任をとるつもりですか?』
フェリエだって、敵の軍勢を一瞬で全滅させることができるわけではない。
確かにフェリエなら敵を壊滅させることはできるだろうが、どうしても時間が必要になるし、その間に、ロドムが殺されたり、村人たちが人質に取られたりしたら、いくらフェリエが強くても何もできなくなる。
『その事も考慮に入れて指示をしてくださいね』
不機嫌そうなフェリエは言う。フェリエはシィのような、熟考派ではない。最近思慮が深くなったとはいえ、頭より体を使う方が得意だし、シィやロドムには相変わらず知略で負けている。
『策士策に溺れるという言葉もありますよ。自分の頭を過信しないでくださいね』
フェリエの不機嫌な話し方。
シィもその言葉には肝を冷やした。
「すぐに突入指示をした方がよくないか? お前、あの赤髪の奴に殺されるぞ」
ネリフスはシィに向けて注意をするが、シィにだってシィなりの考えがある。
「私達が何とかしてしまうから、あのひとも無茶をするんです。これから先の事を考えたら、痛い目にも遭ってもらわないと……」
ネリフスが疑問げな顔をする。騎士としてはそんな事を考えるなんて、思いにもよらない事なのだ。
「お前はあいつの上官か何かか? 部下が上官のフォローをするのは当然だ。『私達が何とかするから無茶をする』ってのが悪いことには思えん。主人には忠誠を誓うべきだ」
「上官であれご主人であれ、苦言をいう事ができる者こそが本物の忠臣というものですよ」
はしたなくも、ネリフスはその言葉を聞いて、「ちっ……」と舌打ちをした。
「お前と口喧嘩をしても勝てないという事はよくわかった」
「私はまだ言い足りないですよ」
シィはそれから言う。
「フェリエ様。こらえてくださいね。ネリフスのような思慮のない考えなんかに感化されてはいけませんよ」
『どうでしょうね……私には半分ネリフスの方が正しいような気がしますわ。残り半分はあなたが正しいとも思っていますが……』
シィはその言葉に黙る。
フェリエにも考えがある。彼女の意見も、最近では実のあるものになってきているのだ。シィも単純にフェリエを言い伏せればいいというものでもないと分かってきている。
『指示の遅れは許しませんわよ』
そう言い、フェリエの通信は途絶えた。
自分の責任が重大だと改めて感じたシィは、手に汗を握りながら、事の成り行きを見守った。
「これは負けた……」
村日達は撃つ、クロスボウの矢が撃ち出されるが、それをものともせずに、敵の攻撃が続いた。
どう見ても、このままじゃ、こちらが蹂躙される……
「ここまでか……」
俺は覚悟をつける。ここで俺の人生は終わりであると、本気で覚悟をした。
『覚悟をしましたか……』
シィからの通話である。俺に対して、戦って果てる事に対する感嘆の言葉であると、その時は考えていた。
後になって、シィは『なんで逃げる事を考えないのか?』というつもりで、俺が死を覚悟したことに対して、非難げな冷たい言葉を書けたのであると聞く事になる。
この時の俺の考えは、後々反省の材料として、フェリエ達から非難の的になっていく。
『フェリエさん! GOです!』
通信越しにそう声が届いた。
「それはいったい!」
俺は、思わずそう言ってしまった。その直後、上空から光の柱が敵に向けて降り注いでいく。
「これは……ゴッドスピア……」
フェリエが近くに来ていたのだ。その事に気付いて、俺の心は高鳴った。
この事も後日になって、説教のネタにされる。
フェリエの力を頼らないとやっていけないなら、最初からフェリエを呼べばいい。
俺はもともと俺が自分で決めた戦いであるため、一人でこの問題を解決しないといけない。という、間違いの塊の考えのせいで、死にかけたではないか……とな。
俺が、このヒーロー参上という状況に胸を躍らせていた時、シィやフェリエ達は、ものすごく冷めた目で俺の事を見ていたのだ。
「なんだよ! フェリエが来ているなら早くこっちに来させれば……」
この言葉。この言葉から、俺はフェリエと、シィと、ネリフスの三人から、よってたかって説教をされる事になるのだ。
『手出し無用といったのはロドム様ですよ』
「ロドム様が手出し無用と言ったのではないですか」
『手伝いはいらないとお前が言ったんだ』
あれ? もしかして、俺、これから説教をされる?
今の状況のヤバさに気付いた俺は、背中に思いっきり汗をかく。
まずはこの村人たちの避難が先決だ。
ここの奴らの考えは、それでまとまっていた。
俺は本能的に『俺はこの三人に怒られる』と察していた。
それから先、背中に嫌な汗をかきながら、村人たちの避難誘導をすることになったのだ。
「村人たちは、足が弱い者以外は全員遠くに避難してもらいました。足の不自由な方やご老人たちは、ロドム様のワームホールで安全な場所に送りました。これで、ひとまず解決です」
シィの声はやたらと冷たいものだ。俺はこの作戦室で、三人に囲まれて座らされていた。
「ロドム様……おそらく気づいていないでしょうけど……」
「そうですわ。気づいていたら、こんな事にはなりませんもの」
「頭がいいと聞いていたのだが、思考は単純のようだ」
三人から、かわるがわる言われる。俺はこの瞬間は一体三人が何で怒っているのか、まったくわからなかった……




