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適当男の転生軍師 2  作者: TUBOT
テルシオとの戦い
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騎士の報復

「ロドム様……お早いお付きで……」

 フェリエがおずおずと言った感じで言ってきた。俺があの新聞を見つけたのを悟ったようである。

「あんなに恥ずかしいものをばらまいて……」

 フェリエにズンズンと迫りながら言う俺。フェリエはどんどんと後ずさっていった。

「だけど、問題はそこじゃない……」

 それは後回し……今回、一番問題なのはそこではなかった。

「クロスボウをバラまいたな……」

 これは、この国を根本から揺るがしかねない行動だ。

 クロスボウの普及は、封建社会の終わりを意味するかもしれない。

 前の世界では、クロスボウは教会がすぐさま『悪魔の兵器』などというレッテル張りをして、普及を防いだ。だから大きな問題にはならなかったのだ。

 だが、ここまで普及をしてしまったら、回収のしようがない。何かの手を打たないといけない。

「ですが、それは後でいいのでは……?」

 シィが言ってくる。俺が後ろを振り返ると、俺が保護した二人の青年は、父につかまって何かを話していた。

 それは後回し……

「だがねぇ……」

 民衆が『自分達も戦える』という事を自覚してしまった後では遅い。こんな簡単な作りのものは、誰にでも作ることができる。

 戦いは貴族だけのものであるという、民衆に対する刷り込みが消えてしまったら、身分格差の崩壊が起こる。

 俺は頭の中でそう考えながら、シィに伝えた。

「今はそんな事を言っている場合では……使えるものは使わないと……」

「後先の事を考えないな……君は」

「あなたこそ、今の状況をよくわかっておりません。私達は三十人の兵力で、十万の敵と戦っているのですよ後先の事を考えている余裕は……」

「民衆の力が加わっても変わらないと思うけどね……確かに彼らは敵の騎士を倒せたのだけど……」

 報復は必ずある。

 そんな事はそこらのチンピラでも知っている基本的な事だ。弱い者には自分の弱さを教え込まないといけない。

 でないと敵が増徴をしてしまう。

「だから、村から逃げた村人たちを、根絶やしにしようと考えるはずだ」

 シィはそれで目を見張った。村の青年二人は意味が分かっていない感じだが、ネリフスと、シィ、父の三人は意味が分かったみたいだ。

 デイナは俺に後ろから抱き付いて、、虫の見ている映像を送ってきた。

「大変だよ……」

 やはりこうなった……俺は次々に山の中に入っていく敵の兵士達の事を見た。山狩りが始まるのだ。


「村人に二人者高潔な剣士が殺された、こんな事はあってはならないことだ。二度と起こらないように、報復はしっかりとしなければならない」

 参謀の一人は、前に整列する騎士達に向けて演説をしている。

 今、村の広場に数百人の選抜隊を集め、山狩りの準備をしているのだ。

 参謀が見るに、ここに集まった兵士達は怒りに想いをたぎらせている感じだ。

 こんな、絶対にあってはならないことが起こったのだ。草民が騎士を殺すという事は、騎士に対する侮辱であり、自分達の沽券にかかわる大問題だ。

 参謀の演説に、怒りをたぎらせる兵士達。その様子を、テルシオは冷めた目で見つめていた。

 騎士の二人が死んだことなんて、どうでもいいことだ。村人相手に、油断をしすぎたというだけの事だろう。

 この山狩りの意味くらいテルシオは理解していた。

 だが、テルシオにとって、下級の騎士の地位が揺らごうと知った事ではない。こんな事を許したのは、単純に参謀達を立ててやっただけに過ぎないのだ。

 こんな事に時間を割いている間に、どんどんと敵は準備を完璧なものにするかもしれない。

 それも、味方の兵士の死人が百人増えるかどうか? だけの事だ。テルシオが気をもむような事ではない。

 ロドムの存在は不気味ではあるが、そこまで懸念することではない。せいぜいテルシオの『完全勝利』から、『完全』の部分を抜き取ってしまう事くらいだ。もう、そうなってしまっている。だから、いまさらそれにこだわる事もない。

 兵力差は覆せない。のんびり行こうと、結果は同じだ。

「僕は休むよ……そうだな……ロドム=エーリッヒが現れでもしない限り起こすなよ」

 テルシオはこんな事でロドムが出張ってくるはずがないと思っている。そりゃそうだ。無茶な事をした村人の事まで守るような余裕はないし、騎士が村人のために命を張るような行動をするなんてありえないことだ。

 確かに、昔は『日本』で生きていたようだが、この世界でも十年間生きているのだ。考え方だって、この世界の考え方に染まっているだろう

「この俺みたいにな……」

 前の世界の知識を使い、のしあがったテルシオにはロドムの考がよくわかる気でいた。

 結局一人で頑張っても、どうしようもないのだ。そんなものまで守っている余裕はない。

 一晩経って、山狩りが終わり、参謀の気が済んだら、進軍を再開する。

 そのつもりで、テルシオは自分のテントに向かっていった。


「あいつらはうまくやったんだろうか……」

 山の上から、自分達の村を確認する村人の一人が言う。

『せっかく戦う力を手に入れたんだ。戦わないでどうする?』

 そう一言言って、みんなが止めるのを振り切って村に降りてしまった。この村につい最近やってきた、元軍師の男に感化をされてしまったのだ。少し前にここにやってきたあの男には恨みさえ感じる。

 あの男が、村に災いを持ってきたのではないかと思えてくるくらいだ。

「おい! こっちに来るぞ!」

 他の村人が言う。たしかについさっきまでは、村の広場で整列をして何かをしていた。このまま、村を通り過ぎてくれる事を期待していたのだが、そうはいかなかった。

「私達の事を追っているんだ……」

 あの騎士達は自分達を殺そうとしている。

 その事に気付いた村人たちは絶望で言葉が出ず、何か一言をしゃべる者も、いなかった。

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