出撃
作戦ではああいったが俺は敵の襲撃にフェリエとシィも連れて行った。
いるのは補給部隊の事を見下ろせる高台だ。
後ろにはガケ前には何もない遠くの景色が見え、敵の軍の姿が小さく見えるほどなにもない。
十万を超える軍勢となるとあんなにワラワラとあつまっているのものなのだろうかと関心をするものだ。
あの小さな点が一人ひとりの兵士なのだあれを倒さないといけない事を考えると気が滅入ってくる。
「ネリフスさん。無理矢理にロドム様の奥様という地位をかすめたものの、親公認というだけで、ロドム様のパートナーを張る事はできませんよ」
「そのとおりです。ロドム様の奥様になられたというなら、実家の力など無意味です。いままでどおりに高潔な身分のままでいたいのならば、早く離婚をする事をオススメしますよ。あなたには目的があるというのは分かりますが。結婚なんてそんなに簡単にできるものでもないですからね」
言葉の内容でどっちが言ったかはわかるだろう。ど直球な嫌味をいったのがフェリエ。長たらしくグチグチ言ったのがシィだ。
俺は二人のプレッシャーに押され二人を一緒に待機地点に連れてきた。二人はネリフスと顔を合わせると、まるでお局様のような態度になってネリフスの事を見始めた。
ネリフスは俺の事を見るとキッと目つきを鋭くして一瞥をした。
俺にあたるな。
俺から視線を外したネリフスは二人に向けて食ってかかった。
「お二人とも付き合いが長いくらいの事で、私の優位にたったと勘違いするのは早いですよ。私達の結婚にご不満があるらしいですが。あなた達が何かを言ったところで事実は変わりません。あなた達は人をひがまずに自分の幸せを探す事をお考えになったら?」
そうネリフスが言う。二人に対して嫌味になるくらいに、礼儀正しかった。スカートの裾をチョンとつまみ、お辞儀をしながら言ったのだ。
フェリエとシィの顔がそれで一瞬だけ険しくなった。だがすぐに平静を装い嫌な笑顔に顔を変えた。
実際装えていないけどな。
「私達がヒガんでいるなんて。貴族の生まれのお嬢ちゃんに私達のような下々と一緒にやっていけるのか? 聞いただけですのにねぇ」
「勘違いもはなはだしいうえに失礼ですよねぇ」
息がぴったりになったシィがフェリエに向けて言った。フェリエはのっかった形だ。
『なに? この昼ドラ?』
俺は昼ドラもたまに見る。大体こんな事ばかりやっていた。陰湿な女の戦い。昼ドラで見るだけでも、手に嫌な汗をじっとりとかくのに、俺の目の前でこんな事が起こっているのだ。話を聞いている俺は女たちの戦いを聞かされ作戦どころではなくなっている。
三人に陰湿な女の戦いをやめてもらいたいとも思うが、あの三人からは『男が近づいてはいけないオーラ』みたいなものを感じ下手に話に入っていくことができない。
「ロドムくーん」
その言葉と一緒に、後ろから抱き付かれた。
「デイナ? いきなり何を?」
空気読んでくんないかな?
この状況で俺にちょっかいをかけるのは自殺行為である。絶対フェリエとシィに睨まれる。
俺はそう思う。その考え通りにフェリエが言う。
「あの年になってはしたない。つつしみを持ってもらえないかしら」
先陣を切ったのはシィだった。それにフェリエも続く。
「あなたはただのロードル様のメイドでしょう? 出る幕じゃないんですよ」
やっぱフェリエの言う事はキツいな。そこまで言わなくてもいいだろうに。
「私の前でロドムにちょっかいを出すなんて、剣のサビになりたいのか?」
ネリフスお前もか。
この昼ドラのノリってもしかして本人たちは楽しいの?
三人の昼ドラ攻撃をされたデイナだが、こうしないとデイナが見ている虫が送ってくる映像は見えない。
背後から刺すような視線が突きつけられているのは気にせずにデイナと魔力を同期させる作業に専念した。
「おふざけはここまでにしてくれ」
その一言で三人は黙った。
「兵士ってこんなに集まるもんなんだよな」
体格のいい人間が大量に集まっているのを見る。こんな数の人数が集まるイベントなんて、前の世界にもそうそうない。
兵達はそれぞれ非常食なども持ち歩いていた。補給部を叩いたところですぐに食糧難になる事はないだろう。
だが補給部を狙うという方針には変わらない。そこを攻めるしか勝機はないからだ。
俺は後ろに並ぶ『エーリッヒJr』隊の事を見返した。
数十人程度の数だし訓練もまともにされていない。
敵は綺麗に二列縦隊で並んでいるのに対し、こいつらの並び方はバラバラ。しかもその場に座って休んでいる者もいる。
「勝てそうにねぇ」
ついその言葉が口から出る。
だがこいつらを勝たせるのが俺の役目である。
「作戦の概要は分かっているな」
そう言ったら、『エーリッヒJr』隊の面々はコクリと頷いた。
いくら敵は数人しかいないとはいえ、この連中だけで敵の精鋭を倒すのは無理があるんじゃないかと思えてならない。
どうしようもなくなったらフェリエの魔法を使ってでも戦うしかない。
フェリエのド派手な魔法を使えば当然テルシオに知られる。バレてもいいとにかく自分達が生き残る事が最優先だ。
俺はコホンと咳払いをしてからここに集まった面々に言った。
「これより敵の伏兵をたたく。その後で補給部隊を襲う。この作戦は重要な作戦だ。我々は敵と正面からぶつかるような戦力は持ち合わせていない。こうやって戦うしかないのだ」
「補給部って事はいろんなお宝もあるって事でしょう?」
下世話な質問だ。戦わせておいてなんの褒章もなしでは兵はまともについてこん。
それは学院戦の時にテルシオが嫌というほど教えてくれた。
敵の補給部の中には高価な魔法の剣なんかもあるのだ。それを奪うというのならば俺にとっても好都合だ。
「略奪は許可する。その時間があればの話だがな」
補給部には護衛が当然いるだろう。このチンピラ上がり達がその護衛とまともに戦えるとは思えない。この様子では必ず死者が出てくる。
自分の隊の死者を出したくはないが、こいつらに略奪をさせないというのも無理な話だ。司令官にはこういう悩みも付きまとうものだ。
「ではいくぞ! 私がワームホールを作ったら一気に突入だ!」
俺はワームホールを使い道を開いた。ネリフスとレイティエルとほのの三人が最初に敵にまで突撃していった。
それに『エーリッヒJr』隊の奴らも続いて行く。




