今回の作戦
「テルシオの先を読むんだ」
俺は小さな声でそう考えながら言った。
正面から突撃をしたら勝てるわけもない。ならば絡め手しかない。
それは俺がよくわかっているしテルシオも分かっているところだろう。
「補給部隊を落とすか、俺の魔法で毒の霧でも撒くか」
俺の魔法は直接攻撃力はないがジワジワと敵を苦しめる効果がある。敵が大人しく俺の撒いた毒の魔法を深呼吸でもして、おもいっきり吸い込んでくれるというのならまだしも、そんな事はありえない。結局は敵への攻撃はフェリエのゴッドスピアに任せきりになる事だろう。大部隊相手に攻撃をするにはそれくらいしかない。
だがゴッドスピアには問題がある。
フェリエの魔法はとにかく派手で空から光の槍が落ちてくるのだ。その様子は遠くからでも確認できる。
フェリエが魔法攻撃をしたら一発で場所がバレる。
いくらフェリエでも、敵が大量に攻めてきたら勝ち目はない。フェリエの魔法は使うことができないのだ。同じ理由でシィの月の魔法もだ。
そう考えながらデイナの虫の魔法での偵察の結果の報告を聞いた。
「敵がかまえている。精鋭を数人って感じよ」
「やっぱりか」
補給をするための輸送部隊を襲うにはうってつけの場所を中心に調べてもらった。
周囲は深い森。その中で山の木を切り開いて作った一本の狭い道。道の両側は登り坂になっており、高低差を上手く使って駆け下りて攻撃をすることができる。
敵の隊列も伸び切るだろうからうまく迎撃もできないだろうし奇襲をするにはうってつけの場所だ。
好条件の場所をみすみす逃す手はない。大部隊の弱点は補給であるというのは昔からの定石である。
ここまでなら誰でも考える事だ。
そこまで考えた後で俺はまた一つ深く考えた。ここが攻撃に最適の場所であるという事はテルシオだって承知のはず。
俺達を迎撃するための部隊を先に配置しているのではないだろうか?
幸い索敵にはデイナの蟲の魔法がある。これを使わない手はない。
デイナの蟲の魔法は使い勝手がいい。攻撃には向かないがそれをあもってあまりある効果がある。
「敵を見つけてくれたからな」
デイナの蟲の魔法を通じて敵の姿を見た。敵は数人であり、明らかに周囲を警戒していた。敵が見えないこの段でもダラけている様子はない。
「さすがは精鋭」
敵の数は六人前後。全員がお互いに別の方角を監視しており、いつ敵からの攻撃があっても対処をできる布陣だ。
俺のワームホールを使って飛び込んでいけば無意味なんだけどな。
先手必勝だ。敵はロクな装備を持っていない。
こんな足場の悪い山の中で、重苦しい鎧を着こんでいるのは自殺行為だ。軽装で済ましすぐにでも逃げられる状況を作らないといけない。
敵に勝てそうもなければ逃げて情報を持って帰る事も重要な仕事だ。
その点こっちにはワームホールがある。
移動にはこの魔法を使えばいい。ガチガチに装備を着こんだ兵士で貧弱な装備の敵を一網打尽にすることができる。
「ほの。レイティエル。ディラッチェ。ネリフス」
俺は敵を襲うための部隊の人間の名前を呟いた。いきなり言った言葉だったが、フェリエもシィも、この言葉の意味を理解したようで文句をつけてくる。
「お待ちください! なぜ私がは外れているのですか!」
「そうですよ! 私の力が信じられませんか!」
いつもはいがみ合っている二人だがこういう時は二人とも息がぴったりになるのだ。ちょっとメンドい。
「二人の魔法は派手すぎる。敵に位置を知らせるかもしれない」
この襲撃は敵の伏兵の護衛部隊を倒して終わりではない。補給の部隊を襲うのが今回の真の目的なのだ。
敵は倒したけど、勘づかれて敵の補給部隊はひきかえしてしまいました。では意味がない。
「ネリフスを選択した理由は何でしょうかね?」
フェリエが言ってくる。
この二人がここまで食って掛かってくる理由が分かった。俺がネリフスを重用しているのではないかって疑っているわけだ。
「彼女は派手な魔法を使って敵に位置を知らせたりしないし、彼女自身も腕が立つつもりでいる。お手並み拝見って意味もあるね」
彼女も俺と年はそんなに変わらない。いくら腕がたつといってもしょせんは女の子。大の大人相手では太刀打ちできないだろう。
彼女の態度も気になるところ。ここは一発痛い目を見せておきたいってのもある。
そんな事を口にはできないが、結果が証明してくれるだろう。
「確かに彼女の態度も気になりますからね。『私が女王の腹心だー』とか『私は親衛隊に入っている高貴の人間だー』って考えているのが、態度から見て目に見えますからね」
シィ……いらん事言わんでいい。
なんのために心の奥にその言葉をしまったのだと思ってる?
「まあ、そういう事なら納得しないでもないですが」
フェリエも空気を読んで了承をしてくれた。物わかりのいい人たちに囲まれて俺は幸せだよ。もっと口の方もお上品になってくれるとさらに幸せだけどね。
こんちくしょう。
「スネないでくださいよ。私たちだってこんな扱いを受けたらこうも思います」
シィが言う。フェリエもそれに同意のようだ。




