理不尽vs理不尽 06
大きな丸テーブルに、6人が座った。バルナス→ジュール→ドラナ(膝の上にリリス)→レイブン→ガロンの順番である。
「ドラナとレイブン! あんたらの皿は、肉大盛にしといたよっ!!」
「ワインとエールも、沢山準備してある。いっぱい飲みなっ!!」
食堂のおばちゃんたちは、楽しそうだ。ちなみにこの世界、生水を飲むのは厳禁である。冗談抜きで、命にかかわる。
「バルナスとジュールちゃんは……少し野菜多めだよ!」
「あたしらとしては……。もっと肉を食べてほしいけどねっ!!」
どーん。どーん。テーブルに料理が並べられていく。
「リリスは……」
「とりあえず、水分をいっぱい取りな!!」
「パン粥……いるかい?!」
「普通の……ゴハンで……」
ガラガラ声のリリス。おばちゃんたちは、黙ってリリスの頭を撫でた。
“この性悪猫が……ここまで萎れる?!”
“あの肉食獣コンビ……”
“とんでもないわねぇ……”
おばちゃんたちの眼は、とても生暖かかった。
「リリス用に、普通より薄めたワインを!!」
「あいよっ!!」
厨房から、元気な声が答えた。
ドラナが、皿の上の小さな肉の塊を指先でつかんだ。そのまま、リリスの口元に持っていく。
「リリス。あーん、だ」
「あーん……」
リリスは口をあけ、ぱくっと食いついた。
この世界、フォークの様なカトラリーは発明されていない。故に、食事は基本的に手づかみである。唯一木の匙はあるが、どちらかというと調理器具である。(スープは、器から直接飲む。スープの具は、最後に手づかみとなる)
「ドラナお姉さま。お肉よりも、水分を多めにしてあげて下さい」
ジュールが、リリス用のワインの入った小樽をリリスの口元に運んだ。
「ありがと……」
リリスは、小樽から少しずつワインを飲んでいく。
「体力の回復には、肉だろう?!」
「水分も、大切ですっ!!」
ドラナの琥珀色の瞳と、ジュールの茶色の瞳が、鋭く交差した。
「どっちも必要だな」
レイブンが呑気な声で水を差した。
「ドラナ、ジュール。お前らも、自分の食事を忘れるなよー」
大きな肉の塊を、ドラナの口に放り込んだ。
「ジュール。あーん」
「あ、あーん……」
バルナスも、負けじとジュールの口元に野菜を持って行った。
「ふう……」
ガロンは、大きな溜息をついた。
「甘々じゃのぉ……」
“口から……砂糖を吐きそうじゃな……”
「もう……おなかいっぱい……」
リリスのお腹は、ぽこっと膨らんでいた。ガラガラ声も、だいぶマシになっている。
「よしよし。いっぱい食べたな……」
ドラナがリリスの頭を撫でまわした。
「ドラナお姉さま! リリスちゃんの首が……取れますっ!!」
ジュールがドラナの腕を掴んだ。ドラナの腕は、全く止まらなかった。
「壊すなよー」
レイブンがリリスを抱き上げ、自分の膝に乗せた。
「レイブンも……だよ?!」
バルナスは、呆れた様子でワインを口にした。
「うむうむ……」
ガロンは、嬉しそうに頷いていた。平和で、賑やかな時間が、食堂の一角に展開している。
「賑やかだねぇ……」
「微笑ましい……」
「尊い……」
食堂のおばちゃんたちは、ほっこりしていた。




