理不尽vs理不尽 36
6.理不尽な魔法を、撃ってみよう。
《場も温まってきたなっ!! そろそろ、始めてくれっ!!》
戦の神の言葉に、主役たちが動き出した。
「簡単には、当たってやらないぜっ!!」
祭壇から見て右側のテーブルから、戦士レイブンが立ち上がった。その袖を、神官戦士ドラナがそっと引いた。
「無理は……。ダメだからな?」
レイブンの灰色の瞳と、ドラナの琥珀色の瞳が、絡み合う。2人は軽く唇を重ねた。
2人が離れた。
「行ってくるぜっ!!」
「応援するっ!!」
「今日こそ……。当てて見せます!!」
祭壇から見て左側のテーブルから、神官戦士ジュールが立ち上がった。その茶色の瞳には、隠し切れない負けん気が宿っていた。
「当ててやるっ!!」
魔術師バルナスは、燃えていた。今日こそは、理不尽の塊である戦士に一矢報いてやる。そんな気持ちが溢れ出している。バルナスの金色の瞳は、ギラギラ輝いていた。
バルナスとジュールは、手を繋いだまま、前に出た。
「バケツ班も、関節技シフトも、いらんぞ?」
祭壇の正面。中庭の反対側に立ったドワーフの神官戦士ガロンは、いきり立つ観戦者を静かに抑えていた。赤茶色の小さな瞳は、静かに燃えていた。
「両者、中央へ」
「勝利条件を確認するぞ?」
ガロンの赤茶色の瞳が、戦士たちを睨みつけた。
「制限時間以内にレイブンの手が、バルナスかジュールに触れたら……。レイブンの勝利。触れられなかったら……。バルナスとジュールの勝利じゃ」
「わかったー。触れたら、投げても良いんだよな?」
レイブンの笑みは、なかなか危ない。
「させないっ!!」
バルナスがレイブンを睨みつけた。
「言ってろ……」
レイブンは、鼻で笑った。一転、真面目な口調でガロンに尋ねた。
「制限時間ってのは?」
「バルナスが、完全詠唱で魔法を発動させるまで……じゃ」
「2対1かっ!! 燃えるぜっ!!」
そんなレイブンを、ジュールが睨みつけた。
「絶対に……。足止めをいたしますっ!!」
「やってみろっ!!」
「両者とも、正々堂々でな」
ガロンは、とても真面目な表情である。
「おっさん。棒読みすぎねぇ?」
レイブンが、思わずツッコミを入れた。
「まあ建前じゃから、の」
ガロンは、ニヤリと笑って続けた。
「ここからは、本音じゃ。死ぬな! 殺すな!」
全員、ニヤリと笑った。
「精神的に……背中を見せるな。準備は……できたかの?」
ガロンが最終確認をした。
「いつでも……やれる」
レイブンは、右手を短刀の柄にのせていた。
「やれますっ!!」
ジュールは、顔の前で両拳を握っていた。
「泣かせてやりますよ」
バルナスは、魔術師の杖を握りしめていた。




