理不尽vs理不尽 32
《おまえら……。なんでそんなに、喜んでるんだ?》
戦の神は……理解していなかった。
《あとで……説明してあげるわよ》
大地母神は、苦笑を浮かべていた。
知識の神から授けられる、人体透視図。それも、肘から先が両手分。回復魔法を生業にしている神官にとって、喉から手が出るほど欲しい報酬である。※
《暑苦しいのは、好きではないが》
知識の神は、ニヤリと笑った。
《改宗は……。大歓迎だ!!》
《お、おまえもかよっ!!》
大爆笑!!
《改宗はムリでも……。祈りを捧げてくれると、我は嬉しい》
「簡易祭壇、癒しの間に作りますっ!!」
「ご神体は……。薬学辞典? 賢者の学院で、買えるのか?」
「学院には、僕が口を利くよ」
バルナスが口を挟んだ。
「知識の神様、最新版が希望ですよね?」
《当然である》
《お、オレの神殿で、勝手なことを……するんじゃねえっ!!》
大爆笑!! 戦の神は、ひたすら不憫であった。
《戦の神。あなた、具現してから……。負けっぱなし……よ?》
《………………》
大地母神が、戦の神に止めを刺していた。
「うっわー。大地母神様。そこまで言うのか……」
バルナスは戦慄した。
「戦の神様は、どうして萎れているのですか?」
ジュールは、良くわかっていないようだ。
「戦の神様……。見事な負けっぷりじゃなっ!!」
ガロンは、開き直った。
「戦の神様。かわいそうだなー」
レイブンは、思いっきり傷口に塩を塗り込んだ。
「あたしは……。なにも見てないぞ!!」
ドラナは、現実逃避をした。
「お、オレたちも。なにも見てないっ!!」
神官戦士たちも、現実逃避をした。
「神様って……。理不尽……」
リリスは、溜息をついた。
お祭り騒ぎは……まだ続く。
《とりあえず!! 改宗は、ダメだぞっ!!》
戦の神が、必死な様子で釘を刺した。
《知識の神の簡易祭壇は……。いまさら止められねえっ!!》
《本格的な祭壇にしてくれると……。我は嬉しい》
知識の神が、ずうずうしい主張をしていた。
《簡易祭壇止まりだっ!!》
《畑に……簡易祭壇、作ってくれる?》
大地母神は、首を傾げていた。
「もちろんですっ!!」
《大地母神?! お前らっ?!》
《ちくしょーっ!! なんで、オレは、こいつらを招待したんだっ!!》
戦の神が、地団太を踏んでいた。
《こうなることぐらい、予想できただろうに……》
《ねぇ?》
知識の神と大地母神が、顔を見合わせて笑っていた。
※この世界の回復魔法について……。
この世界の回復魔法は、自然治癒力を加速する魔法である。
切り傷には強いが、打ち身や病気にはあまり強くない。特に、人体内で抗体のできていないウイルスに対しては、全くの無力である。
また、人体の構造を熟知していないと、回復に時間がかかるのも特徴である。
部位を特定して治癒させるのと、漠然と治癒させるのでは、必要時間が大きく異なるのは道理であろう。




