理不尽vs理不尽 30
戦の神が、小さくぼやいた。
《オレの時よりも、敬意がすげーんだが……》
大地母神が、小さく笑った。
《これが、人徳の差よ》
《お前、ヒトじゃねぇだろうがっ!!》
《細かいわねぇ……》
大地母神が、真面目な雰囲気を纏った。
《戦の神。お招き、ありがとう!!》
《どういたしましてっ!!》
戦の神は、うんうんと頷いていた。
「大地母神様って……。あんな感じなの!?」
バルナスは、ジュールにまじまじと尋ねていた。
「とてもお祭り好きで……。とても理不尽で……。とても優しい、お方です!!」
ジュールは、力いっぱい答えていた。
《お招きに感謝して、ちょっとした手土産を》
《気を使わなくて、いいんだぜ?》
大地母神と戦の神は、楽しそうだ。
《戦の神。お招きをしてもらうときは、手土産をお持ちするのが、常識よ?》
《そうなの……か?》
大地母神が、すっと虚空に細い手をかざした。
神力によって空気が歪み、光の粒子とともに眩いばかりのアイテムが具現化する。
それは、世界樹の繊維を緻密に織り上げた白銀の樹紙を、なぜか見事なまでに規則正しい蛇腹状に折りたたんだ重厚な紙束であった。こちらの世界でいう……ハリセンである。
柄にあたる部位を右手で優雅に握り締めると、大地母神は可憐な微笑みのまま、一切の迷いなくそれを思いっきり振りかぶる。振りかぶりながら、自らの身体を浮かせ、戦の神との身長差を無くしていく。
すぱーんっ。
神殿全体を揺るがすほどの、あまりにも快活で清々しい破邪の音が響き渡り、戦の神の頭にクリーンヒットした。
《この……。非常識っ!!》
《い、いてえっ!!》
大爆笑!!
大爆笑がおさまると、大地母神は小さく笑って告げた。
《手土産として、この神殿の畑に小さな加護を。少しだけ……豊作になりますようにっ!!》
ニスシャが右手を振ると、小さな光の弾が、畑の方に向かって飛んで行った。
《手土産、ありがとなっ!! みんな! 大地母神の祭壇に、後で祈りを捧げておけよ!!》
「わっかりましたー!!」
「大地母神様、ありがとうございますっ!!」
「ありがとうございますっ!!」
《ふふん。改宗は、いつでも受け付けるわよ?》
《や、やめてくれぇっ!!》
大爆笑!!
「とてもお祭り好きで……。とても理不尽で……。とても優しい……ね」
バルナスは、叫んだ。
「大地母神様、最高ですっ!!」
「大地母神様ー!!」
ジュールも、負けじと叫ぶ。完全に……アイドルコンサートのノリである。
《お前ら、改宗は……するなよっ?!》
「し、しません!! たぶん……」
「でもよぉ……。オレ達と同類の戦の神様より……」
「女神様である、大地母神様の方が……」
《て、てめえらっ!! 裏切るなよ?! ヴァルハラの戦乙女に、少しガードを緩めるように、言っておくから!!》
「うおおおー!!」
「さすが、戦の神様!!」
「一生、ついていきますっ!!」
世間一般では、これを手のひら返しと……呼ぶ。




