理不尽vs理不尽 23
「ご神体が通るぞ!! 退かないと、蹴り飛ばすぞっ!!」
向こうから、ドラナの大声が聞こえてきた。とんでもないサイズの剣を軽々と抱え、何人かの神官戦士の尻を蹴りながら、中央の祭壇を目指している。
「蹴ってから、言うなっ!!」
「止めとけっ!! 潰されるぞっ!!」
ドラナに抗議しようとした神官戦士が、周りからボコボコにされていた。
「潰されて、再起不能に……なりたいのかっ?!」
「男として、廃業したいのかっ?」
「いてっ! いてっ! やめろー」
ドラナに抗議すると……。なにかを潰されるらしい。彼が潰されるのを避けるための行為であり、とても慈悲深いのだが……。
どうみても、リンチにしか見えない。
「邪魔だって……言っているっ!!」
げしっ!! ドラナは……。理不尽の権化と化していた。
「大魔神……降臨……」
「リリス。本人の前では、絶対に言ってはならんぞ」
リリスは必死で、コクコクしていた。
「おっちゃん! 言わないでねっ!!」
「カワイイお主を、売ったりはせんよ」
“頭を撫でたいが……。背が足りんっ!!”
ガロンは、リリスの背中を、軽く叩いた。
「戦の神様のご神体、地面に刺すぞっ! 場所あけろっ!」
ドラナが、思いっきり振りかぶった。蜘蛛の子を散らすように、神官戦士たちが逃げていく。
ざくっ!
鞘に入ったまま、ご神体の剣が地面に刺さった。刀身の1/3ぐらいが、地面に刺さっている。
ビイィィィィン……。
ご神体の剣は、衝撃で微妙な音を奏でていた。この剣で無ければ……。折れていたかもしれない。
「長椅子に、立てかければ……いいんじゃねぇの?」
レイブンは、呆れた様子だ。
「ドラナ……。完全にハイになっておるの……」
ガロンは、笑っていた。もう、笑うしかないらしい。
「ああなると……。水ぶっかけても、止まらないのよねぇ……」
リリスは、びびっていた。
ドラナ本人に、悪気は一切ない。ただ、周囲の雰囲気にあてられているだけである。
それにしては……。周囲の被害が、大きすぎるが……。
「ドラナ。オレといっしょに、右側のテーブルに座るぞ!!」
レイブンがドラナを捕まえた。
「おうっ!!」
ドラナは嬉しそうに怒鳴った。
「オレとドラナにも、食い物を!!」
「わかったー!!」
数人の神官戦士が、食堂に向かって走っていく。
「おっさんと、リリスは、左側のテーブルに座っていてくれ。バルナスとジュールが来たら……メシを食わせてやってくれ」
「承知したぞい」
「おっけ」
ガロンとリリスが、そのまま左側のテーブルについた。
「おっちゃん。椅子に座ると……。脚が地面から浮いてるー」
自分を棚に上げて、リリスがガロンを揶揄った。
「うるさいわいっ!!」




