理不尽vs理不尽 22
「リリス。運ぶのを手伝ってくれるか?」
「わかったー」
ガロンとリリスも、動き出した。
「リリスは……。優しいのぉ……」
「ガロンのおっちゃん。なにが欲しいの?」
「冷えたエールを、お主の酌で飲みたいぞ!」
「それは……ダメ。浮気に、なっちゃうから」
リリスは、ニヤリと笑って首を傾げた。清々しいまでに、あざとい。
「これは、一本取られたわい」
“完全に意味を理解したうえで、ワシをおちょくってきとるなぁ”
「ほら! 厨房行くよっ!」
“おっちゃん。全然動揺しないかぁ……。ドラナには、完璧に効くのに……”
事態は、派手に動き出した。
「聞いたか?! ジュールちゃんが、気合い弾の魔法の改造をするらしいぞ!」
戦神の神官が、同僚の肩をバンバン叩いていた。はっきり言って、暑苦しい。
「ジュールちゃんが?!」
叩かれた同僚が、大声で答えた。うん。こいつらみんな、暑苦しい。
「時間差4発は……。失敗したよな?」
「失敗したっ!」
「じゃあ、なんだっ!?」
「わからんっ!」
「よし! 見に行くぞ!!」
「おおっ!!」
中庭に向かって、ダッシュした。
中庭の鍛練場は……。お祭り騒ぎだった。
「な、なんじゃ、こりゃあっ!!」
「祭壇……だとぉ?」
礼拝堂から運び出された、信者用の長椅子が3脚。中央の特等席に設置されていた。
長椅子の中央以外には、お供え物がぎっしり。どこからどう見ても、簡易の祭壇である。
中庭の端(祭壇の両サイド)に丸椅子とテーブルが並べられ、選手控室のような様相を示していた。丸椅子とテーブルは、先程食堂から到着したのだ。
「神様が3柱、具現化されるそうだっ!!」
「3柱っ?!」
「戦の神様。大地母神様。知識の神様だっ!!」
「お供え物は、受付終了だ!! 全ての祭壇に、祈りを捧げておけっ!!」
「なんでだよっ?」
「どなたが、何処に具現化されるか、わからんからだっ!!」
“不文律は……あるが……。祈りが偏ったら……。問題がありすぎるっ!!”
「わかった!! 最後尾は、どこだっ?」
「ここだっ!!」
「お祭り騒ぎに……。なっておるな……」
「バルナスと、ジュールちゃんの、おひるごはん……。どこに置いたら?」
中庭に到着したガロンとリリスは、途方に暮れた。
「おっさん! リリス!」
中庭をウロウロしていたレイブンが2人を呼んだ。そのまま、中央の祭壇から見て左側のテーブルに寄っていく。
「それ、バルナスとジュールの昼飯だな。このテーブルに、置いてくれ」
レイブンは、ウキウキしていた。中央の祭壇から見て、左側のテーブルを示した。
「こっち側が、大地母神様の祭壇になるハズだ」
この世界……。なんとなく、左側が偉いっていう不文律がある。大地母神と知識の神だと……。大地母神の方が、偉い……と思われている。
「これはいったい……。なんで、こうなっておる?」
「気が付いたら、こんなになってた!!」
「なんで、こうなるのよっ!! みんな……馬鹿なの? 馬鹿なのねっ?!」
リリスの叫び声が、虚しく響き渡った。




