2章 過去の未来(ゆめ) 【変われ、じぶん。】
「みーうーみっ!今日配信だよね!」
そう話しかけてきたの元気の良いちぃ。
「そうだけど、、、何か??」
「冷たいなぁ、もう。企画なにか聞きたかっただけなのにぃ。みうみっていっつもつまんなそうにしてるよね、僕と話すとき。」
「そんなこと、ないと思うけど。企画は1時間限定雑談だよ。質問とか答えるやつ。っはぁ〜!よしっ!頑張るぞー!」
勢いよく空気を吸う。
やる気が満ちていく。
「なんか、やる気になったね?いつもこんな感じなの?」
「まぁ、こんな感じかな。気持ちの入れ替えをしてから頑張るんだ。」
「、、、ふぅん。じゃあ、なんで僕とは真面目の話してくれないの??」
「まぁ、ちぃは大体適当なことを言うからな」
「はぁ?そんなことないだろー!!」
「まぁまぁ。、、、ちぃ、今日は何の日か知ってる??」
不意に聞いてみる。
「、、、、ふふっ、みうみの活動記念日でしょ、知ってるよそんなの。」
と柔らかく笑いながら言うちぃ。
「でもさ〜、ずるくない?みうみとゆな以外みんな活動記念日は同じ日だよ?」
「それは〜、そう、だね。」
ずるいよー、と言うちぃはちょっと可愛くて、さすが天使キャラだと思ってしまう。
「こんばんわ〜!みうみだよ〜」
ちぃと別れて数時間経った後、配信が始まる。
「“こんばんわ!”こんばんわ〜。今日は何の日か知ってるー??“知ってますよ!”“もちろん!”良かった〜、誰も知らなかったら困っちゃうところだったよ。今日は雑談配信だからね〜、ゆっくりしゃべろうね。“久しぶりの雑談嬉しいです!”良かった良かった。で、今日はなんと、俺の活動記念日だよ〜!!」
そう言うとチャット欄には「おめでとう」がたくさん出てくる。
「みんなありがとね〜!みんなのおかげでユメミライは3年目に突入して俺は3周年を迎えました〜!“3周年と3年目の違いって??”あ、うーんとね。3年目は、そのまんまの意味。3周年は3年活動して、今年4年目って感じ。」
そんな話をしていたときだった。
「“活動を始めたきっかけってなんですか?”」
そんなコメントが目につく。
「きっかけー?そんなの、よくある話だけど、聞きたい?」
そう言いながら俺はここにきた経緯をみんなに話し始めた。
きっかけは、平凡すぎた僕を変えたかっただけ。
「テスト返却するぞ〜」
順番に呼ばれていく。俺は鈴木未海だから最初の方だ。
「じゃあ次、未海。」
立って、テストをとりにいく。
5教科と、総合評価の書いた紙。
あぁ、やっぱり平凡だ、と思う。
良くも悪くもない70点台の点数が3教科。
唯一85点だったのは数学。一番悪かったのは53点の社会。
総合評価も平均ど真ん中。ちょっと揺れながらも平均の線と同じようにグラフが書いてある。
通知表は3と4が並んでいた。社会だけ、2だったけれど。
中学校生活は、常に平均だった。
良いんだか、悪いんだか。
そんな僕の親友はゆな。何でも完璧のハイスペックボーイ。
ゆなってあだ名は、本名を忘れさせるものだった。
俺も一学期が終わる頃には本名を忘れていた。
「ゆな。」
「なぁに?」
「どうだった?点数」
「んーまぁ450点だよ、合計はね。」
「え、すご!?」
「ふふーん。、、、まぁ、勉強くらいしかすることなくて、、。」
ゆながちょっと暗い顔をする。
「ふ、ふぅん?ゆな、なんかあった?」
俺が聞くと
「え!?あ、いや!なんでも!!」
ゆながそう言って慌てて顔を隠す。
何かあるんだろうか。
そんなことを考えつつ、僕は何も気に留めてなかった。
『また、今回もしっぱいしちゃった。〇〇くんは、、、?』
『ん、あ、あははっ、僕もしっぱいだった。でもお互いがんばろー?』
そーいや、子役を目指してた頃があったっけ、。、、、〇〇くんって誰だろう。ゆなみたいな面影があるのは、気のせいかな。
早く来すぎて教室で居眠りをしてしまっていたために夢のせいで色々思い出してしまった。
子役なんて、今はなんで目指していたか分からない。
ゆなに似ていたあの子はゆななのだろうか。
幼馴染?
そうだっけ、、?
「おっはよぅ、未海。」
昨日と対照的な明るさのゆなに振り向く。
「おはよ、ゆな。なんでそんな元気なの?」
「あのね!僕、未来ができて!歌い手って知ってる?僕最近よくみるんだけど、その歌い手さんの事務所でオーディションをするの。僕も対象に入ってて、だからやってみようかな、って。」
元気でペラペラ話すゆなに少し興味が湧く。
「ゆな、それもっと詳しく教えてくれる?」
「もっちろん!」
ゆなはそういうとペラペラと話し出す。
歌い手がどう言うものなのか、というところからどんなふうに審査が進んでいくのか、事務所やその事務所の方針まで隅々まで丁寧に教えてくれた。
「へぇー、そんなのあるんだ。」
「、、、もし、良かったら、なんだけどさ。っ、、、一緒に、やらない?」
ゆなの顔が必死で、今日見た夢のあの子と重なる。
「、、今はまだ、決められない、、ごめん、ね?」
「、、、そっか、そう、だよね。」
しゅんとするゆなを励ましたくて
「でも、俺、平均すぎるの嫌だなって思ってたから!やってみても良いかもしれない!!」
と明るく話す。ゆなの顔もぱぁっと明るくなる。
「まだわかんないけど、でも、一緒に高みを目指そう。」
そういったゆなの顔はこれまで以上に明るく、嬉しそうな顔をしていた。
家に帰っても決心がつかない。
どうしよう?
でも
何をしていても笑顔のゆなが頭から離れてくれなかった。
そんな自分を落ち着けるべく、ゆなが言っていた応募のサイトを検索する。
案外すぐ見つかったそのサイトにはゆなが言っていたことがそのまま書いてある。
応募用紙はこちら(コンビニなどで印刷可能)
インターネットで応募も可能→フォームをチェック。
俺は、、、インターネットかなぁ。親にバレるの嫌だし。
「本名を入力」
「やりたかった理由」
「特技」
「好きなもの」
「年齢(学年)」
「偽名」
などなど、たくさんの質問に丁寧に答えていく。
最後の「送信」ボタンを押す。
でも、ゆなに伝える勇気がなかった。
ゆなと一緒に高みを目指したいから、ゆなの笑う顔をもっとみたかったから、でも、、、。
ゆなには伝えることができなかった。
変わりたい
変わりたい。
お願いします
俺を変えさせるチャンスをください
書類審査は無事通過したみたいだった。
「次は、、面接か、、、。」
面接通過されちゃえばもう活動開始みたいなもんだよな、という見解で、ネットを立ち上げてみる。
”みうみ【活動開始まであと1ヶ月の歌い手】“
と言う名前にしてみる。
次の日から少しずつ活動してみることにした。
フォロワーは最初に数人増えただけでそのあとはすぐ伸び悩む。
現在フォロワー数10人。
多いんだか、少ないんだか。
まぁ、活動してないから当然くらいの数だと思う。
”初めまして!あと1ヶ月で歌い手になる(予定)のみうみです!
実は〔#ユメミライ〕に参加しています。
書類審査通過したので、ユメミライに参加できなくても活動を始めてみようと思ってアカウントを立ち上げました!
これからよろしくお願いします!
よければフォローといいねよろしくねっ!“
と、とりあえず書いてみる。
返信はないがフォロワーも少し増え、いいねも数件ついた。
そしてついにきた面接の日当日。
記憶はほぼなかった。
緊張したこと、怖かったこと。でも最後はわくわくした気分で外の空気を吸ったことだけ覚えていて。
そして、俺は一枚の書類を持っていた。
”面接通過です。ユメミライ事務所で行われる最終審査にご参加ください。
日時 ◯月◯日××時より開催
場所 ユメミライ事務所
その他、、、、、、、、、“
その後行われた事務所で行われた最終審査。
そこで俺は久しぶりにゆなと会った。
「、、、、!え、、だれ、、って、ゆなじゃん!お互いここまで来たんだね!」
背中をツンっと触られた感触がして、振り向けばゆなと明るい茶髪の男の子がいた。
「俺、昨日は一人でさ〜。、、って、その人、誰?」
「あ、りつです。昨日ゆなと会って。」
「へぇ。俺、みうみって言います。え、と、昔からゆなと知り合いで、、、。とにかく、仲良くしてください!」
「よろしくお願いします。、、、タメ口でもいいですか?」
「あ、全然!俺もタメで行く〜!」
「じゃ。友達がいないみうみの友達探しでも行く?」
「うん!行きたい!」
「友達がいないってなんだよ!」
そんな会話をしている間になんとなく打ち解けてしまった。
りつの明るさと、ゆなのしっかりした感じで。
なんかもうすでに俺の知ってる歌い手みたいになってて。
気づけば、、、気づけば6人組になって、グループ結成が決まっていた。
俺
と
りつ
と
ゆな
と
クールでイケボで優しいお兄さん、樹里
と
元気で可愛い天使、ちぃ
と
ちょっと闇っぽい腹黒天使、つくね
信じられないけど、いつの間にか打ち解けて、仲良くなって。
ずっと昔から一緒にいたみたいになっていた。
一緒にいることが楽しくて、みんなでバカみたいに話して。
歳が近いのに、みんな信じられない量の経験量で。
置いていかれそうだったけど、メンバー引っ張ってくれた。
ユメミライ、始動開始
「みなさん初めまして!ユメミライです!これから新人歌い手として活動していきます!もしかしたらこの子見かけたことあるかもー?って子がいるかもしれません。よろしくお願いします!!」
ゆなの声で始まる配信。
「それでは自己紹介していきます!リーダーのゆなと!」
「樹里と〜」
「りつと!!」
「みうみとっっっ!」
「ちぃと!」
「つくねです。」
「これからよろしくお願いします!」
緊張しながら、でもなんか楽しくて。
「えーと、、今回はっ!これやります、ででん!メンバーのことをもっと知ろう!お題にあった自己紹介ー!!」
ゆなが戸惑いながらもそう言って、企画がはじまる。
なんだかんだで企画を終え、みんなくたくた。
「配信って、、、こんなに疲れるんだ〜、、。」
「マジ疲れた。」
それぞれがぽつりぽつりと話して、みんなだんだん通話から抜けて、初日はそんな感じだった。
それが、まだ同時視聴者262人という人数の頃の話である。
「、、、ってな感じでさ、俺が歌い手になった経緯は、ゆななの!“そうなんですね!“うん。ゆなにはお世話になってばっかで。でも〜、グループ内で相方だけどさ、もう家族みたいなもんだよね。もちろんメンバーも、仲良いけど、家族みたいなもんなんだけどさ!、、、でも、ゆなはずっと一緒だから。」
俺がようやく話し終えてふぅ、と息を吐く。
「”話してくれてありがとう“、いえいえ。なーんか、みんなよりつまんないでしょ?、、え?”そんなことないですよ!“んー、でもなぁ、、、。あーっ!疲れたーーー!!そろそろ配信終わりにしよっかな。もっと一緒に雑談したかったよね!ごめんねー。またさ、雑談配信するし。てか、1時間限定って言っておきながら30分もオーバーしちゃったよw予定より一緒に入れて嬉しかったかな。”ありがとうございました!楽しかったです”俺も楽しかったー!みんなたくさんのスパチャもありがとね。じゃあ、十人だけお名前呼びして終わりにしよっかな。、、、って、ゆながスパチャしてるー!!ありがとぉぉぉ。じゃあ、、、え、と、ね。ゆぅな、みほ、みうみっこ、みうちゃ、しおり、りこのみうみ♡、あいる、みなみ、らん、みうみ♡ちゅ。、ありがと〜!他のみんなもありがとね。じゃあ、おつみうみっ!!まぁたね。」
、、元気なみうみでみんなとお別れ。
BGMがだんだん小さくなっていって、配信を停止のボタンを押す。
「はぁ。」
ため息をつく。
疲れたなぁと思いながら。
最初の頃はもっと疲れていた気がするけど。
でも。
歌い手を始めようと思った日よりは、成長できたかな。




