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未来(ゆめ)〜ユメミライ〜  作者: 莉ゆ。꒰ა♡໒꒱
過去の未来(ゆめ)
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2章 過去の未来(ゆめ) 【家族アイ】

「ありがとねぇ〜!ばいばぁいー!」

 ある日の配信を終えた時のこと。

エゴサをしていて、ふいに目が止まる。

「“ゆーくんも自分の過去話してくれないかなぁ”」

「“最近みんななんか過去の話してくれるからゆなくんのも聞きたいなぁ”」

 #ゆなくん #ゆーくん #ユメミライ というタグがついた何件ものぼく宛の手紙。

「ぼくの、過去、、、?」

 ぼくのことは聞かないでほしかった。

妹のことも関わるから。


だって、妹が、、。妹が、、、。


ぼくが壊れてしまったのは、あの日。

妹が、熱で倒れた日。

救急車で搬送されて。

ぼくは小学1年生だった。

理解できるはずのものを理解するのに3日もかかった。

でも、最初からわかっていたんだ。

だから壊れてしまった。



「ユウくん、ユウくん。」

「ゆなくん、ゆなくん。」

 なんで、ぼくの名前は、、、みんなに忘れられちゃうんだろう。



「なゆお兄ちゃん。」

 妹・刹那(せつな)の可愛い声がした。

「どうした?」

「おねちゅでちゃったの、また。」

 悲しそうな顔で言う刹那が可哀想だった。

刹那は“周期性発熱”という病気を持っていた。

「お兄ちゃんがアイス買ってあげるよ。、、何がいい?」

 刹那が熱を出した時は、いつもぼくが刹那の面倒を見ていた。

コンビニが近いから、アイスやゼリーを買ってっ来てあげていた。

「んーとね、せちゅなはね、ちょこれーとあいちゅがいー」

 顔を真っ赤にさせる刹那はうまく呂律が回っていない。

「チョコアイスね。待ってて。すぐ買ってくる。」

 自分の部屋へ行って昔から使っている財布を持ち出す。親が刹那ように貯めている500円貯金から500円を二枚取り出すと、「行ってきます」と声をかけて家を出た。

家から走って5分もかからない場所にあるコンビニに入る。

「いらっしゃいませー」

 という声と共に店内に入ると涼しい風に当たる。走ってきた暑さにはちょうどよかった。

急いでチョコレートアイスを取ると、店員さんのところへ持っていく。

「ありがとうございまーす。袋はつけますか?」

 いいです、と言おうとしてエコバックを持ってこなかったことに気づく。

「あ、お願いします。」

 そういうと店員さんはニコニコ対応してくれた。

「630円です。」

 500円玉二枚を出して、370円のお釣りを丁寧に財布に入れる。

アイスが溶けないように、と走って帰る。

家が見えた時だった。

家の前には何台もの救急車が赤いライトを照らしていた。


後から知ったことだったが、家で仕事をしていた母が刹那のことを見にきた時、刹那が痙攣していたそうだ。

刹那は、熱生痙攣を起こしていた。


「そう、ですか、、入院、、、。」

 お母さんの声が聞こえる。

「一人で入院は無理ですよね、、、。私も泊まります。」

 不安そうなお母さんの声。

刹那が一人で入院なんてできるはずもなかった。

まだ4歳だ。


そして、驚愕の事実を知るまで時間はあまりなかった。


3日後、妹の入院の延長が決まった。それと共にぼくとお母さん、お父さんが呼び出された。

しばらくつきっきりのお母さんとお父さんはひどく疲れた顔をしていた。

「娘さんは、ガンがあるようなんです。」

 お医者さんの辛そうな顔は忘れられない。

「ガン、ですか、、。」

「最初の方に見つかったので、ここから治療すれば治りはすると思うんですが、、。」

 神妙な面持ちで言われて、不安になる。

「お母さん、お父さんの付き添いはできるかぎりとします。ガンとなると、治療のこともありますし、病院に呼び出す回数も多くなってしまいます。なにより入院期間が長いので大変かと。」

「、そう、ですね、、、。できるだけ一緒にいたいんですが、疲れてしまって。」

「こちらは大丈夫ですよ。小児病棟のナースは24時間体制でいますのでナースコールを教えてあげれば、呼び出して何かをしてもらうことも可能です。どんな用事でも、ナースさんを呼びたくなったら呼んでいい、と伝えてください。」

 丁寧な先生の対応に少し安堵したようなお母さんとお父さんの顔。

「ガン治療の話なんですが、、、、。」

 ここからの話は小1のぼくには何もわからず、覚えてない。

でも、治療費用が高いこと。妹が全然お家に帰れないこと。

それを、とても絶望的に思ったこと覚えていた。


ぼくは、その時決意した。

子役になってみせると。


子役になりたいと思っていた。

親にも相談していた。

無料でレッスンができるところも見つけていた。

今こそ、勇気の一歩を踏み出すときだと。

そう、幼いながら決心した。



「なゆ、本当に子役になりたいの?」

「うん。ぼく、、子役になりたんだ。刹那が大変だからこそ、ぼくも頑張りたい。子役になって、お仕事をもらって、少しでも刹那を助けたいんだ、、」

「そう。じゃあ、無料レッスンのところに行ってみようか。なゆがやりたいなら、ね。お名前、本名じゃなくてもいいみたいだけど、芸名、なにがいい?」

「げいめい、、、お仕事の名前のこと、、、。んーと、んーと、、、。ゆな。」

「じゃあ、ゆなにしてみようか」

 そういって、お母さんはスマホを取り出すと、電話を始めた。

「すいません、張り紙を見たものなんですが、、、。はい、息子がやってみたいと言っていまして、今からでも大丈夫ですかね?、、本当に無料でやっていただけるんですか??感謝しかないです。、、、あ、ゆなっていいます。芸名です。、、ありがとうございます。はい、では明日伺います。」

 お母さんの顔は明るかった。

「まさか、なゆが刹那のことそこまで思ってくれてるとは思わなかったから、、。無料でできるみたいだし、いいんじゃないかな。明日ね、おいでって言ってたよ。レッスンの先生。すごく優しそうな人だったよ。」

 お母さんが笑顔でそう言う。ぼくは明るく頷いた。



「初めまして。ゆな、です。」

「今日からレッスンのゆなくんです。ゆなくんはみうみくんと同じチームでやってもらいます。」

 次の日、優しそうな女の先生とチームメンバーに迎えられて、無料レッスンが始まった。

演技のことを少しずつ教えてくれて。

チームメンバーでお芝居をやってみたり。

数週間、楽しくレッスンした。

チームメンバーの中で一番仲が良くなったのがみうみくんだ。

「みうみくん、ここなんだけど、、、。」

「あ!ここはねー、、。」

 明るくて元気なみうみくんは、人見知りのぼくを引っ張ってくれた。


でも、今思うと、2人で引っ張り合って成長してきたのかもしれない。

そして。

その日はきた。


「今日は少しオーディションをします。個人でね。今度の子供番組、〇〇英語!に出演できる人を決めます。〇〇英語!は、数週間のゲストとして、数人出る中の1人で、結構重大な役を、ここで選ばせてもらえることになりました。」

 先生がそう告げる。

小さな教室に緊迫感が迫る。


「お願いします。」

「はい、ゆなくん。じゃあやってみてくれる?」

 先生と2人だけの小部屋で、覚えてきた台本を必死に演技していく。

「Hello、I'm、yuna.」

「ぼく、英語を覚えているんだ。教えてくれないかなぁ。」

「え?ぼくと同い年で英語を教えてくれる子がいるの!?すごいなぁ。教えて欲しいなぁ。、、、え?いいの!?ぼく、英語、頑張って覚えたいんだよ。」


「はい、そこまでねー。んー、まぁ、よし!演技としては完璧だったよ。でもねー、うーん。子供っぽすぎるのかなぁ、、、。」

 先生がそう言って悩む。

「まぁ、次の人行こうか。あとで発表するからね。」

 そう言われて、あとで発表されたのはぼくの次にオーディションを受けた男の子だった。

当たり前だった。

ぼくより前から演技の練習を必死にしていた子だ。

頑張った成果なのだろう。

「はぁ、ぼく、頑張れるのかなぁ、ここで。」

 そう、つぶやいたのが、もうすぐで小学2年生に進学するときだった。


そして、ぼくは進級する。


進級して、刹那は退院した。

「お疲れ、刹那。」

 でも。

一旦帰省と言われていた。

それでも嬉しくて。

一旦帰省中たくさん刹那と遊んだ。

刹那は定期的に病院に行きつつだった。

でも帰省期間が長くなったりして、ぼくはまたあの日々が戻ってくると思って嬉しくなった。

そんな気持ちが昂っていた日。

「ゆなくん。子役、年齢が高くなってきてるじゃない?小学4年生で終わりなんだけどね、ここ。もう3年生になりそうでしょ?まだ続けようと思ってる??」

 先生にそう言われた。

進級した日から、一年が経とうとしていた。

刹那は、約1年くらい、一旦帰省を伸ばして、あの日々を。同じような毎日を続けていた。

「続けたいです。でも、小学4年生になったら潔くやめます。演技レッスンは無駄じゃないと思うので、仕事にならなくても。」

 ぼくがそう言うと先生は優しい笑顔で頷いてくれた。


そこから1年。

必死になってレッスンして、仕事ももらえるように頑張ったけれど。

結局は4年間仕事をもらえず終わった。


「ありがとう、ゆなくん。みうみくん。」

 最後はみうみくんと一緒に先生と3人だけのお別れだった。

「さよなら。ぼく、有名になって先生に見つけてもらえるように頑張ります。」

 ぼくは宣言して、先生の答えを聞かずに家に帰った。


家に帰ると、そこに刹那はいなかった。

そうだ、1年前、入院期間に入り、半年前に一旦帰省するものの、また入院生活になってしまった。

長かった1年の日々は、2度と戻ってこない気がした。

でも、帰れば刹那がいる気がして。

結局誰もいなくて。



その後2年間。刹那の容体は変化することなく。

手術の準備をしながら入院したり、帰省したりを繰り返した。

そして、ぼくは歌い手になることを決める。


刹那が手術をすることになったからだ。



「頑張って。」

 手術当日。

一言告げる。


その後不意にスマホを眺める。

中学生になってもらったスマホで何気なく、流行りの“歌い手”を眺めていた。


ぼくにもできるかもしれない。

そう思ったのは刹那の手術中。

不安の波が押し寄せてくる中の救いの船だった。


歌い手になりたいと思ってから、すぐ活動を始めた。

その後見つけたチラシが“ユメミライ”だった。

その後はそのままの流れで結果最終審査まで行った。

りつと会って。

みうみもユメミライに参加していて。


いつの間にかユメミライになっていた。

「誰がリーダーになる?」

「やっぱ、ゆなじゃない?」

「、、だよね。僕もそう思った。」

 みんなから推薦されてぼくはユメミライのリーダーになった。


リーダーの自信なんてなかった。

でも、なんだかできる気がした。

自然と湧いてきた自信とは逆に、不安になってしまうこれからのこと。

「うん、頑張るね、ぼく。」

 湧いてきた自信と共に僕は頷いた。

メンバーも生き生きしていて、楽しそうだった。


「刹那。」

那由多(なゆた)お兄ちゃん。」

 刹那の第二手術の日。

ぼくは久しぶりに刹那の顔を見た。

「全然会いにきてくれないじゃん。お兄ちゃん。」

「ごめん、普通に忙しい。」

「お兄ちゃんのおかげで手術の費用が少し浮いたしね。感謝してるよ。」

 刹那がニコッと笑う。

「那由多ってっさ、刹那と真逆の意味なんだって。お兄ちゃん知ってた?那由多って、一番大きな数字なの。お兄ちゃんは無限の可能性を持ってる。刹那は一番小さな数字。でもね。刹那って名前、私は好きなんだ。だって一番小さいのはもっと大きくなれるってこと。ね?だから私たちもっと頑張れるよ。お互い頑張ろう。お兄ちゃん。」

 刹那は嬉しそうな笑顔でこちらを向いて、頑張るね。と言ってから手術室に向かう担架にのった。


ぼくも。

もっと先に向かおうと思った。

刹那と一緒に。

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