生まれながらの罪
シルヴァント·ブライアスは黒き六天竜の誓約者だ。
誰もが憧れ、誰もが畏怖する力を持ち、国に仇なす物を排除する。
――特級魔法士。
それが、彼だ。
「さすがシルヴァント様」
「あっ…、いえ。ありがとうございます」
背後から話しかけられ、シルヴァントは1歩下がった。
その拍子に、大きな何かとぶつかる。
「どうした、シルヴァント」
「ううん、なんでもないよ。ぶつかってゴメンね、ノイン」
全身真っ黒な装いの長身の男は、彼の誓獣の仮の姿。
ピッタリと寄り添う姿は、まるで保護者だ。
「おお、彼が黒き六天竜…っ!ノイジュヴァーン様ですね」
「…余の名を気安く呼ぶな」
キッと睨まれ、男は体を震わせた。
「やめて、ノイン!」
「な、なんなんだお前!誓獣のくせに偉そうに!お前らなんて所詮人殺しのくせに!」
そう言って男は大きく走り出した。
シルヴァントには、引き止める言葉は浮かばない。
ふくよかだった背中が見えなくなると、シルヴァントは空を見上げた。
ノイジュヴァーンは、スっと目を細め、シルヴァントの肩を抱きしめた。
「……人殺し、か」
人より強いのは生まれた瞬間から分かっていた。
だから僕は、5歳になってすぐ、アカデミーに入学した。
「ねえ、かあさま!なんでアリスはいけないの?」
「こら、アリスティア!シルヴァントは遊びに行くんじゃないんだ。魔法を学びに行くんだよ」
「なんで?シンはおとーさまより強いのにおべんきょーするの?」
「ほら、アリスティア。お父様を困らせないで!」
温かで優しい日常。
ブライアス家は僕を家族として迎え入れてくれた。
でも、優しい世界はあの家の中だけで、現実は知らないでは済まされないほど、残酷だ。
「お前がシルヴァント·ブライアスか」
「…だれ?」
「…っ!お前が!俺の父さんを殺したんだ!その黒いバケモノと一緒に!」
それを知る時は早かった。
だってこの国は騎士や魔法士たちに守られている。
あの日、僕が生まれたあの時。
たくさんの命が一瞬で消えたと言われた。
《黒き六天竜の厄災》
《百獣夜行》
僕とノインは大きな罪を背負ってる。
僕らは、生まれながらにして、人殺しなんだと。




