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つきつづけた嘘は、やがて君になる  作者: 南十字 星那
第一章 過去編
2/8

夜が世界を見つめる日

「ねぇ、リゼ。あれ、あの子じゃない?」


ダグラスの言葉に、リーゼロッテは窓の外を見た。


あの出来事から2年、リーゼロッテは少し大人になった。


「無茶をするな!お前を失ったら、私はコーネリアになんて謝ればいい…」


あの子を助けた日。

領地で静養を、とアカデミーから強制的に休みを取らされ、リーゼロッテは王都より東にあるドイッセル侯爵家へと帰還した。


知らせを受けていた父は崩れるようにリーゼロッテを抱きしめ、乳母は泣き叫び、叔父は幼い妹たちを抱いて、こちらの様子を伺っていた。


「ただいま、帰りました」


そう、気まずそうなリーゼロッテに、叔父の腕から抜け出した妹たちが笑顔で走ってくるのを、父の腕の中で眺めていた。


そんな領地で7日ほど過ごし、アカデミーに復学したリーゼロッテは、更にクラスの人気者になっていた。


国の英雄と言われた母の面影を色濃く継いだ端正な顔立ちは、男女問わず見惚れるものがある。


「…本当だ。でも入学の年齢に達していないはずじゃ…」


あの後、父が話してくれたのはあの子のことだ。

彼の名前はシルヴァント・ブライアス。

ドイッセルと同じ、建国の王と共にこの国の発展に尽力した一族・ブライアス侯爵家の養子だという。


15年前の黒の六天竜が中心となって起きた厄災《百獣夜行》として歴史でも学ぶ。詳細は多くは語られていないが、彼は胎児の時に黒竜と誓約し、産声をあげた瞬間に起きた魔力暴走で、周辺の山や村が消滅した。


あの日、リーゼロッテが目にした魔力の暴走も、小さな身体には扱えないほど大きな魔力によって起きたものだと思われる。


「アカデミーは、魔力を持つ子供であれば全員入学する義務がある。……魔力の制御が目的だからね」


リーゼロッテと同じように窓を覗き込むダグラスの誓獣は、緑の竜だ。

このアカデミーでは、入学してから1年の座学。そして、誓獣の儀式による魔力の安定化が目的だと言われている。


昔は当たり前のように皆が持っていた魔力も、現代では希少とされ、特に誓獣が竜である場合は、竜騎士と呼ばれる国の先鋭部隊へと、就職がほぼ内定している。


「しかし、もうあの子は誓約してるのだろう?」

「んー…まぁ王都は、結界や守りが領地にいるよりしっかりしてるから、だろうね。あのブライアス家も、高名な魔法士はアーロック様しかいないはずだし」


窓の外では、他の子たちとは離れた場所から授業を受けているシルヴァントがいる。


確かあの流れは、誓獣の儀式についての確認……。


「ほら、リゼ。もう僕は書き終わったけど、君はどう?」

「ああ、待ってくれ!ここまでは書けてるから――」


黒板に書かれた文字を早く写し終わらなければ。

リーゼロッテは消されないように、必死にペンを走らせるのだった。


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