黒の竜巻
初めまして、南十字 星那です。
ファンタジー長編です。
嘘と誓いと、少し切ない話を書きました。
よろしければお付き合いください。
「にげろ――――!!」
黒い竜巻が轟々と音を立て、こちらへ迫ってくる。
その中心で、真っ黒な竜が翼を広げていた。
——あれが、竜巻を起こしている。
リーゼロッテはそう直感した。
「リーゼロッテ! 竜巻の中に子供が!!」
ダグラスの声に、目を細める。
うっすらと見える、小さな影。
「なんという魔力……!あやつが黒竜の誓約者か!!」
「あの子が!?」
どう見ても、三歳ほどにしか見えない。
「……くる……し……たす……け……」
轟音の中、小さな声が、確かに届いた。
リーゼロッテは胸元のブローチを握りしめる。
「イグニール!私に力を貸してくれ!ダグラスは騎士団を!」
「「わかった!!」」
イグニールと呼ばれた老師は、その大きな体を竜に変える。
リーゼロッテが呪文を唱えると、そのブローチは軋む音を立て、大きく形を変える。
「リーゼロッテ·ドイッセル!参る!!」
その小さな背中に弾かれるように、同じく小さな背中が走り出す。
「アースティア!!!」
「ダグラス、急ぐわよ!!」
緑の竜が姿を表すと、その背にダグラスが飛び乗った。
飛び立つその姿を目の端で送り出すと、イグニールは大きく息をつく。
「同じ六天竜として、情けないぞ!ノイジュヴァーン!!」
強く翼を広げ、イグニールが咆哮を上げた。
伝説とされた六天竜が、二頭空を舞う。
「今だ!」
黒竜が竜巻を離れ、勢いをなくした瞬間。
リーゼロッテは踏み込んだ。
「手を伸ばせ!!!」
苦しむ小さな影がハッキリとした。
「おねぇちゃん…っ!!」
小さな手を掴んだ時、大きな影がいくつも頭上を駆け抜ける。
――応援だ。
「リーゼロッテ!!」
「ダグラス」
「無事かい?!」
「あぁ、私は大丈夫だ」
腕の中でぐったりと、でも微かな息遣いで生きてるとわかる。
今更ながらの恐怖に、リーゼロッテはその小さな体を抱きしめた。
「…とても、ご立派でした」
「…あぁ」
守れた、この私でも…
大きく息を吸い込み、更に強く抱き締めた。
埃っぽい匂いの中に、仄かな温もりを感じながら、リーゼロッテの意識はそこで途切れた。




