表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/35

県別予選、トーナメント戦 事前挨拶


 凡そ六日。

 時間はあっという間に過ぎた。


 授業はロクに耳に入らず、ノートは戦術をひたすら書き込むばかりだった。


 何百通りのパターンを考え、あらかじめ最適解を導き出す。

 


 あっという間に週末になって。


 その時が来た。



**


 県別予選。 

 その本戦へと、俺は駒を進めている。


 ベスト六十四から優勝まで。

 


 ここからは一般客の観戦も可能になる。

 つまり、スカウトやスポンサーの目に止まる可能性が出てくるのもここからだ。


 探索者はマネーゲーム。

 資金があれば高ランクのカードにアクセスしやすいし、個人が少しずつやって行くより何倍も早く強くなれる。



 プロとして本気で頂上を目指すならば、ここに辿り着く必要がある。


 ……しっかりやらなければ。



 なるんだろ?

 ……探索者、それも上位の探索者に。


 


**


「じゃあ、ちょっと友達と遊んでくるから」


 俺は家でくつろいでいた姉に告げて、靴を履いた。


「友達? いるのー?」

「いるよ! 失礼な」

「まあまあ。そんなバレバレな嘘つかなくても」

「……嘘って」

「姉の事舐め過ぎでしょ。これでも探索者として生計立ててんだよ? 知らない訳ないじゃん」

「バレてたんだ」

「しっかりやんなよ〜?」

「それは分かってるけど、観戦はしないでね」

「何でよ」

「……家族が応援に来るの恥ずかしいし」

「はー。珍しいこと言うようになったねー。これも成長かな?」

「もう行くよ?」

「はいはい。行ってらっしゃい。颯太」


**


「はい。相沢 颯太さんですね? 後ほど会場まで案内いたしますので、あちらでお待ち下さい」


 受付の人に言われ、俺は書類とIDカードを首にぶら下げて大部屋へと案内された。



 適当な席を取って、俺は座る。

 辺りを見渡すと、周りは参加者がほとんどだった。


 中学三年と高校一年。

 その年代が入り混じる訳でだが、親連れの参加者も多い。


 まあ中学生ではある訳だし、不自然ではないけれど。

 俺の場合、保護者の同意書があるから大丈夫だ。


「あ」


 辺りを見渡していると、知り合いに気づいた。

 河合だ。


 目があったが、そっけなく逸らされる。

 まあ二次予選を突破していたのは知っていたけれど、前回気まずく終わったのもあって仲良く談笑とは行かないのだろう。仕方がない。


 携帯を触りながら待っていると、やがてスタッフの量が目に見えて多くなって行ったのが分かった。


 その動向を注目していると、『ビーーーー』という大きなブザー音がなって参加者らの声が途切れた。

 スタッフの内の一人がマイクに向かって話し始める。


『えー、皆様。本日はお集まり頂き誠にありがとうございます。これより会場へと向かっていただくのですが、試合開始前に皆様には一言インタビューを行います。尚、保護者様の同行は出来ないため観客席へとお移り下さい』


 ざわざわとざわめく会場と、別の女性スタッフにマイクを渡した、先程のアナウンサー。


『会場はこちらですので、各自名前を呼ばれたら会場へと向かってマイクをお拾い下さい』


 その言葉と共に、ぞろぞろと出口へと案内されていく保護者らと、会場の様子が映し出されたモニターに目線をやる参加者達。


 保護者らが移動し終えると、アナウンサーが話す会場の音声が聞こえてきた。


『さあ始まりました、大阪予選! 実況を務めますのはわたくし、長谷部と解説の』

『林です』

『では、画面に第32回大会のプロモーションビデオを流させて頂きます!』


 画面にビデオが流れる。

 前回大会のハイライトに合わせ、音楽が流れる。


 それからテロップが挿入されていった。


『さあ、三十二回に渡る毎年恒例の探索者選手権大会! ラウンド1、2では四試合を同時に行わせて頂きますがベスト16同士の試合からは二試合同時、そしてベスト4からは一試合ずつ行います!是非とも楽しんで行ってください!!』


 明るい声が響く。

 スピーカーから発せられる声に耳を傾けていると、その意識は突然遮られた。


「相沢 颯太さん」

「あ、はい!」

「五十音順となりますので、最初に意気込みを語っていただくことになります。準備は宜しいでしょうか?」

「はい。大丈夫です」


 そう言われ、俺は準備室から出た。


『さあ、次は参加者の皆様に一言意気込みを語って頂きます。では、最初は相沢 颯太さん』


 ステージに案内され、俺は段を上がってステージの上に立った。


「トップバッターと言うことで。どうですか? 緊張してますか?」


 スタンド型のマイクの前に誘導され、その前に立つ。

 横にいたアナウンサーの長谷部さんに明るく聞かれた。


 何百、何千といる観客の視線が一斉に注がれるのを感じた。

 強い光を浴びさせられ、目が少し眩しいと感じる。

 

 それでも、ゆったりと落ち着いた声で言葉を返した。


「……そうですね。中々緊張してます」

「見えませんねー。では、意気込みをどうぞ!」

「精一杯頑張らせて頂きたいです」

「ありがとうございます! では次、青木 駿さん!」


 入れ替わるように、俺はステージを降りた。

 スタッフに「こちらです」と案内されるがままに準備室へと戻る。


 そこでようやく緊張の息を吐き出した。


 無難な返しは出来ただろうか。

 準備室に戻ると、参加者らからの視線を浴びてからすぐにそれが消えるのを感じた。


 変には思われてない筈。



 そう思いながら、俺は再び席に戻ったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ