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不調


 第二次予選は順調に進んで行った。

 


 前回と同じように八戦を戦うだけだ。

 彼女達と会った時、何事もなかったかのようにリリィは振る舞った。


 だから、俺も同じように合わせた。



「いけ、リリィ」

「はい」



 リリィが素直に命令に従う。

 俺は命令を下しながら、普段通りに接することが出来ているかどうか、そればかりを気にしていた。



 一戦目も、二戦目も三戦目も順調に勝ち進んでいた。



 それでも。

 明らかに、俺たちの動きは悪い。


 幸運にも相手は二次予選とはいえランク的にはあまり強くなく、問題なく力で押し切ることが出来た。


 だが連携面が微妙だ。

 原因は分かっている。俺の命令に積極性が無くなっているのと、彼女らの動きにキレがない。



 メイ自体の動きは下がっていないが、彼女もチームに釣られて不調に下がっていた。



 四戦目。


「メイ、相手の口裂け女に突っ込め。リリィは雷撃を敵マスターに向けて放ってくれ」


 采配を下す。


 メイは口裂け女と交戦し、優位性を保つが今一つ倒しきれていない。

 攻撃さえ当てれれば致命傷に出来るのだが、その攻撃を上手く流されたり躱されたりしてしまっている。


 リリィも魔法を放っているが、あまり自主的に動いていない。

 普段ならもっと積極的に攻撃し、相手を掻き回してくれるのだがそれが無かった。


「……」


 攻め切れるか?


 そう考える。

 相手のマスターに隙が見える。


 丁度アンナの援護で、相手の口裂け女を瀕死まで持っていけた。


 次のメイの攻撃で口裂け女を倒せるだろう。

 そこでメイに新しい命令を下す必要が出る。


 相手のマスターに追い討ちを掛けるべきだろう。成功すれば戦況は勝利まで持っていけるはずだ。リスクも大きくない。



 ………いや。


「一旦退け」


焦る必要はないだろう?


 そう自分に言い聞かせた。



 しかし。

 メイは指示とは反対に、敵に突っ込んで試合を終わらせてみせた。


 

 威圧。

 彼女から、オーラを感じる。それは獰猛で誰にも止められないようなものだった。


「メイ、結果としては良かったが……」


 俺は戻ってきたメイに話しかけようとする。

 けれど彼女は、人間の姿に返信するなり鋭い目付きで返すだけだった。


「マスター」

「っ」

「しっかりろ。あそこは攻めきれた場面だ」

「確かにそうではあるが……」

「マスター。焦る必要はないんだ。私は、まあ普段通りとは言わないがしっかりとやっているつもりだ。なら、せめて私にだけでもマトモに動け。チームに流されるなよ、マスター」


 鋭い目つきとは裏腹に、諭すような言葉で心が落ち着いて行く。


「……ああ。悪かった」


 

**


 八戦八勝。

 第二次予選の突破が決まった。


 大丈夫だ。

 ちゃんと、うまくやれている筈だ。


 自分の中にある自信を揺らがす訳にはいかない。

 来週の県別予選の本戦大会にはしっかりと問題を解決しよう。


 ちゃんと。

 ちゃんと、相沢 颯太らしく。




 格好良く問題を解決しなければ。

 だってそれが、俺だろう?

 



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