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大会 予選

第一章 パート3 「大会 前編」開幕です。


 参加費三万。

 日本には凡そ70万人ほどいる探索者らのなか、各年代で毎年注目株が出てくる。


 その才能の発掘場として利用されるのが、全日本中・高等部探索者選手権大会である。


 

 ただ、十五歳から登録資格が得られる探索者だが、全国大会は十一月だ。

 なので登録時期によって実力の差が出やすく、特に十五歳部門では参加者全員が十五歳ではあるものの、歴十一ヶ月の探索者もいれば、歴一ヶ月未満の探索者もいる。


 しかしこれはどうしようもない部分だろう。


 俺の場合、誕生日は五月中旬ごろなのでなので探索者歴は五ヶ月ちょい程。当然参加する気ではいるが、格上と当たる覚悟もしなくてはならない。



 探索者の中には知名度を欲してない人物もいるが、大半はスポンサー収入や事務所との専属契約や、代表入りを目的としている者が多い。なので数少ないアピール場であるこの大会で躍起になる人間がほとんどだ。


 

 一流の料理人が店でひたすら収益を上げるのも良いが、大会やコンクールに出て賞や知名度を欲するのと同じような理由だろう。



 それに探索者は大会などに出て事務所契約を勝ち取ると言うルートが主流である為、大抵の人間は大会に登録するのだ。



「えー、皆様! それでは第32回、全日本中・高等部探索者選手権大会、大阪一次予選の一日目を開幕致します!!」


 会場アナウンサーが集まった大勢の探索者らにマイクを持って伝える。

 その言葉にこの会場は湧き上がっていた。


「皆様には今より、登録画面にございます番号を確認して頂き、その番号がございます各部屋に移動して頂きます。そして画面にございますQRコードをスキャンしていただき、ゲートをくぐりスタジアムまで移動して頂く事になっております。尚、対戦終了後SNS等に対戦相手の情報を流出する事は禁じられていますのでご了承下さい。発覚した場合、即刻に適切な処置を取らせて頂きます」


 アナウンサーが大会の流れや、ルール、禁止事項を話して行った。

 

「……では、以上で説明を終わります。皆様、ゆっくりと部屋まで移動して下さい」


 説明を聞き終わり、俺は第四会場から移動した。

 出口でスタッフさんの指示により一列に並び、看板通りに進みながら部屋まで移動する。


「15番か……にしても広い会場だな」


 相当な費用がかかっているに違いない。

 俺は15と書かれた大きな部屋に入る。部屋と言っても体育館くらいの広さはあった。



 多くの人で混雑した部屋だった。

 ざっと百人はいるだろうか。

 

 去年の大会参加者は三万人以上だったらしいし、この大阪会場にも2000人をやや下回るくらいは居る筈だ。

 この中で一番を取る。そう意気込まなければ勝てるものも勝てないだろう。


「十五番会場です。では皆様、テープ通りの列にお並び下さい」


 ゾロゾロと散らばっていた人達が一列に並んでいく。

 俺もまた、他の人達のように列に並んで行った。


 俺は少し遅れたせいか、列の真ん中辺りにいる。

 列が進むペースは遅くはないのだが、十分くらいはかかりそうだ。少し、暇になるだろうか。


 俺の前方の青年は友人と来ていたのか、さらに前列の青年と楽しく談笑している。

 

 後方の少女を見る。

 その後方の少女の背後の青年も、青年の後方の少女と話していた。


 俺と後方の少女だけが孤立した形だ。


 目があう。

 気まずさが増した。


 スマホでも触っておいた方が良いのだろうか。しかし、スマホでは特にやることも無いし、登録画面を変に動かしたくもない。


 が、このままでは緊張も解れない。

 相手が男なら悩まないのだが、女というだけでナンパっぽく思われないかとか考え込んでしまうものなのだ。


 そう考えていると、丁度話題を見つけた。


「ねえ、君」


 思い切って、後方の少女に話しかけてみる。

 声は明るく、表情も作ってみる。友達に話しかけるような感覚で。


「何?」


 が、あまり興味のなさげな返しだ。


「あ、いや。ちょっと話し相手が欲しかっただけなんだけどさ。それ、回避の指輪だよね?」

「そう、だけど」

「実はちょっと前、ショップで見かけて買おうかと思ったんだけど、迷ってて。それ性能はどうなの?」


 やはり何故か言い訳苦しいようなナンパをしている気分だ。

 違うんだ。ちょっと前に可愛い彼女が出来たばかりだし、そういうつもりはないんだ。


「えっと、まあ正直言ってアタシ的には微妙。なんか、効果薄い感じ? 全然動きが速くなった気もしないし」

「へー。ハズレ掴まされたって思ってる?」

「これが三十万するとか嘘でしょって思ってる」

「マジかぁ。まあ、ありがとう。買わずに済んで助かったよ」

「お兄さんは引っかからなくて良かったかもね」


 それはそう。


「ていうか、お兄さんなんだ。それ買えるくらいだから、結構腕良い探索者なのかもって思ったし」

「え、お兄さんは誕生日いつなん?」

「俺は五月だよ」

「へー、アタシ六月。そんな変わんないんだね。でも、それで言ったらお兄さんもそれ買うか迷うくらいには腕良いって事っしょ?」

「まあね」


 とはいえ、買おうか迷ってたのは先月の話だし、彼女を見るまでは指輪の存在も忘れてたんだけど。

 しかし、彼女も中々強そうだ。


 ギャルっぽさもあるだけに、戦闘も派手に戦うタイプだったりするのだろうか。

 これで案外、ガチガチの強面のモンスターを使ってたら驚くけど。


「勝ち進んでたら、その内当たるかもね」

「そん時はアタシが勝つよ?」

「俺も、負ける気はないよ」


 気づけば、俺の番が来ていて、機械にQRコードを読み込ませた。

 近くのロボットが、門の台座にある機械をポチポチと触り、門の色が変わる。


「お兄さん、負けないようにね?」

「そっちこそ。華奢そうだけど、大丈夫?」

「余計なお世話だから」


 その言葉を聞き届けて、名前も知らぬ少女から目を離した。

 門をくぐる。


 あたりの景色は既にスタジアム内に変わっていた。

 転移したのだろう。


 システム的にはダンジョンと同じだ。

 ここはダンジョン内の世界構造と同じ、別世界。つまり、モンスターの呼び出しも可能である。


 

 スタジアムのフィールド内に入る。

 

 向こう側には既に対戦相手の青年が立っていて、設置されていた大きな画面には、顔写真と名前が載っていた。

 整備された土のフィールド。

 無観客の空席。


 邪魔をする物は何もなく、カウントダウンを始めた画面内の数字が0になった瞬間、戦闘が開始する。

 

 勝利条件は、相手のモンスター三体全てを撃破、もしくはマスターの撃破だが、当然マスターの周りを守るようにして戦いは展開されるだろう。



『試合を始めます。木村 太郎 対 相沢 颯太。位置に着いて、準備をお願いします』


 音声が流れる。

 音の具合からして、機械音声だろう。


「「よろしくお願いします!!」」


 五十メートルほど先の相手にも聞こえるよう、声を張り上げて開始前の挨拶をする。

 相手の木村という青年も同じく、挨拶をした。


 

 緊張が走り、戦いの為、集中の波にゆったりと沈んでいく。






『3...2...1...スタート!!』



 一次予選の、第一試合が始まった。

 

 


 

 

 





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