白妙の妖狐
マジでブクマと高評価お願いします。
モチベ消えかけてるので。
辛いとか、苦しいとか、そう言う感情は何処にもない。
私は生きてなどいない。
いや、正確に言えば生きてるとも言えるのだろう。
私はモンスターだ。
肉体を脳で動かせる。
その点で言えば、動物とも言えるかもしれない。
けれど、食事は必要ない。
水も睡眠も排泄も着替えも必要ない。
ダンジョンのシステムが補っているのか、元々そう言うモノなのかは分からないけれど、とにかく私達は一般的な生命体とは違った。
私達の死は他の生物と異なって、存在が許されるのはダンジョンエリアの中だけだ。
それでも構わない。
私がどんな道を歩もうと、どんな末路で生を終えようと、それは私が決めることではないのだ。
私は生に執着し、死に怯える。
そして死を受け入れ、生を恐怖するだろう。
私は怪物だ。
何故生まれたのかなんて疑問は考えなくなった。
その方が、人生というの物は楽だからだ。
**
「おー!! ついにレベル5になったぞ」
「……本当ですか? おめでとうございます」
歓喜の声を上げる俺に、白狐がそれなりにテンションを合わせてくれた声で応答した。何やかんやあって、ここまで三ヶ月は掛かってしまったけど、長かったと言う実感と安堵があった。
ここ、迷宮61は雪原エリアだ。
晴れやかな陽射しが低い気温を暖かに照らすが、一向に熱は冷え切った体を温めてはくれなかった。と言うより、寒いためか日差しがあっても歩く度に冷たい空気が頬を叩くのだ。
こうして真っ白な雪地に足跡を付けていると、最初に迷宮に潜った時のことを思い出す。あの時は事前情報を舐めていて、装備が不十分だったんだっけ。今回はしっかりと耐雪のスニーカーとコート、手袋を着込んでいるから大きな寒さは感じていない。
「そうだな……ちょっと一息つくか」
「ですね」
安全地帯を見つけ、登山用リュックを下に敷いてから腰を下ろした。
雪の上を座ると濡れる上に寒いからだ。
それからリュック内のマジックバッグからビニールシーツを取り出し、俺からほんの少し離れた場所で雪の上に敷く。
「みんなも座って」
「あ、はい」
「……ええ」
「分かりました」
「了解です」
リリィ、アンナ、白狐、フェリスがそれぞれ返事をしてから座った。
俺は小さなランプの形をした魔石形ストーブを取り出し、スイッチをオンにして熱を感じる。
「何か飲む?」
俺はリュックの懐からインスタントの飲み物を取り出す。
コーヒー、コーンスープ、ポタージュ、コンソメスープ、ココア。これ系は何十年経っても大して変わり映えしないラインアップだ。
「私たちには食事は必要ないのですが……」
フェリスに指摘されて、頷きながらも俺は言葉を返す。
「だけど、食べれるし味も感じれるんだろ?これくらい遠慮しないで良いからさ」
「……そうですか。ありがとうございます、マスター」
「うん。で、どれが良い?一応変わり種としてパンプキンスープとかホットミルクとかもあるけど」
「ではパンプキンスープを下さい」
「どうぞ」
カップとスプーン、そしてパンプキンスープのスティックを渡して、水筒型のポットを渡す。
彼女がスティックから粉をコップに注ぐと、俺は水筒型のポットから保温されたお湯を彼女のコップに入れた。ドプドプと注がれるお湯を、皆んなが注視していた。
スプーンで掻き回してから、彼女はコップに口を付けてちびちびとスープを飲みだす。
「……あったかい」
小さく呟いた彼女は、嬉しそうな顔で笑っていた。
思わず可愛いとも思う。
「颯太様、私はココアを下さい」
「では私はコンソメスープを」
リリィがココアを、アンナがコンソメスープをリクエストする。
嬉しそうにカップを受け取る二人を見て俺も微笑みを返す。
「白狐は?」
「私はコーヒーを」
「コーヒーにするの?良いけど、苦いから砂糖とかも好きに足しなよ?」
けれど、珈琲を頼むのは何となくイメージ通りだった。
今の彼女は人間姿だが、その彼女は何処となく大人びていて、かつ獣のような荒々しく獰猛な瞳を携えてる。はっきり言えば、容姿はかなりカッコいい方だ。
「……中々、苦いですね」
彼女は少しだけ渋い顔になる。
けれど、すぐ打ち消すように次の言葉を並べた。
「けど、結構いけますね」
というか、彼女達はこれが初めての飲食になるのだろうが、食べ方は知っているのか……。
昔食べる事を経験しているのか、はたまたは知識として誰もが持っているのか……、まあ動物も教えられなくても敵の捕食はできるし、そう言うものなのかもしれない。
「それは良かった。俺もコーヒーにしようかな。角砂糖は入れるけど。……ってお湯無くなってるじゃん。水入れて沸かさないと」
ちなみに魔法で生成した水は飲めない。
正しく言えば、飲めないことはないのだが、魔力が混じった水は体が受け付けないらしく、体調が一時的に悪くなったり、そもそも飲む時点で変な味が付いていて不味いのだ。
なので俺たち探索者は多少重くてもペットボトルの水を数本リュックに常備している。
「マスターは、何故私たちに優しくするのですか?」
「優しく?」
「はい、善意の事です」
善意か。
「まあ、待遇を良くして変に関係を拗らせるのも嫌だし、そもそもさっきのは優しさとは違うと思うよ。あれは精々三十円もしないし、皆んなのおかげで金が余ってる俺からすれば気にも留めないほどの物なんだよ。昔学んだんだけど、喉が渇いた人に水を渡す行為が、善意から来るかどうかってのは状況から決まるんだ。もし自分も喉が渇いていて、水がその一本しかないなら、その行動は善意だろ? でももし水が余るほどあって、喉が潤っているなら、水をあげる事を何とも思わない訳だ。それは善意から来てるとは言い難い。さっきの場合も、同じような事だよ」
「そう言う物ですか」
「ああ」
コップに残ったコーヒーを流し込み、俺は立ち上がる。
彼女達も既に飲み終わって俺を待っていたのか、立ち上がっていた。
「そろそろ行こうか」
俺はそう声をかけ、コップをマジックバッグの中へと仕舞った。
***
マスターは優しい。
不自然な程にだ。これまでにも優しいマスターはいたが、根本にはペットに対するような愛情で、ただ可愛がられているような感覚だった。
人間は、まるで私達が感情を持たないかのように扱う。
けれど確かにそう見られてもおかしくは無いのかもしれない。人間型はやや例外だが、人間からすれば私達を顔や格好で区別するのは難しいし、誰もが敬語で大きな個性を持たない。
けれどマスターは違う。
マスターは少なくとも私が出会って来た人間の中では異質な人だ。
何処か根本的な部分で、彼は他と違った。
向ける視線が、ペットのそれに対する物じゃないし、気遣いも出来ていた。
それに私が何をすれば喜ぶのか、何をすれば嫌がるのかをちゃんと理解しようとしてくれている。
デリカシーに欠ける発言をすれば謝るし、私がまるで人間かのように扱う。
同時に、私はマスターが分からない。
初めて出会うタイプの人間だから、理解出来ない。
単に、そう、マスターは少しだけ人と違う人なのだ。そう思った。
だから、私はマスターを気に入ってるのだ。
投稿は不定期です。基本ストックないので。
モチベ次第です。




