とある同級生
最近文字数が少なすぎて申し訳なく思っている作者です。
「おはよ〜」
寝不足の目を擦りつつ、俺は教室へと入っていた。
昨日は探索していたので、体が未だに軋む。迷宮に潜り始めてから一ヶ月半。計九回。
とはいえ、中々慣れない物だ。
「おい相沢テメェ!!課題の答えメールで送ってくれるって約束したじゃねぇか!!何で送ってくれなかったんだよ!!!」
「あ、ごめん。寝落ちしてた」
「ざけんな!!?」
いやでも自業自得じゃん。
「あぁ憂鬱だわー。取引条件としてお前にジュース奢ったのに、約束破られるなんて思わなかったわー。相沢最低だわー」
「そうだぞ相沢」
「死ね」
「ストレートな悪口だなぁ。仕方ないからまだ時間ある内にとっとと写しなよ」
そう言って俺はプリントを差し出した。
それにワラワラと群がる三人。
「おいまさか君ら全員やってない訳??」
「そうだが?」
「だから援護射撃したのか卑怯者どもめ」
大体、これ十分あれば終わる奴だろ。
何で自分でやろうって発想に至らん訳?
「早く写しなよ。一時間目から体育なんだから、着替えの時間も必要なんだし」
「分かってるって」
**
「アイツら裏切りやがった……」
体育。
斉藤と、アイツが好きな女子生徒をくっつける為ペアになるよう仕組んだ俺たちは、中山との口裏合わせの通り、藤井を省いて組む予定になっていた。
だが、事もあろうことか中山にあっさりと裏切られてしまった俺は、代わりの相手を探していたのだった。
クソ、完全に出遅れた。
うちのクラスの男子は奇数。
よって、あぶれた俺は女子と組む事になる訳だが……。
「あれ、篠原さんじゃん」
「相沢?」
てっきり、クラスでもハブられがちな片山さん辺りと組む事になるかもしれないと失礼ながら覚悟していたのだが、杞憂だったようだ。
篠原美香。
小学校時代からの知り合い、元クラスメイトである。
特段仲が悪くもない相手だ。
「珍しいね。いつもの相手は?」
「風邪で。そっちは何で?」
「まあ色々あって」
「ふーん。じゃ、軽くやろうか」
そういえば話すのは久しぶりかもしれない。
そう思いながら、俺はボールを篠原の元へパスした。
「最近は何してるの?」
「バイトかな」
因みに2050年から労働基準法で十三歳以上なら働いてもいい規約になっている。
「ああ。最近は私もそう。何の為に貯めてるの?」
昔、というか小学生の辺りはそれなりの関わりがあった。
男女混合の誕生日会に呼んでもらえた時とか、金が溜まってクラスの男女数名で遊びに行けた時なんかは彼女ともそれなりに遊んだと思う。
「いや、三週間くらい前かな、全部使っちゃって。また必死に貯めてるところ」
「三週間前? あ、そういえば相沢ってその頃誕生日じゃなかった?」
「……よく覚えてたね」
「ほら三年前だっけ? 加奈ちゃんの家で相沢君の誕生会開いたじゃん。色々用意してて。ずっと気になってたんだけど、結局あれ何で相沢君の誕生会、加奈ちゃん家でやったの?」
それはよく覚えている。
誕生会に誘われることはあっても、自分の誕生日を祝われることはなかったから、当時幼馴染だった加奈がウチでやろうと言い出したんだっけ。
その頃年齢的な成長もあって話す事も少なくなっていた加奈に誘われた時は意外だった。
勝手に決めてしまった事を怒られてはいたが、ホールケーキは彼女のお小遣いで買うと言い出したので、どこと無く暖かい目で彼女の両親は親切に許してくれたらしい。
まあ俺の親は勝手に行ってくれば?というスタンスだったのだが。
ささやかにも誕生日を祝ってもらった後、家に帰って感動のあまり少し泣いてしまったのを覚えている。
「今アイツ何してるんだろうな」
中学になって親の転勤が決まったらしく、もう連絡も取っていない。
今となっては苦い初恋の思い出みたいな物だ。
「え!? 知らないの?」
独り言を聞き取った篠原は驚いた顔をしていた。
え?
あの、えっと、その。
もしかして自分だけ連絡ないって感じですか????
あー。
ショックでゲボ吐きそう。
「いや多分貴方が考えてること、勘違いだから。ま、いいや。そのうち分かるでしょ」
「え、気になるんだけど??」
教えてくれないんですか??
「あ、ごめんズレた」
ボールを蹴った彼女はあらぬ方へ飛ばしてしまい、謝っている。
「オッケーオッケー」
ボールを追いかけて拾うと、足横と踵でボールを持ち上げ、弾き、頭上を超させるヒールリフトの後、ピタッとボールを止めて数回リフティングした。久しぶりにやったが、なかなか上手く出来た。
「あれ、相沢ってサッカー部だっけ」
「いや帰宅部。ほら昔はサッカー少年だったからさ」
「そういえば運動神経よかったよね。ドヤ顔はうざいけど」
ド、ドヤ顔してねぇし。
決してイキってる訳ではない。うん。有名人選手とかの真似で派手な足技使いたくなるのは、サッカーあるあるだから。これ実用性ほとんどないけど。
「ところで相沢」
「何?」
「放課後、大事に話があるから校舎裏に来てくれない?」
***
放課後。校舎裏。
もしかしてそういうアレだろうか。
いや違うんだろうけど。違うんだろうけど。
一瞬だけ勘違いさせるような言葉を出さないでほしい。
「お待たせ、待った?」
「まあ、うん」
「そこは待ってない、って否定するところでしょ」
「三十分待たされてるからなぁ。それで本題は?」
「それは本当にごめん。で、相沢今探索者やってるでしょ?」
「……そうだけど。何でそう思ったの?」
「だって子供の頃から迷宮の話はめっちゃ詳しかったし、バイトしてたのもそうなんじゃないかなって。割と憧れてた節あったじゃん」
当たりだから何も言えない。
「それで?」
「私ほら、二日前誕生日だったじゃん?」
……あ。
覚えてなかった。
「で、やっぱり中々話せる友達とかいなくてさ。一人で行くのも怖いし、相沢に手伝って欲しいんだよね」
昔は遊び感覚で迷宮に潜り始める学生たちへの風当たりは死ぬほど強かった。
現在こそ、多くのインフルエンサーなどの活動によって薄まりつつあるが、それでも尚メディア等からの報道もあって、あまり良い目で見られることはない。
結果的に、真面目な生徒は迷宮に憧れる同級生たちを下に見てるし、あくまで一回どんな物か経験したいとか、度胸試めしの代わりだとか、そういうのもある。
故に、信頼のおける相手以外なら迷宮関連の話題は避けられがちだ。
だからこそ、俺は打って付けだったのかも知れない。
「まあそれくらいなら全然良いよ」
「本当? ありがとう」
「じゃあ明日は週末だし、明日の十時頃からで良いか?」
「了解。あ、ていうか連絡出来ないからラ○ンかイ○スタかツ○ッターかディ○コでいいよ」
「あ、そう言えば持ってなかったっけ。てか、選択肢多いな。じゃあラインで」
ラ○ンを交換した俺たちは、再び向き合った。
「じゃ、明日ね」
「おう」




