15
「私の命は尽き・・・ます・・・死にたい・・・死なせて・・・くださ・・・私の命を使って・・・」
誰も何も言わない。ヴァルは両手を握りしめ、天を見上げる。イザドラはジェサイアの中に生きたいという意思がどこかにないか探るように見つめている。テオはそのイザドラを心配そうに見やる。
私が決断を下す時だ。
「エヴァ、可能なのか。ジェサイアを、ジェサイアの命を使えば、龍の卵を再生できるのか?」
エヴァが無表情になった。
「骨で結界を作り、その中にジェサイアを閉じ込めることになるよ?いいの・・」
そこでエヴァは言葉を止めた。善悪では測れない。国を救うための犠牲を私がジェサイアに強いるのだ。その結果は私が請け負う。エヴァにも私の決意は伝わったのだろう。
「ジェサイアの魂を、命を長き眠りにつかそう。結界の中で。」
エヴァが考え込みながら方法を言葉にする。
「まずは、骨をここにもっておいで。」
指示を聞いて、私、ヴァル、そしてテオが動き始めた。
テオに向かってイザドラが静かに声をかけた。
「テオ、アイゼアとカルメーラの遺体もこちらに。」
「ああ。」
テオが短く返事をする。
骨に向かって走りながら、ヴァルが私に囁いた。
「殿下、よくぞご決断なさいました。」
と。
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まずは、ジェサイアを魔法陣の中心から動かし、その場所にエヴァが陣取った。エヴァは自慢していた通り、なんなく魔法陣を維持している。
何度も往復して、ほとんどの骨を魔法陣近くに山積みにした。アイゼアとカルメーラの遺体は、ジェサイアのそばに横たえた。肩をやられているので、腕を動かすことができないだろうと、両者の頭蓋骨はジェサイアの腕に寄りかからんばかりになっている。しかし、ジェサイアの目にはもう何も映っていないらしく、遺体にも反応は示さなかった。
生き残った帝国兵士はすべて、外の木の中だ。
「私がいなくなったら、出てこれるさ。」
と、エヴァが言っていたが、それまで生き残っているのだろうか。
エヴァがこれから起きることを説明する。
「いいかい、骨で結界を作るのはそんなに難しいことじゃない。だが、ジェサイアを魂だけの存在にして眠りにつかせるのには、かなりの魔力が必要になる。」
「その時に、必ず、アイゼアとカルメーラの気配を取り込んで。」
エヴァが、おいおい、という顔をしたが、イザドラが続ける。
「ジェサイアの魂が安寧でなければ、貴方のダーリンは戻ってこない。」
そう言われて。エヴァが納得する。
「ややこしいことになるね。私の魔力を最大限使うことになるかもね。そうなったら、私はおそらく眠りについちまう。」
「大丈夫なのか?」
ヴァルが問う。
「まあ、寝ている間に魔法陣に吸い取られるぐらいの魔力は残ってるだろうさ。いくよ!」
エヴァの両手が上る。その両手が内側に向き、誘うように動くと、龍の骨が浮き上がり、ジェサイアたちを取り囲む。ゆっくり回転する骨の間から、ジェサイアの体がかい見えていたかと思うと、黒い煙が立ち上った。ジェサイアの体が消えていく。いやジェサイアだけではなく、アイゼアとカルメーラの遺体も崩れていった。まるで三人の体から出てくる煙が一つになっているようだ。黒い煙の中から、ドクッ、ドクッっと、心音がなり始める。煙が中心部に集ったかと思うと、円形の塊となった。黒い色は変わらないが、光を放ち始める。まるで黒曜石のようだ。石のように硬く、黒光しているのにその核は、震えている。
ドクッ、ドクッ。
骨が隙間なく卵型を形成し、核は見えなくなった。
「ありがとうございます。」
そう聞こえたのは私の希望による幻聴だろうか。
全てが動きを止めた時には、5メートルはあろうかという巨大な卵が立っていた。煤けたような灰色の卵。
ドッ。
振り向くと、全ての力を使い尽くしたかのようなエヴァが倒れていた。
イザドラが駆け寄り、エヴァの脈をとる。
「気を失ってるか、寝てるだけ。魔法陣が消えてないところをみると、ちゃんと維持してくれてるんだわ。私がエヴァの面倒を見るから、あなた達は行って!」
「「よし!」」
ヴァルと私が意気込んで返事をしたところへテオが、
「あの、この卵どうやってここから出すんですか?」
と、聞いてきた。
あ。




