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「一斉にひっぱれ!体重を掛けろ!」
ヴァルの指示で、兵士たちが腰に巻き付けられた蔦を引きずるように山を降りる。五人の兵士たちがそれぞれ引っ張る5本の蔦は、ゆっくりながらも確実に卵を引き上げていた。
火口を覗き込みながら、私はヴァルに声をかける。
「あと3メートルもすれば、卵の先端が見えてくるはずだ!ひっぱれ!」
ヴァルが再び声を上げる。
「いっせいの!」
長く木に閉じ込められていた兵士たちは、酒は抜けたようだが、足元は疲労でふらついている。構うものか。動けなくば、捨て置くのみ。
人手が必要になり、兵士たちを開放して使用している。エヴァの力が落ちているのだろう、不自然に蔦の絡まる木から蔦を切り裂くと、簡単に兵士たちが転がり出てきた。
卵は重さは大したことはないが、とにかく大きくて扱い辛い。私が魔術で作り上げた蔦の網に卵をかぶせ、蔦の綱を火口から下ろし、網とつなぐ。ここまでの作業にまる1日かかった。一刻も早く黒龍の元へと気は焦るが、遅々として作業は進まない。仕方なく帝国兵士たちを掘り出した。
テオは、卵を積み込むための馬車を手に入れると言って山を降りた。御者が本職のテオ、馬車に心当たりがあるらしいので、そこは任せた。
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漸く全容を見せた卵。帝国の兵士が言葉を失っている。
「転がり下ろすしかないでしょう。」
ヴァルの言葉に、兵士たちの肩が落ちる。彼らは全員後ろ向きになり、卵を両手で支えながら後退り始めた。
これであと1日はかかるな。頭の中を黒い影が過ぎる。後には引けない。
私はエヴァの様子を見るため、洞窟へ戻った。
イザドラが、眠るエヴァの唇を湿ったハンカチで拭っている。
「どうだ?」
イザドラが首を振る。
「反応なし。魔法陣がまだ機能してるのが奇跡的だと思う。これで、ピッタリの瞬間に魔法陣を消せるの?」
不安要素は多い。全てはエヴァの肩にかかっている。
「最悪の場合・・・二日後の昼12時に、エヴァを魔法陣の真ん中から蹴り出してくれ。もう5日目だ。黒龍はおそらく砦に迫っているだろう。それ以上は待てない。太陽があの空にかかったら・・・」
私は上空の穴を指さす。さっき卵が通った道だ。
「・・・エヴァを移動させて、魔法陣を消すんだ。」
イザドラが頷いた。
「じゃあ、最後に洞窟を出る時に、岩肌の裂け目を塞いで。」
驚いた。
「出られなくなるぞ?」
「帝国の兵士や野盗がこの洞窟とエヴァを襲う、そういった不特定要素を潰すためよ。エヴァが起きたら私達は出られる。」
イザドラがそういった攻撃に用心深いのは理解できる。だが、
「エヴァと心中するつもりか?」
と尋ねると、
「まさか。ダメならなんとしてもテオが戻ってきてくれる。私のことは心配いらない。なんとしてもこの計画を成功させて、殿下。」
そう言いながら、私を一心に見つめた。
私は黙って頷く。
洞窟を出ると、渾身の魔力を振るった。岩の上に水を滝のように降らせ、岩肌を緩ませる。そのまま波動を打って、地滑りを起こさせる。
岩は見事に土砂で覆われ、洞窟への入り口が消え去った。
皆の覚悟がここにある。誰もが命を懸しているのだ。




