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「ええ、また減ったの?情報収集のために残しといてって言ったのに。」
イザドラが文句を言う。イザドラは怖いもの知らずの口の聞き様は冷や汗ものだが、誰に対しても変わらない悪口は、結構エヴァに気に入られているような気がするが。
「洞窟の外にいた奴らは酔っ払いの上騒ぐのをやめられないようだったんでね。」
「殺しちゃったの?」
「いや、蔓草で縛り上げて、木の中に取り込んどいた。」
あ、エヴァのお得意のやつか。
「残りの奴らは洞窟の中にいるね。魔術師の気配もそこからする。龍の住処だったんだろうさ。けど、守衛の立ってた入り口は岩の割れ目みたいなほっそいところだった。あれじゃあ、あんた達を連れてこないと場所がわからんだろうと思って一回戻ったんだが?私だけで殺るかい?」
私が慌てた。
「待ってください。魔術師を殺すのが一番良い手段なのか、判断がつきません。我々も一緒に行かせてください。」
リンデン王国の運命がかかっている。とはいえ、そんなことを盾にエヴァにお願いしても鼻で笑われるだけだろう。
エヴァが首をすくめる。
「まあ、徒歩で1時間ってとこだ、ついてくるがいい。」
詰所の裏から続く山道を皆で登り始めた。
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確かにこれでは到底みつけることはできなかったろう。昼近くなって、十分陽が回ってきたため、薄暗い森の中でも、山肌の岩の裂け目は見てとれた。だが、ここに入って行こうと思う人間はいないだろう。
「これって、中に本当に人がいるの?」
イザドラが首を傾げる。
「魔力の気配がする。少なくとも魔術師はいるはずだよ。」
私が答えると、テオが、
「じゃあ、俺が見てきます。」
と、手を上げた。
何か言いたそうに口を開けたエヴァに、
「私やエヴァでは、魔術師に魔力を気取られるでしょう。テオに任せましょう。」
と、お願いした。その言葉が終わらないうちに、テオの姿が消え、テオの服が地面に落ちる。服の間から、ハツカネズミが走り出て、岩の隙間に走り込んだ。
「・・・魔力、じゃないね。」
怪訝な表情のエヴァに、イザドラが、答えた。
「シェイプ・シフター。生き物だったら大抵形を変えられる。ちょっとなんか抜けてることも多いけど。」
そのまま待つこと10分。
ハツカネズミが飛び出してきたかと思うと、地面に四つん這いになったテオに戻る。
いつの間にかテオの服を手にしていたイザドラが、裸のテオにシャツを投げかけた。
ヴァルと私はそれとなく視線を外していたが、エヴァは興味津々でテオの姿を眺めている。
「どうやったら変化できるのか、調べてみたいもんだね。」
ズボンを履きながら、慄いたテオが一歩後ろに下がる。
「この細い割れ目を2メートルもいけば結構な広さの場所に出ます。そこに兵士が五人いますが、皆寝てたり酔っ払ったり、だらけてますね。簡単に取り押さえることはできますよ。」
衣服を着終えたテオが、大きく息をついた。
「で、その先いくつかの分かれ道になっていたんで、明るい方に行ったんですが・・・そこに、残りの兵士たちと・・・魔術師らしき人はいました・・・でも、あれ、自分の意思で、やってるんですかね・・・」
ヴァルが、
「どう言う意味だ?」
と、聞く。
「なんか、魔術師らしき男はいるんですけど、地面に横たわってて、息も絶え絶えって感じでしたね。それを兵士たちが遠巻きにして監視してるんじゃないかと思うんですけど。そんな感じでしたよ。監視してるやつの中に、一人偉そうなのがいて、口汚く罵ってましたよ。『もっと早くリンデンに飛ばせられんのか!何を怠けとる!』とか言ってましたね。」
「じゃあ、抵抗できる様子ではないのだな?」
エヴァが問うと、
「ありゃあ、無理でしょ。」
と、テオが短く答える。
黒龍を倒すほどの魔術師だ、慎重を期して行動せねば、と思っていたが、どういうことだろう。
「ふーん、じゃ、行こうか。」
エヴァがスイっと岩に吸い込まれた。




