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ヴァルが体を横にして、岩の割れ目に飛び込んだので、私もそれに続いた。だが、私がようやく兵士のいるところまで到達した時には全てが終わっていた。ある兵士は、ヴァルに殴られて気絶しており、その横にいた兵士は、エヴァに片手で口を抑えられたたまま、蔦でぐるぐる巻きにされている。
何が起きているのかわからないまま、兵士たちは口に布を詰め込まれ、エヴァの操る蔦で身動きできなくなるまで縛られている。
簡単に片がついたのを見てとったテオが、
「こっちです。」
と指さす方向に、皆で足を進めた。一個大隊いたとしても、この二人がいれば、全く問題はなかったろう。迎え撃つのが酔っ払いだらけの十人じゃあ、全く歯が立たない。
何が出ようと、気にもならなくなった。隠れる気も失せて、残る五人の兵士たちの前に堂々と姿を表してやった。
「なんだ!お前達!」
でっぷり太った男が叫ぶ。その開いた口に、エヴァの蔦が絡んで、閉まらなくなる。
「あが、あが、あが。」
言葉にならない男はほっておいて、ヴァルが残りの男達を、二人続け様に殴り倒す。私も立ちすくむ男に向かい、「ようやくいいところが見せられる」と思いながら、鼻を目掛けて拳を振るった。
あっけなく倒れた男をテオが後ろ手に縛り上げる。
「ちょっとそれ、どう言う意味よ。」
というイザドラの声がしたので、振り向くと、唯一残った男が、イザドラの前で平伏していた。その両手は、頭の上で合わされており、どうやら完全服従の意を示しているようだ。
その男は殴られることなく、縛り上げられた。
「さてと。」
エヴァが、男を空中でぶらぶら振り回しながら、テオに話しかけた。
「こいつがこの場所の責任者ってことでいいのかい?」
テオが頷いて、
「文句言ってた奴ですね。」
と、答えた。
「ふん。」
と言いながら、エヴァが男を遥か高くに放射線を描くように振り回した。男の顔は引き攣っているが、口を塞がれていて、叫び声が出ない。
男を見るために顔を上げた私たちの目に空が映った。明るいはずだ、この洞窟の上部は、火口のように開いていた。
黒龍の巣だ。確信が持てた。あの入口を使って龍達は出入りしていたのだろう。
上げていた視線を下ろすと、地面に横たわる男が見えた。
ぼろぼろのローブに包まれた痩せこけた姿。見えている顔が、骸骨のようだ。濁った目はおちくぼんでおり、唇はもう何日も水分を受け入れていないかの如くひび割れている。
横たわる体の周りに、薄く光っているのは・・・魔法陣だ。私たちは、魔法陣を避けるように男を囲んで見下ろした。
「こ、殺して、くれ・・・」
カサついた声が、男の口から漏れた。
私たちが声を掛ける前に、エヴァが呟いた。
「やっぱりアンタかい。」




