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「殿下、この際だから、『最後の一夜を共に』とか言ってみたらいかがです?」案外あれで、ヴァル姉様、絆されてくれるかも。」
フリスから旅支度である刀剣を渡されつつ、余計なことを言われた。
絆されてくれればなぁ。
「私が目指すのは、ヴァルが並び立つに相応しい男だと認めてくれることさ。肩書きではない、ヴァルが仕えるに相応しい男になることだ。あれでなかなか厳しいからな。まだ、足手まといだと思われていることは明らかだったぞ。」
フリスがにっこりした。
「いえいえ殿下、エヴァとのやりとり、なかなかのものでしたよ。」
「ありがとう。フリス、其方も早く砦を離れろ。」
フリスの唇が歪む。その目が、ヴァルを宜しくと語っている。
「リオン殿下、戻ってきてくださると信じておりますわ。殿下に会えない時は、ヴァル姉様にも会えない時ですもの。ですが、ストラウスの信条は、『何時でも、何通りものバックアッププランを用意せよ』ですからね。ちゃんと逃げます。私もストラウスです。何をすべきかは理解しております。」
二人で急ぎ足で中庭に出る。そこには、主だったる兵士たちが集合していた。
ヴァルが薫陶を述べている。
「・・・この砦の勝利が、リンデン国の勝利、この砦の敗北が、リンデンの敗北。必ずや龍を操る魔術師を倒して戻ってくる。それまで、持ち堪えてくれ。帝国と黒龍に目にモノ見せてくれようぞ!」
「「オウ!!」」
セスが司令を飛ばす。
「解散、配置につけ!」
中庭から一斉に兵士たちが走り去る。その多くが城壁に向かっている。
残っているのは、車椅子のベネディクトとセス、避難の支度を済ませたクリストフとテオ、そして動きにくいドレスから、乗馬服に着替えたイザドラだ。
エヴァが地面から浮き上がるように出てきた。
「じゃあ、そろそろ行くかい。」
エヴァが出てきた同じ場所から、3頭の馬が出てくる。
「どっかで見たような・・・ああっ!」
テオが驚きの声をあげる。
「やだ、まだ生きてたの?」
セスが自分の馬に気がついた。蔵をつけた馬達は、しれっとしている。
「神馬である黒いユニコーンの情を受けた者達だ。通常の馬の5倍の速さで走れるぞ。」
エヴァが説明する。
「・・・情ねぇ。」
セスが馬の鼻面を撫でた。
「てっきり、エヴァ殿と一緒に、地面を潜って移動するのかと思っておりました。」
私が問いかけると、エヴァが、
「ただの人間を、そんなにいっぺんには運べないよ。とりあえず馬に乗れないイザドラとだけ一緒に移動する。あんた達は神馬で来な。1日もあれば着くだろう?山の麓の詰所で待ってるよ。じゃあね。」
そう言って、イザドラとともに地面に吸い込まれた。
まあ、今のイザドラに、振動はよくないだろうから仕方がないか。
我々三人は馬に飛び乗る。
ヴァルが叫んだ。
「あとは頼むぞ!出撃だ!門を開けよ!」
振り向きもせず走り出す。
「「ご武運を」」
城壁の兵達から声が飛んできた。私たちは彼らの希望となったのだった。




