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畳みかけることにした。
「しょぼい魔力しかなくても、あの黒龍にまとわりつく魔力を感じることはできます。」
しょぼいに力を入れてやった。
「貴方も感じたのではないですか?あれは龍の魔物としての魔力だけではないでしょう。人の気配がありませんか?」
城壁から見た黒い霧を思い出しながら、エヴァに問いかけた。
エヴァが退屈そうに返事をする。
「ああ、あるね。だからってあれがダーリンに関係あるとは限らんさ。」
エヴァが龍に関心がないのは明らかだ。
「黒龍を操るほどの魔力の持ち主、アプレイウス師がご存知ないとは思えませんが。」
私の言葉が終わるか終わらないか、というタイミングで、
「どうでもいいんだけど。」
と、はっきり言われてしまった。
「いえ、アプレイウス師が、その魔術師が邪道に走って黒龍を操っていることを気に病んでいらっしゃるとしたら、そこを正さないとイザドラとて、治療の仕様がないと思いますが。」
イザドラがブンブン首を縦に振った。
ありがたいことに円卓の誰も言葉を発しようとしない。私が西の魔女、エヴァンジェリンと交渉の席についていることを察しているのだろう。
「ですから、我々と共に、皇帝軍の後続隊で龍を操る・・・」
エヴァに遮られた。
「いないよ、あそこには。」
全員が色めきたった。最後の望みが!いや、まだだ。
「どこにいるのかエヴァ殿にはお分かりですか?」
焦らない、慌てない。だが、エヴァは私の質問を鼻でわらう。
「アンタがやりたいことはわかってる。私に操ってる魔術師を探させて、黒龍の動きを止めたいんだろう?全然興味ないね。」
私はエヴァに微笑みを投げかける。
「いえ、貴方にご協力いただくためだけであれば、脅かせばいい。『こちらの言うことを聞かないのであれば、イザドラは協力しないぞ』とね。むりやりイザドラをさらっても、アプレイウス師の治療などしないと。」
エヴァに睨まれたイザドラが、どっちつかず、どうしようの顔をしている。
「ですが、私も末端ながらアプレイウス師の弟子の席を汚す者であり、師には、吃音を直し、暴走するやもしれぬ魔力をコントロールするべく魔術を教えていただいたという大恩があります。」
いや、あれを直してくれたのは、ヴァルはイザドラ、皆の協力があってのことなのはわかっているが。おまけに私には暴走するような魔力はない。なんせしょぼいのだ。
「師に健康を取り戻していただくのも、私たちの切なる願いなのです。我々は勇者軍という仲間なのですから。」
見回すと、皆がしっかり頷いてくれた。
「ですからアプレイウス師が回復するよう、ぜひとも協力させて下さい。そのために黒龍を操る魔術師を見つけ出して止めなければならないのです。」
「利害の一致というやつかい。ふん。話は分かった。」
エヴァの髪の毛がするすると、エヴァの頭に戻っていく。
「だがね、あんた達の思うようにはならないよ。たとえ操っている魔術師を殺したとしても、黒龍が止められるかどうか怪しいね。あれは・・・狂ってるよ。」
「どういうことですか?」
エヴァが何を知っているのか、私が代表して聞く。
「あの黒龍は2頭の番だったはず。もう一頭の気配がない。片方を支配するために、おそらくもう片方を殺してるね。で、生き残っているほうを狂気に追い込んでコントロールしてるんだろうさ。支配を解いて正気に戻ったとして、あたり一帯を破壊し、人間どもを殺し尽くすのが火を見るよりも明らかだ。それでもやるのかい?」
キャットラル帝国、リンデン王国、見境なく広がる壊滅の情景が目に浮かび、沈黙がその場を支配した。
「どのような結果になろうとも、このままただ龍の到着を待つよりは良いかと。なんらかの別の方法が考えられるやもしれません。」
ヴァルが発言する。
「帝国軍だけを踏み潰すかもしれないし?」
これはセスだ。
「まずは、黒龍の番がどのようになっているかの確認も必要ではないでしょうか。」
ベネディクトが慎重さを求める。
私が頷く。
「では、エヴァ殿、ヴァル、テオ、私で出発をする。」
エヴァが意を唱えた。
「イザドラ無しで行かないよ!ダーリンのところに行くまで目を離さないからね。」
とにかく行くことに同意してもらったのだ。こちらも譲歩しなくては。ヴァルと視線を交わす。
「エヴァ殿、ヴァル、テオ、イザドラ、そして私だ。目的地は、帝国軍ではなく、黒龍の居住していた山岳地ということでよいか?」
私が問うと、エヴァが頷いた。




