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「私、全然死ぬつもりないんだけど。」
そう言いながら、イザドラが、そっとお腹に手を当てた。うわ、テオ!やることやってたのか。
一番最初に立ち直ったのは、フリスだった。
「貴方ねぇ、ことごとく・・・順番を無視するわねぇ。先に結婚しておこうとか考えないわけ?」
イザドラはキョトンとしている。
「なんでよ。私もテオも平民なんだから、そんなのどうでもいいじゃない。式あげないなんて、当たり前のことよ。」
「へへっ。」
笑いを漏らしたのは、テオだ。
「いや、あれだけ難民と精神を病んだ元兵士達を救っておいて、今更でしょ。妊娠したから聖女じゃありませんなんて、通用しないわよ。」
セスが苦笑いしている。
「イザドラ、テオと共に落ちのびろ。」
ヴァルが命じる。
イザドラが首を横に振る。
「あのねぇ、死ぬつもりはないけど、あんた達を置き去りにして逃げるつもりもないわよ。それだけのものをお互い積み重ねて来たんじゃないの?私はそう思ってるわよ。」
そう言いながら、イザドラが、円卓に座る仲間を見渡した。その視線が、私で止まる。
「そうでしょ?」
私は黙って頷いた。
「そもそもなんで大人しく黒龍が飛んでくるのを待ってなきゃいけないわけ?誰か操る奴がいるんでしょ?そいつを倒しにいきゃあいいんじゃないの?」
皆が完全に言葉を失った。
しばらくしてネッドが
「その発想はなかったなぁ。」
と、呟いた。
「いるとしたら、後方の皇帝のいる付近かしらね。」
顎を掻きながら、セスが考えを述べた。
「確かに。暗殺隊を組んで、後方の皇帝を取り囲む部隊に忍び寄り、秘密裏に操っている奴を殺害するという手はあるか。」
ネッドが頷きながら策を練る。
「セスと弓部隊は黒龍が到達する可能性を考えて、砦に残る。となると、ヴァル姉さん・・・」
ヴァルが、
「私が行こう。テオは借りる。犬かなにかに化けて、潜入し、そいつの位置を確認してもらう。」
「私も行くわよ。」
イザドラが主張したが、ヴァルが撃ち落とした。
「余計な危険を犯すな。潜入は我々二人でいい。」
「ヴァル。私が行こう。」
私のあげた声に、皆の視線が集まった。
「殿下!」
ヴァルが意義を唱えた。
「黒龍を操る奴は、十中八九魔術師だろう。私以外の誰が、魔術を感じとるんだ?私が行くべきだろう。」
「しかし、殿下・・・」
ヴァルの瞳が揺れた。今回は正義は私と共にある。私の思いを受け止めてくれ。
「ヴァレンシア、君はずっと私の盾だった。ありがとう。礼を言わせてくれ。」
「殿下・・・」
「私は君に守られるに相応しい男になろうと精進してきたつもりだ。どれだけ成長したか、ここで君に証明させてくれないか。私は君とともに、君たちと共に進んでいきたいんだ。守られるだけの価値のある男であることを示してみせるよ。」
ヴァルに身長はちょっとだけ追い付かなかった。剣の腕だってヴァルの足元にも及ばない。でも、ヴァルとヴァルの目指すものをずっと後押ししてきたのだ。いつの日か私の気持ちがヴァルに届くことを懇願しながら。
「勇者と魔法使い、聖女とシェイプシフターに狩人か。なんか最初の旅を思い出すわね。」
イザドラがため息をついた。
「狩人は大賢者様と聖女とともに後陣をとるわよ。勇者と魔法使い、テオで行ってらっしゃいな。」
ヴァルが口元を引き締めた。だが、風はこちらを向いている。
ピション。
後ろで水音がする。
「そのしょぼい魔力で魔法使いを名乗るのはやめよ。」
その声の方に全員の視線が飛んだ。




