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勇者様と言うなかれ  作者: 大島周防
愛の狩人編
64/91

16

ミーガンを預けるついでに、ネッドと話をし、私の推理に確信が得られた。恐らく、


1、モーガンがどこかの男娼と(ねんご)ろの仲となり、居心地の悪いイエーツ家を出ることを考えた。


2、そのための資金として、自分の偽装誘拐を行い、その手配を、男娼のいる娼家に頼んだ。(もしくは、娼家の方から持ちかけた話かも。どっちだっていい。モーガンたら、ホントお馬鹿さんなんだから。)


3、ところがイエーツ家ではとっくにモーガンを見限っており、モーガンのために身代金を出すつもりなど全くなかった。


4、唯一ミュリエルだけが、モーガンの身を案じて、親が止めるのも聞かず、助けるために奔走した。(一途な子ね。)


5、カスティーヨに乗り込んだミュリエルを娼家の奴らが、とっ捕まえた。モーガンじゃ金にならないけれど、ミュリエルなら身代金が取れるかも、と考えてのことでしょうね。で、いらなくなったモーガンは消されたと。


問題なのは、親の言いつけをきかないミュリエルを、イエーツ伯爵は見限ってるということ。すでに新たな養子縁組を結ぶ手配をしてるし、ミュリエルを探しているそぶりもない。身代金の手配に奔走しているという話も聞かない。そんな動きをしていれば、妹ちゃんが聞き逃すはずがない。


ミュリエルが捕まってもうすぐ一週間、金にならないとなったら、どんな目にあうかわからない。それでなくともいらなくなったモーガンは早々に処分している。ミュリエルを早いとこ探さないと。



馬車をカスティーヨの通りにつける。御者台に座っていたテオが馬車に乗り込んできた。


「要領はわかってるわよね。」


そう言うと、テオが頷いて、消えた。足元に、今までテオが着ていた服が、パサッと落ちる。服の間から可愛い目をしたハツカネズミを拾うと、胸のポケットに忍び込ませる。


そのまま馬車を降りて、店に乗り込んだ。時間が勝負。テオがこの姿でいられる時間は長くない。時間切れになる前に、先に馬車に戻るように指示してある。


店内は、安い娼家によくある作りだ。入るった最初の部屋(展示場)に五人ばかり男の子が並んで座っている。どの子も成人前にしか見えない。表情が抜けた顔が並んでいる。こういう趣味じゃないんだけど。


部屋の隅には、目立たぬように取り仕切っている案内人が立っている。その痩ぎすの黒服の男に声をかけた。


「もう少しがっしりしたのが好みなんだけど。」


と、いうと、ああ、と言う顔をして、返事をする。


「2階に三人ばかりいます。一番手前はもう客がついてるんで、奥の二人に声かけてみてください。客がいない時にはドア空いてるんで、見てお好きな方を。うちは前払いです。時間になったら、こっちがノックしますんで。」


黒服に銀貨2枚握らせる。そのまま2階に向かった。


一番目の部屋の前で、靴紐を直すフリをしてかがみ込むと、ねずみがポケットから滑り降りた。あと15分ってとこだろう。


2番目のドアから顔を覗かせると、痩せてはいるけれど、しっかりした眼差しの青年が微笑んだ。


ま、いいでしょ。


私は後ろ手にドアを閉めた。



きっかり1時間で追い出されたので、馬車に戻ると、テオはすでに着替えを済ませて待っていた。


首を横に振る。


だめか。


「時間がなくて見落としてたってことは?」


「確かに全部見れたか自信はないですけど、あそこじゃないと思いますよ。裏方の男たちがのんびりしてる。人質がどっかにいるっていう雰囲気じゃないっすね。」


仕方ない。明日仕切り直してもう一件に行ってみよう。ジリジリするけれど、こんな狭いところで一晩に2箇所を訪れて、疑われるわけにもいかない。


「戻ろう。」


そう言うと、テオが頷いて、御者台に向かった。


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