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「・・・どこでミュリエルと会ったの?」
私が問うと、ローズはすんなり答える。
「夫を探して、カスティーヨをうろうろしてたのを何度か見かけた。」
「いつ頃の話?」
「一週間?もうちょっと前かな?いいとこのお嬢さんだろうに、根性あるな、と思ったから、覚えてるよ。」
「で?ミュリエルは、どうなったの?」
ローズが目を床に落とした。
「この先の話は・・・アンタたちが、この先私をどこまで助けてくれるかどうか次第。情報だけとられて、放り出されるのはごめんだわ。」
ここまで黙って聞いていたイザドラが吹き出した。
「なかなか頭のいいお嬢さんじゃん。リンデン語だって、流暢に話すし、帝国から逃げてきてから身についたものじゃないよね。食事のマナーだってなかなかのもんだったし。貴方も元は・・・」
『うるさい!詮索しないで!』
ローズがイザドラに向かって帝国語で叫ぶ。
イザドラは、冷静に切り返した。
「詮索してるわけじゃない。貴方の情報には価値があるはずだと言ってるの。生き残るために、周囲をちゃんと見てきたんでしょ。」
そう言うと、イザドラは、私に向かって、
「価値あるものにはそれだけの報酬を支払わないとね。」
と、言った。
まあね、とはいえ、私だってそんなに懐は豊かじゃないのよね。騎士としての収入しかないんだから。
「元締めがうろうろしてる街に放り出すようなことはしない。だけど、この家の屋根裏にずっと隠れていたいわけじゃないわよね。私たちもいずれ近いうちにこの家を引き払って、北の砦に引っ越しするのよ。となると、考えられる方法としては、一緒に北の街に移動して、そこで新しい生活を始めるというのがあるわね。」
ローズが眉を顰めた。
「ごめんだわ。あんな腐った場所、2度と戻らない。」
イザドラがまた口を開いた。
「難民キャンプにいたの?いつ頃?」
「3年前。」
「「あー。」」
皆で納得した。
「ひどい状態だったでしょうね。でも、かなり状況は改善されたのよ。テントは全て撤去されて、砦の中に仕事と住居が用意されてる。こちらの環境になれたら、街の神殿を通じて・・・」
ローズが遮る。
「あいつは?司祭。あいつが仕切ってるの?」
イザドラは、遮られたことに腹も立てずに説明を続けた。
「ハリソン?処刑されたわ。」
自分を指さす。
「聖女様を襲った罪でね。今の神殿は私が仕切ってる。難民の生活も私が神殿を通じて援助してる。」
ローズが目を白黒させてる。
「聖女?処刑?・・・貴方もあいつに襲われたの?」
テオと私もイザドラと一緒に頷いた。
「街も砦から派遣された女性騎士を中心とした自警団が目を光らせているから、治安はかなりいいのよ。王都にいる兵士たちの家族も、今後少しずつ街に設営する官舎に移ってくるし、それ目当ての商売も増えるでしょう。発展は期待できる。」
私が街をローズに売り込んだ。
「これだけ帝国語とリンデン語を流暢に話すことができるんだから、やれる仕事はかなりあるんじゃない?難民はどんどん流れ込んでくるし、ヴァルの帝国語はなかなか上達しないから、通訳の仕事とかね。読み書きは?両方の言語で出来るの?」
ローズが頷いた。
「ヴァルって?」
「・・・ええと、砦の指揮官。・・・女性。」
ちょっと間が空いたのは仕方ない。
ローズが姿勢を正すと、しっかり両手を握りしめて。頷いた。
「で、何が聞きたいの?」
どうやら用意ができたようだ。
「モーガン、つまりミュリエルの夫ね。そのモーガンの死体が発見されたの。で、モーガンを探していたミュリエルの行方不明ってわけ。ミュリエルがどこに行ったか手がかりはないかしら。」
ローズが首を横に振る。
「2日か3日、毎日来て旦那のこと探してたけど、一週間ぐらい前から姿を見てない。突然消えたし、諦めたのかと思った。どこに行ったかはまるで見当がつかない。」
まあ、そうだろう。ここからは、ネッドに頼まれてたことを聞くしかない。
「ミュリエルは、浮気して行方をくらました夫を探してるって風だった?それとも・・・」
ローズが必死に思い出そうと天井を見上げる。
「なんか、嫉妬した妻が追いかけてるっていうよりは、もっと必死だったような気がするのよね。『見つけないと、命に関わる』って、言ってたし。大袈裟だなと思ってたんだけど。」
そうか。やっぱり嫌な流れになりそうだわ。
「あと、貴族の坊ちゃんが入れ上げそうな男を置いてる店ってどのくらいある?特に、バックに怪しいのがついてる店。大きいとこから名前あげてくれる?」
ローズが素早く3件の名前と場所を上げる。
潜入捜査の場所が決まったので、イザドラに、明日の夜から、テオを借り受けることを宣言した。




