第三話
───5月30日午前0時頃、北部区域ニビヤシアックのフウリーガーデン一室にて。
ジェロシアの部屋で彼女の帰りを待つが、連絡すら帰ってこない。
今日どこかから依頼を受けているとは聞いていない。
まぁ恐らく飲んだくれているのだろう、と私は軽く思っていた。
そして部屋に響き渡るのは静かなノック音。
私はすぐに扉の覗き窓から外を見て、度肝を抜かされた。
「ジェ、ジェシー何があったの!?」
私が急いで扉を開けると、白のブラウス全面を真っ赤に染め上げたジェロシアが倒れこんできた。
何とか私はジェロシアを受け止めてあげて、ゆっくりと部屋の中に連れ込んで床に寝かせた。
彼女は左腕を押さえており、そこからは鮮血が今もなおドクドクと床に滴っていた。
「…軽い怪我よ、心配は要らないわ」
「ウソ、どう見ても動脈切ってるでしょそれ!?ほら早く止血!!」
私はとっさにポケットからハンカチを取り出し、彼女の腕にきつく縛りつけた。
こちらは必死に手当てをしているというのに、ジェロシアはニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
「可愛い弟子に手当てしてもらえるなんて嬉しいわ」
「変なこと言ってないで、もう!ていうか誰にやられたのそれ!?」
「さぁ?ちょっと近くにいたチンピラ共を殺した時に切られたから、顔は分からないわ」
「それ、依頼で?」
「いいえ、何となく」
私はジェロシアの行動に疑問を生じた。
彼女は人を殺すのが好きだ。それは誰が見ても明らかである。
しかし彼女は殺人衝動を依頼という形で上手く消化しているらしく、依頼を受けてない状態ではまず殺人を犯さない。
なのに今日は自身が怪我をするまで殺しに没頭したということなのだろう。
何かがおかしい、だがどうやって聞くべきか。
「…そのチンピラ共に、何か嫌なことでも言われたの?」
「何か言われたのかしらねぇ…覚えてない。ただどうしても、どうしても殺したくてたまらなかったのよ」
「珍しいじゃん、ジェシーが依頼無しに殺すなんて。理由、聞かせてよ」
「…血が減ったせいか眠たいわ。まぁこのぐらいなら失血死しないでしょうし、もう寝ましょう、おやすみ」
ジェロシアはそう言ってゆっくりと立ち上がり、おもむろに衣服を脱ぎ捨ててそのままベッドの上に寝転んでしまった。
「あーもう、また散らかして!」
私は渋々血まみれの服を回収し、近くのかごに放り込んでおいた。
ジェロシアは既にベッドの上で死んだように眠りについていた。
もしかしたらこのまま本当に死んでしまうのではないか、なんて不安がよぎる。
百戦錬磨の彼女が理由無しに殺しを働き、そして大怪我を負う様な事態に遭遇したのは初めてだった。
私が思う以上に、彼女に何か良からぬ影が降りかかっているのではないか。
そう思うと私はいてもたってもいられず、眠りにつく彼女に近づいた。
「ジェシー…目を閉じたままで良いから答えて。何か辛いこと、あった?」
答えが返ってくる訳がない、でもそれでも私は問いかけずにはいられない。
私はゆっくりと彼女の横に寝転び、彼女の寝顔をそっと眺めた。
「…良かった」
ふとジェロシアが寝言を呟く。
彼女が寝言を言う時は大抵悪夢にうなされている時だ。
だが彼女の寝顔は安らかで、とても悪夢を見ているようには思えない。
その時、ジェロシアは薄く目を開き、私のほうをゆっくりと向いた。
「…あら、久しぶりね…元気で何よりよ…」
寝ぼけているのだろうか、彼女は私に静かに語りかける。
そして次に彼女は私に唇が触れるぐらいまで顔を近づけてきたのだ。
唐突な行動に私はつい顔を赤らめる。
彼女の吐息からはアルコールと煙の薫りが漂い、決して良い匂いではないが妖しい魅力を放つ。
「…そうよね、あんたが元気で、何より…」
ジェロシアはするりと手を伸ばしたかと思えば、私の腰に手を回す。
そしてぎゅっと私を抱きしめ始めた。
彼女のたわわな胸が、私の薄い胸板に密着し、お互いの暖かさを肌で感じあう。
私の鼓動はもはや限界まで高まり、今にも破裂しそうだ。
いつからだろうか、彼女の存在を意識するたび性的興奮を覚えるようになったのは。
でも、恐らく彼女は私ではなく、別の誰かを夢に見ている。
その想像は次の一言で明らかとなった。
「…ああ…プレッツェ…」
プレッツェ…聞いたことない名前だ。
私はジェロシアの過去については殆ど知らない。ブランドンの件があってからも結局彼女の昔話を聞きそびれてしまっている。
これまで彼女が出会ってきたであろう人物、その名を何故今呟くのか。
それからジェロシアは何も言葉を発することなく、ただ私の体を優しく抱擁し続けた。
次々と湧き出る疑問も、夢見心地なオーガズムによって全て流されて行く。
もう何だって良い、この時間がただ幸福だ。
───5月31日午前9時頃、南部区域ワトルにて。
今日の販売ルートはまず此処ワトルでビジネスマンをターゲットに商売することを狙いにしてみた。
六月に入るということで何となくルートを変えてみたが、これが中々好調で次々と自慢の売り物が捌かれていく。
また、嬉しい誤算と言えるが数十分で朝の分が全てはけてしまい、一旦自宅に戻る必要が生じてしまった。
仕方なくアタシは閉店作業に移ろうとしたが、その時携帯電話が震動し始めた。
「はいもしもし…あらアリーチェちゃん、おはよう!」
「お、おはようございますステラさん…それよりも、ジェシーが!」
「ジェシーちゃんがどうかした?」
「昨日の朝に出たっきり帰ってこなくて!この前すっごい大怪我して帰ってきたのに、それで…!」
「あーはいはいアリーチェちゃん落ち着いて落ち着いて!ほら深呼吸深呼吸!」
アリーチェを落ち着かせつつ、状況を少しずつ整理していく。
まず、ジェロシアが依頼無しにチンピラを殺し、そして大怪我を負った。
そしてそのまま自室に帰ってきて、朝になったら忽然と姿を消して今に至ると。
彼女が負傷したことなどは少し驚くが、彼女がフラっとどこかに行ってしまうことは割と良くあることだ。
それなのにアリーチェがこんなに慌てているのは、やはり不可解な出来事が続いたからだろう。
「ステラさん、このままジェシーがどっかに行っちゃうとかってこと…」
「大丈夫よ、あの子のことだからすぐに帰ってくるでしょ」
「でも…そうだ、ステラさん、依頼があります!」
「…やめときな、あの子が潜ったらまず見つけ出せないよ」
恐らくアリーチェは私にジェロシアの捜索依頼をだすつもりだろう。
だが、ジェロシアはこの街屈指の殺し屋だ。過剰に目立つことも出来れば、影の如く姿を消すことも出来る。
特に彼女が意識して潜伏を図っているのなら、アタシ程度の情報網じゃ捕らえることは不可能に近い。
「…分かりました…じゃ、じゃあもしジェシーを見かけたら連絡ください!」
「分かってる。それじゃあ、アリーチェちゃんも変な気を起こして何か厄介事に巻き込まれるんじゃないよ」
「はい、それでは!」
あの子はまだまだ未熟だから、無茶しなければ良いのだが。
一応、網を張ってみようと改めて携帯電話を手に持つが、そのとき一人の男性が店にやってきた。
「おはようございます、ステラさん」
「あらおはよう、フロッドちゃん。ごめんね、もう品切れなんだよ」
「それは残念ですね」
フロッドはそう言って軽く笑ってみせる。この笑い方は、何かよからぬことを知っているしぐさだ。
「…聞いてたんだろ、ジェシーちゃんのこと」
「ええ。そして僕は彼女が殺したチンピラについても一応知っている」
「へぇ、それは興味深いわねぇ」
「…ま、ステラさんにはいつもお世話になっているので情報を流しますよ。実は昨日の夕方清龍党から依頼がありましてね、子組織のギャングの一つが壊滅したらしくて」
「それで、その犯人を捜して欲しいと」
「現場からすぐに犯人はジェロシアだと分かりました。清龍党も依頼無しで子組織を潰されて怒り心頭らしくて、ジェロシアの抹殺依頼が来ましてね」
清龍党は子組織を最も多く抱えるファミリーだ。それゆえ子組織を大事にしており、今回のような事件をみすみす見逃せないということだろう。
「で、あんたはその抹殺依頼に乗るのかい?」
「まさか。まだまだ僕はのびのび生きたいんで、あんな悪魔と一戦交えるなんてもっぱら御免ですよ」
「ならなおさらいいの、そんな情報流して」
フロッドが積極的に情報提供を行うことはあまりない。
元々彼は情報を買う側の人間。そんな彼がアタシに接触して情報を流すのには相当深い理由があるのだろう。
「…あまり時間がなさそうでしてね。此処の所不可解な動きが多くて」
「話が見えないね、それだけじゃ」
「まず、アリーチェがゼネリ家から始めてフリーの依頼を受けたそうです。その依頼内容が、ナンバー3の捜索依頼」
「ゼネリ家がアリーチェに…しかもナンバー3だって…?」
「しかもそれと平行してあの晃司が、ジャンヌ…いや、レイヴンと接触した」
レイヴン、その名を聞きアタシは言葉を失う。
あの女性はこの街で二つの名を使う。
男遊びをする時はジャンヌ、そしてもう一つの顔を見せ付けるときはレイヴン。
この街に住む者であの女性を知らないものは多い。が、アタシ等のような人間は嫌と言うほどその名を耳にするのだ。
「…その一言で事態は相当ヤバイってことが分かったよ」
「でも幸か不幸か、レイヴンはそこまで深くは絡んでないらしい」
「いつもそうだよアレは。そうやっていつも話をややこしくしてくれる」
「ただ晃司のほうもまたナンバー3を調べているらしくてですね…」
「ジェロシア、ナンバー3、レイヴン、晃司、アリーチェ、そして清龍党にゼネリ家…ああ、これだけ弾があっちゃダメだよ、誰かが撃たれる」
「…まぁ僕としてはその登場人物たちはどうでもいいんです。でもこれを見て気が変わりました」
フロッドはそう言うと、懐から一冊の血塗られた雑誌を取り出して私に見せた。
その雑誌はどうやら日本語で書かれているようで、内容はさっぱり分からない。
だが、フロッドが見せたページに載せられた写真の人物、金髪ロングの凛々しい女性だけははっきりと分かる。
「…あの子、元気にやってたんだね、ひとまずそこは一安心だ」
「ええ、ナンバー3…プレッツェはどうやら郊外のパン屋で働いている。そしてこの晃司が執筆した記事の載った雑誌は、ジェロシアがギャングを殺した現場に打ち捨てられていた」
「つまり、ジェシーちゃんがプレッツェの存在に気づいたと…」
「僕が思い描いた最悪の事態は、今回の件に関連する人物全員が一同に会することです。そうなれば其処は地獄と化す」
ジェロシアとプレッツェ。この二人はかつてタッグを組んでいた。
二人の力はまさに規格外で、この街で“時代”を作ったほどだ。
それだけでない、あの二人は非常に親密な仲で、二人で一人といった関係に近かった。
しかしそんな中でプレッツェが突如失踪する。
当時はジェロシアも落ち込んでいたが、あの子はサバサバしている子だし、すぐにいつも通りに戻った。
だが、今再びプレッツェの存在を知れば、ジェロシアも何か動きを見せるに違いない。
実際ジェロシアは現在潜伏中だ。彼女も既に行動に移したのだろう。
「あんたはそれをどうしても避けたいと?」
「…僕はできればそのパン屋を騒動に巻き込みたくないんですよ」
「…その理由は聞かないでおいてやるよ、それでアタシは何をすればいい?」
「プレッツェに連絡を。今の彼女がどのぐらい力が残っているか分かりませんが、ファミリーの鉄砲玉程度なら造作もなく倒せるはずです」
「なるほど、やっぱ分かってたんだね、アタシがプレッツェの居場所を掴んでたこと」
アタシはこれでも一応裏世界から足を洗ったことになっている。
だからちょくちょく郊外に顔を出すこともあった。
そんな中で、郊外の更に外れにあるパン屋にかつての殺し屋、プレッツェが潜んでいることも聞いていた。
でも、彼女もまたどす黒い過去を抱く者。アタシは彼女に接触することもせず、またそのことを今日まで誰にも流さなかった。
「ステラさんは裏も表も深く知る数少ない人ですからね。でも正直ステラさんのアテが外れたらどうしようかと」
「とにかくプレッツェのほうは任しときな…晃司とアリーチェはどうするんだい?」
「そちらにはレイヴンをけしかけます。恐らくそれで二人は動けなくなる」
「大きく出たね。アレに接触するなら気をつけなよ」
「ええ。後はジェロシアとファミリーですが…そちらはもうどうすることも出来ません。プレッツェの力を信じましょう」
───同日、午前11時頃、北西区域メープルにて。
私はメープルにある宿、ノースハウスに来ていた。
ジェロシアの動向を調べようと彼女がよく行く免税店に寄った際、彼女が毎週買っていたあの晃司の雑誌を見つけてふと手にしてみた。
すると何とそこには、ブレンダから依頼を受けていたあの女性の写真が載っているではないか。
つまり、晃司はあの女性の現住所を知っている…そう思った私はジェロシアのことを一旦置き、まずは依頼を済ませようとしていた。
「ジェシーなら…うん、絶対大丈夫!」
ステラさんにも依頼を出している、これ以上は私が動いても無駄だろう。
なら私は出来ることからやるべきだ。あの男を頼らなければならないのは不服だが。
フロントマンから晃司の部屋番号を聞き出し、急いで彼のいる部屋に向かう。
「開けなさい、日本人!アリーチェが情報を買ってやるわよ!」
私がゴンゴン扉を叩くと、しばらくして晃司が扉を開けた。
「め、珍しいですね…アリーチェさんが来るなんて」
「あんたと無駄話してる時間はない!情報を売りなさい、10ドル出してやるから!」
「わ、分かりましたって。とりあえず中に入ってください」
私は渋々晃司の部屋に入る。男臭く汚らしい部屋だ。
「それで、何が知りたいんですか?」
「これ、この女性の居場所!」
私は雑誌の一ページに載っている写真を指差してそう言った。
「あ、それ…ジェロシアさんから貰ったんですか?」
「そんなことどーでもいいでしょ!?これをどこで撮ったものなのか教えなさい!」
「分かりましたよ…それは確かキャスタニア郊外の端にあるパン屋、“Dear Friends”で撮った物です」
「はいどうも!ほら受け取りなさいこの銭ゲバ野郎!」
私はポケットから適当にドル札を出して床にばら撒き、とっととこの部屋から脱出しようと扉を開けようとした。
だが扉はそれより早く開かれる。
そして扉の向こうには一人の大柄な女性が口元を緩めて立っていたのだ。
私はこの女を知っている。この女の恐ろしさもまた知っている。
生存本能からかとっさに両袖から片刃剣を抜く。
「へぇ、剣抜くか、この私相手に」
そして私は思い出す、この女に武器を構えることこそ最も危険な行為だと。
私はすぐに武器を捨てて両手を挙げる。
「う、ウソウソ何もしないから!」
「何だ、つまんない」
私達のやり取りを、晃司は呆然と眺めている。
「え、ジャンヌさん…!?」
ジャンヌと言う名を晃司が言うと、女はより一層口元を緩める。
「今日はジャンヌじゃないの。今日はレイヴンって名前」
「ど、どういうことですか…?」
晃司の質問を無視してレイヴンは話を続ける。
「まずは二人にネタバラシ。二人が今探しているものは同じ。金髪の女性、イブリース現ナンバー3、プレッツェである」
「え…ええー!?これが、あの伝説のイブリースナンバー3!?」
「そそ。実は今なんかとっても面白いことになってて、色んなモノが繋がりそうで私は心が躍ってたんだけど、あの糞道化がお前等の御守りをしてほしいっつってさ」
「道化って…フロッドさんのことですか?」
やはりレイヴンは晃司の質問には答えようとしない。
「アリーチェ、ゼネリんとこに依頼受けてたんでしょ。あれ、無事依頼成功したってことで伝えといたから」
「はぁ!?何勝手なことを…」
「あー、キレる若者は怖いことこの上ない。とにかくお前等二人はこれ以上ナンバー3の案件に関わるなというのが今のトコの総意見」
「もうゼッンゼン意味わかんない!もっと分かりやすく説明しなさい!」
私がそう言うと、レイヴンは鼻で笑って話を続けた。
「ジェロシアがプレッツェのとこに向かってるんだって。そしてそれを清龍党が追って、更にゼネリ家も後に続いている。凄くない?だってこれってさ、サイッコウの勝負が見れそうじゃない?」
「それであんたは何なの?私等の御守りってどうするつもりさ!?」
「同じこと何度も言わせない。お前等はこの名勝負に出場はもちろん観戦も不可能ってこと。此処で爪でも噛んでなさいな」
この女はいつも挑発的な物言いでイライラさせる。ホント大嫌いだ。
イライラしているのは晃司も同じなようで、彼はあろうことかレイヴンに近づいて行く。
「…俺、改めてプレッツェさんに会いたいです。彼女のナンバー3としての姿を見てみたいです」
「あーらあーら、私の忠告ガン無視?晃司、私お前さんのこと賢いと思ってたんだけど。できればそのイメージ崩して欲しくないかなぁ」
「俺は勝手に見に行きますよ…」
晃司が言葉を発した瞬間、突如レイヴンが右拳で彼のみぞおちを殴打した。
鈍い音と共に晃司は床に転げ落ちる。あー、やっちゃった。
「自分の力量を測り損ねるなよ、日本人。お前如きが参加できるほど安い勝負じゃねぇんだから」
「…こいつフツーの人間なんだから簡単に死んじゃうよ、いいの?」
「知ったこっちゃない、それよりお前はどうする。愛しのジェロシアの元に行きたいかい?」
「…あんたに歯向かうほど私は馬鹿じゃない。で、結局ジェシーは何のためにプレッツェとかいう女に会いに行くのよ」
「それはジェロシアのみが知るって感じ。そして清龍党はジェロシアに、ゼネリ家はプレッツェに用があることは明白」
「なら一つだけお願い、ジェシーに何かあったときは…どうか彼女の手助けをしてあげて」
こんな女がまともに頼みを聞いてくれるわけもないのだが、頼まないよりかはマシなはずだ。
私がそう言うと、レイヴンは口角を限界まで吊り上げて奇妙な笑みを浮かべる。
「それって私も行って良いってこと?あー、うずうずするわねぇ。私に戦闘許可出してくれてありがとう小娘ちゃん」
「あくまでサポートだからね!あんまり荒らしたらダメなんだから!」
「命令されるまでもないわー、そんなこと。じゃ、それの看病はお任せってことで」
レイヴンはそう言って風の如く部屋から去って行ってしまった。
私は剣を直して、うめき声を上げながらうずくまる晃司を見た。
「あれとまで面識あったんだ、あんた」
「ゲフッ…え、ええ一応…あ、ダメだこれ…」
「あんなのとまで絡んだら本当にで死んじゃうよ、いいの?」
「それは嫌ですね…」
とにかくあれが動いた以上もう私に出来ることはない。
自身の無力さが情けないが、もはや私ではどうすることも出来ない段階まで物事が進行してしまったのだ。
後はこの街の狂気に任せよう。




