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三国志・王脩伝ー義に厚き漢ー  作者: 涼風隼人


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第29回 王脩、孔融の死に衝撃を受ける

 王脩が黄文と共に、魏郡の内政に励んでいるときに、衝撃の情報が入ってきた。

 「孔融、曹操に処断される」というものである。

 

 この情報を聞いた時、驚きのあまり王脩は筆を落とした。

 

 「孔融様が、殺された・・・。」

 王脩は呟いた。そして、側にいた黄文も筆を拾うのが精いっぱいなほど、体が硬直し痛みをおぼえた。


 孔融は、直言の士であった。曹操相手にも、何の遠慮もせずに、言わなければいけないことは言う、という姿勢を貫き通したのである。


 曹操は、名士中の名士である孔融の言葉を尊重しようとしつつも、あまりの直言、言い換えれば「言いたい放題」の孔融に対し、その怒りが限界を超えたのであろう。ついに、処断するに至ったのである。


 王脩も黄文も、孔融の引き立てがあったからこそ、今がある。孔融には恩義を感じていた。


 曹操は人材を大事にする。もちろん、孔融の能力も評価していたが、それを超越した害であると感じたため、処断されたのであろう。


 利用価値のある間は利用する。しかし、有害さが上回れば処断する。まるで、旅達の時と同じであった。


 王脩が言う。

 「孔融様のご遺体はどうなされたのであろうか・・・。」


 「はっきりとしたことはわかりませんが、曹操様に処断された以上、普通の埋葬は許されますまい。恐らく、遺棄されたものだと思います。」


 「そんな事があってはなるまい。私は今から鄴に行って、孔融様のご遺体を頂けるよう、曹操様に申し上げる。」


 ここで、黄文は大声で言う。

 「淑治殿!袁譚殿の時とは、状況が違います。今回の場合は、曹操様の逆鱗に触れ、最悪の場合、淑治殿も処断されかねません!」


 「しかし・・・。このままでは・・・。」


 「ここは我慢すべき時だと思います。鄴に向かうというのであれば、私が全力でお止め致します。」


 「・・・わかりました。全ては、民のため。」


 「そうです。民のためにここはこらえてください。」


 王脩は、曹操の温かい部分と冷えた部分の温度差が異常であると感じた。王脩自身、曹操との対面では温かい部分を見ているが、冷えた部分にはまだ触れたことが無い。もし、冷えた部分に触れるとなれば、それは命を奪われるということになるであろう。


 別に命が惜しい、と王脩は思っていない。もし、曹操に直言しなければいけない時がやってきたとき、民のためには命を懸けてするつもりである。


 しかし、今はまだその時ではない、と王脩は自分に言い聞かせた。


 こうして、孔融の死に衝撃を受けながらも、王脩と黄文は民のために尽くすと、決意を新たにしたのである。

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