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三国志・王脩伝ー義に厚き漢ー  作者: 涼風隼人


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第27回 王脩、魏郡太守に抜擢される

 管統の説得という大仕事を果たしたことで、曹操はその成果に対して、自領の中枢ともいえる「魏郡太守」に王脩を抜擢した。

 

 これには、曹操の古参である参謀陣や家臣団も驚きを隠さなかったが、今までの名士としての評判とそれに見合った仕事をこなす王脩は、曹操好みの人物であったといえる。

 

 王脩自身も驚く抜擢人事であったが、自分の理想とする政を直接行うことが可能になり、曹操に心から感謝した。

 

 魏郡太守になった王脩は、自ら城内、城外の巡察を日課として行った。直接民に触れなければ政は出来ない、と考えていたためである。

 

 我が物顔で城内を闊歩し、違法ともいえる行為を行う豪族などの勢力には強い対応をし、日々の生活にも困窮する弱者には助けの手を差し伸べた。

 

 こうした強弱硬軟をうまく使いわけ、信賞必罰を徹底した結果、魏郡全体の治安は向上し、民は王脩の事を称えた。

 

 ここで、王脩に訃報が入る。

 

 父である王万が病にてこの世を去ったことを聞いた。

 

 平時であれば、職を辞し、三年間の喪に服したいと思ったが、今、落ち着いているとはいえ、王脩が長期間、魏郡を離れるわけにはいかなかった。

 

 しかし、せめて墓参りはと思い、短期の休暇を曹操に申請し、許された。

 

 久々の帰郷である。王万の弟子たちが王脩を出迎えた。そして、魏郡太守になった王脩を一目見ようと、近隣の住民も続々と集まってきた。高弟であった者が言う。

 「王万先生は、命尽きるまで学問に全てを捧げていました。私たちは、その意思を次いで、これからもここで学問に励みたいと思います。」


 「わかった。父の教場は好きに使ってくれて構わない。あなたが今度は師となり、多くの弟子たちを導いてくだされ。そして、一つだけ願いが。我が父、王万の墓守も合わせてお願いしたいのだが、大丈夫か?」

 

 「もちろん、そのつもりです。淑治様は、どうぞ思う存分、魏郡太守としてその腕をお奮い下さい。」

 

 「礼を言う。私はすぐに魏郡に戻らねばならない。後の事は、頼んだぞ。」

 

 王脩は拝礼し、弟子たちも拝礼で返した。

 

 集まっていた者たちが去り、王脩はようやく一人になった。改めて、父の墓前に祈りを捧げ、呟いた。

 「父上。この淑治、この度は魏郡の太守を拝命いたしました。身に余る仕事となりますが、誠心誠意、取り組むつもりです。これまで、戻ってこられなかった親不孝をお許しください。その分、多くの民を幸せに導いてみせます。」

 

 王脩の瞳からは、涙がこぼれおちた。

 

 君主のため、民のために尽力してきたという自負はあるが、父である王万には何一つしてあげることが出来なかった。

 

 自分の親不孝さに、悔しさを感じての涙であった。


 王脩は涙をぬぐい、馬に乗った。そして、早々に魏郡を目指して馬を飛ばしたのである。

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