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三国志・王脩伝ー義に厚き漢ー  作者: 涼風隼人


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16/22

第16回 王脩、膠東の全権を任される

 功曹として、王脩は大掛かりな人事改革に乗り出した。

 

 すぐに完了できるものではなかったが、自ら各県を巡察し、役人たちと接することによって、各県の現状や問題も浮き彫りとなり、そういった情報を、県令や県長に即時に共有できることで、素早い対応を取る事も出来た。

 

 一切の事を報告書にまとめ、孔融に説明をした。

 

 孔融は王脩からの報告が上がってくることを楽しみにしていたが、ここ最近、何だか元気がなく、以前の精力的に政務に励んでいた姿からすると、やや、老け込んできた感じを王脩は受けた。王脩が言う。

 「孔融様。差し出がましいことをお聞きしますが、お体の調子など、如何でしょうか?最近、少しお疲れ気味に見えますので・・・。」

 

 「おお、そんな心配をかけてしまったか、申し訳ない。淑治はそんなことは心配せず、己の職務に邁進してくれ。」

 

 「・・・わかりました。ところで、今回巡察した県ですと、膠東県の問題は、やや大きいものと言わざるを得ません。現状、公沙盧という豪族が、城外に大邸宅を築き、その周りを塹壕で囲み砦の様にし、堂々と武装して、納税などを拒んでおります。現在の県令も県尉も打つ手がない、と半ばあきらめている状態でした。そこで・・・。」

 

 「そこで、何じゃ。」

 

 「孔融様の命で、一時的にでも私に膠東県の全権を頂けないでしょうか?」

 

 「それで、どうする気だ?」

 

 「公沙盧の所に乗り込んで、話をつけてきます。」

 

 「危なくはないのか?」

 

 「完全に安全とは言えませんが、早期の解決が必要だと思います。」

 

 「そうか、ならば淑治の言う通り、公沙盧の問題が解決するまで、お前に膠東県の全権を委任しよう。解決したら、また、すぐここに帰ってきてくれ。」

 

 「かしこまりました。それでは、早速、膠東県に参ります。」

 

 王脩は、孔融から膠東県の全権を委任する書状をもらい、早々に膠東県に戻った。

 

 

 膠東県の県令も県尉もこの命令に驚いたが、この一事をもって二人の評価を下げることはしないと伝え、安心させた。

 

 王脩が県尉に言う。

 「兵士を数名でよい、貸して頂こう。」

 

 「・・・数名、でございますか?とても、それでは太刀打ちできないのではないでしょうか?」

 

 「問題ない。本当なら、単身で乗り込んでもいいのだが、それでは、あちらで相手にされない恐れもある。よって、本当に数名、選抜した者を私に付けてくれ。」

 

 「わかりました。」

 

 こうして、王脩は数名の兵士を引き連れ、公沙盧の邸宅に向かった。入口で、ならず者の風采をした男たちに止められる。

 

 「ここは、役人風情の来るところじゃないぜ。さっさと帰りな!」

 

 「そういわれても、困る。私は、王淑治と申す者。北海相孔融様より、膠東県に係る全権を委任されてここに来た。さあ、公沙盧と合わせてくれ。」

 

 こういって、孔融からの書状を懐から出して見せた。

 

 男たちは、そんなものは知らん、と王脩を全く相手にしなかった。王脩は、埒が明かないので次は邸宅に向かい大声で叫んだ。

 「公沙盧!私は王淑治と申す!北海相の孔融様より膠東県の全権を任され、本日はここに来た!出てきて私と話をして欲しい!」

 

 その声が聞こえたのか、その辺のならず者とは明らかに格が違う気をまとっている男が現れた。そして言う。


 「なんだか、やかましい役人だな。俺が公沙盧だ、話とは何を私に聞かせる気だ?」


 「そうか、お前が公沙盧か・・・。」

 

 王脩はそうつぶやいた瞬間、馬を走らせた。そして、帯刀を抜くと、公沙盧の首を一閃で斬り飛ばした。そして言う。


 「公沙盧はこの王脩が討ち取った!このまま降伏する者は、命は取らない。ただし、歯向かうのであれば、その場で斬る!」

 

 王脩の気迫のこもった大声が、周りのならず者たちを圧倒する。彼らからすれば、無敵と思っていた公沙盧が、ほんの一撃で首を取られたのだ。公沙盧の仇を取る、と言う気概をもった者はいないようで、この場で全員が降伏した。

 

 これ以後の処分は、県令と県尉に一任した。

 

 二人とも、今まで公沙盧をどうしようもなかったところ、その首を取る事により解決した王脩に頭を上げることが出来ず、しきりに平伏していた。王脩が言う。

 

 「公沙盧の件、決してお二人が無能で放置していたのではない事、わかっている。今回、私はこの一事に命を懸けたに過ぎぬ。失敗すれば、こちらが命を落とすところ。県を統べる者がやることではないので、決して真似はしないでくれ。」

 

 二人は、感謝の意を込めて王脩に拝礼した。


 「さて、孔融様に報告するとしよう。」


 こうして、王脩は劇県に戻って行ったのである。

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