# 第二十八話 老後
最近。
老後を考える時がある。
◇
別にまだ老人じゃない。
三十一だ。
だが身体の痛みや疲労感が増えてきて、
「このまま歳取ったらどうなるんだろう」
は普通に考えるようになった。
◇
しかも俺は、一人だ。
結婚もしていない。
子供もいない。
この先も分からない。
◇
時々。
本当にこのまま一人で老いていくのか、と考える。
かなり怖い。
◇
だが同時に。
人と暮らすのも怖い。
ここが厄介だった。
◇
人間不信。
不眠。
フラッシュバック。
暴力衝動。
そういう物を抱えたまま、
「家庭」
を持っていいのか分からない。
◇
しかも俺は。
自分の親を見て育っている。
だから余計に怖い。
◇
虐待って、
「悪意ある怪物」
だけがやる訳じゃない。
普通の顔して連鎖する。
本人達は善意だったりする。
だから怖い。
◇
もし子供が出来たら。
俺は同じ事をするんじゃないか。
長男だから。
男だから。
耐えろ。
我慢しろ。
そういう言葉を、気付かないうちに使うんじゃないか。
そこが本当に怖い。
◇
しかも俺は。
暴力への距離感が壊れている。
これも自覚している。
◇
普通の人間より、
「殴る」
「投げる」
「制圧する」
へのハードルが低い。
最近はかなり抑えている。
だがゼロではない。
◇
だから時々思う。
俺みたいな人間、家庭持たない方がいいんじゃないか、と。
◇
だが一方で。
一人で老いるのも怖い。
孤独死。
病気。
金。
身体。
全部。
◇
最近は、
「老いて弱くなる」
への恐怖がかなり強い。
◇
昔の俺は。
最悪、暴れれば何とかなると思っていた。
実際。
強さで黙らせてきた部分もある。
理不尽な相手。
喧嘩。
舐めてくる人間。
そういう物を力で止めてきた。
◇
だが当然。
それは永遠じゃない。
◇
歳を取る。
身体が衰える。
反応も落ちる。
怪我も治らない。
その時、俺には何が残るんだろうなと思う。
◇
しかも俺は知っている。
世の中、綺麗事だけじゃない。
弱った人間は普通に舐められる。
利用される。
雑に扱われる。
俺自身、そういう世界を見てきた。
◇
だから怖い。
弱者側へ戻る事が。
◇
多分。
俺は今でも、
「強さが無いと生き残れない」
をどこかで信じている。
だから筋トレもやめられない。
身体をデカくしてると少し安心する。
◇
だが現実は残酷だ。
どれだけ鍛えても。
人間は老いる。
◇
夜。
一人で横になる。
静かだった。
◇
昔の俺は、
「最強になれば安心出来る」
と思っていた。
だが今は違う。
人間って、多分。
最後は全員弱くなる。
◇
そして俺は。
その時、自分が何を支えに生きるのかが、まだ全然分からなかった。




