表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/31

# 第二十八話 老後



 最近。


 老後を考える時がある。


     ◇


 別にまだ老人じゃない。


 三十一だ。


 だが身体の痛みや疲労感が増えてきて、

「このまま歳取ったらどうなるんだろう」

 は普通に考えるようになった。


     ◇


 しかも俺は、一人だ。


 結婚もしていない。


 子供もいない。


 この先も分からない。


     ◇


 時々。


 本当にこのまま一人で老いていくのか、と考える。


 かなり怖い。


     ◇


 だが同時に。


 人と暮らすのも怖い。


 ここが厄介だった。


     ◇


 人間不信。


 不眠。


 フラッシュバック。


 暴力衝動。


 そういう物を抱えたまま、

「家庭」

 を持っていいのか分からない。


     ◇


 しかも俺は。


 自分の親を見て育っている。


 だから余計に怖い。


     ◇


 虐待って、

「悪意ある怪物」

 だけがやる訳じゃない。


 普通の顔して連鎖する。


 本人達は善意だったりする。


 だから怖い。


     ◇


 もし子供が出来たら。


 俺は同じ事をするんじゃないか。


 長男だから。


 男だから。


 耐えろ。


 我慢しろ。


 そういう言葉を、気付かないうちに使うんじゃないか。


 そこが本当に怖い。


     ◇


 しかも俺は。


 暴力への距離感が壊れている。


 これも自覚している。


     ◇


 普通の人間より、

「殴る」

「投げる」

「制圧する」

 へのハードルが低い。


 最近はかなり抑えている。


 だがゼロではない。


     ◇


 だから時々思う。


 俺みたいな人間、家庭持たない方がいいんじゃないか、と。


     ◇


 だが一方で。


 一人で老いるのも怖い。


 孤独死。


 病気。


 金。


 身体。


 全部。


     ◇


 最近は、

「老いて弱くなる」

 への恐怖がかなり強い。


     ◇


 昔の俺は。


 最悪、暴れれば何とかなると思っていた。


 実際。


 強さで黙らせてきた部分もある。


 理不尽な相手。


 喧嘩。


 舐めてくる人間。


 そういう物を力で止めてきた。


     ◇


 だが当然。


 それは永遠じゃない。


     ◇


 歳を取る。


 身体が衰える。


 反応も落ちる。


 怪我も治らない。


 その時、俺には何が残るんだろうなと思う。


     ◇


 しかも俺は知っている。


 世の中、綺麗事だけじゃない。


 弱った人間は普通に舐められる。


 利用される。


 雑に扱われる。


 俺自身、そういう世界を見てきた。


     ◇


 だから怖い。


 弱者側へ戻る事が。


     ◇


 多分。


 俺は今でも、

「強さが無いと生き残れない」

 をどこかで信じている。


 だから筋トレもやめられない。


 身体をデカくしてると少し安心する。


     ◇


 だが現実は残酷だ。


 どれだけ鍛えても。


 人間は老いる。


     ◇


 夜。


 一人で横になる。


 静かだった。


     ◇


 昔の俺は、

「最強になれば安心出来る」

 と思っていた。


 だが今は違う。


 人間って、多分。


 最後は全員弱くなる。


     ◇


 そして俺は。


 その時、自分が何を支えに生きるのかが、まだ全然分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ