# 第二十七話 加害者側
最近。
時々考える。
俺は被害者だったのか。
それとも加害者だったのか、と。
◇
多分、両方なんだと思う。
◇
別に俺は綺麗な人間じゃない。
喧嘩もした。
殴った事もある。
路上で人を投げ飛ばした事もある。
胸ぐら掴んで怒鳴った事もある。
かなり危ない事もやっている。
◇
しかも正直に言うと。
今でも、
「悪い事したな」
みたいな感覚はかなり薄い。
◇
もちろん、
「社会的におかしい」
は理解出来る。
捕まる。
大問題になる。
普通の人間はやらない。
そこは分かる。
だが感情としての罪悪感は、かなり弱い。
◇
昔はもっと酷かった。
別に死なないだろ。
大怪我もしないだろ。
その程度だった。
だから普通に手が出ていた。
◇
多分。
暴力への距離感が壊れている。
◇
中学の頃から、周囲がずっと暴力だった。
教師も暴力。
学校も暴力。
強い奴が偉い。
やり返せば止まる。
しかも格闘技を始めて、それが実際に通用してしまった。
◇
だから脳の中で、
「暴力は特別な物」
じゃなくなっていた。
かなり日常寄りだった。
◇
ムカつく。
なら殴る。
舐めてくる。
なら黙らせる。
本当にその程度の距離感だった。
◇
しかも俺は、そこそこ喧嘩が強かった。
だから余計に危なかった。
普通の人間みたいに、
「自分もやられる」
が薄い。
制圧出来る前提で動いてしまう。
◇
例えば普通の口論。
一般人なら怒鳴って終わる。
だが俺は違う。
一瞬で、
「フルスイングで殴る」
「投げる」
「アスファルトへ叩き付ける」
まで頭が進む。
◇
しかも厄介なのは。
それを現実的に出来てしまう事だ。
格闘技やっていたから。
どう崩せば投げられるか。
どう組めば倒せるか。
どうやれば制圧出来るか。
普通に分かってしまう。
◇
だから危ない。
油断すると、本当にやりそうになる。
◇
数年前もそうだった。
些細な言い合い。
本当に大した事じゃない。
だが途中で頭が切れた。
一瞬で、
「殴る」
「投げる」
へ切り替わる。
あの感覚は今でも残っている。
◇
最近は、
「これは普通じゃない」
を理解出来るようになった。
そこだけは昔よりマシだと思う。
◇
昔の俺は、
「舐めて来た相手が悪い」
で終わっていた。
だが今は、
「その発想自体が危ない」
は分かる。
◇
ただ。
理解出来るのと、
「自然に止まる」
は別だった。
今でも怒りが限界超えると、一気に暴力へ飛ぶ。
そこは変わっていない。
◇
だから最近は。
寝不足を避ける。
人混み避ける。
イライラしてる時は外へ出ない。
睡眠薬も飲む。
結局、俺は俺自身を警戒している。
◇
夜。
一人で座る。
静かだった。
◇
昔の俺は、
「強ければ正しい」
と思っていた。
だが今は違う。
力って、多分。
持ってる人間ほど、自分を制御出来ないと危ない。
◇
そして俺は。
未だにそこを完全には制御し切れていない。




