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# 第二十三話 人を信じるのが怖い



 俺は女が好きだ。


 普通に好きだ。


 可愛い女を見るとテンション上がるし。


 セックスも好きだ。


 多分かなり性欲は強い方だと思う。


 だから恋愛願望が無い訳じゃない。


 結婚も。


 家庭も。


 本当は欲しい。


     ◇


 だが同時に。


 俺は人を信じるのがかなり苦手だ。


     ◇


 昔からそうだった。


 教師は守ってくれなかった。


 親も守ってくれなかった。


 助けを求めても、

「お前が悪い」

 で終わる事が多かった。


 だから脳のどこかで、

「人間は信用すると危ない」

 がずっと残っている。


     ◇


 だから女と一緒にいても、完全には気を抜けない。


 遊ぶ。


 飯食う。


 セックスする。


 そこまではいい。


 むしろ好きだ。


 楽しい。


 普通に女とイチャイチャしてる時は、

「ああ、俺も普通の男なんだな」

 と思える瞬間すらある。


     ◇


 だが問題は、その後だった。


 眠る時。


 そこが駄目だった。


     ◇


 隣に人がいる。


 自分が眠る。


 無防備になる。


 すると脳が勝手に警戒を始める。


「もし今襲われたら」


「もし寝てる間に何かされたら」


「もし包丁持って来たら」


 そんな事を考えてしまう。


     ◇


 自分でも意味が分からない。


 頭おかしいと思う。


 普通、好きな女が隣にいたら安心するだろ。


 だが俺は逆だった。


 急に神経が張る。


 眠れなくなる。


 物音に反応する。


     ◇


 しかも厄介なのは。


 俺自身、暴力に慣れ過ぎてる事だ。


 だから、

「人間は普通に攻撃してくる」

 が脳のどこかにある。


 一般人よりそこへの距離感が近い。


     ◇


 昔からずっとそうだった。


 学校でも。


 家庭でも。


 安心して気を抜く場所が少なかった。


 だから今でも、

「無防備」

 が苦手だ。


     ◇


 時々、自分でも思う。


 かなり壊れてるな、と。


 好きな女と寝る。


 本来なら幸せな時間のはずだ。


 だが俺の脳は、

「危険かもしれない」

 を先に考える。


     ◇


 しかも本当は寂しい。


 誰かと一緒にいたい。


 普通に恋愛したい。


 結婚もしたい。


 子供も欲しい。


 だが近付くと怖くなる。


 かなり面倒な人間だと思う。


     ◇


 あと、自分自身への恐怖もある。


 フラッシュバック。


 暴力衝動。


 不眠。


 頭痛。


 そういう物を抱えたまま、

「家庭」

 を持っていいのか分からない。


 もし自分が親みたいになったら。


 もし怒りをぶつける側になったら。


 そう考えると怖い。


     ◇


 夜。


 一人で横になる。


 静かだった。


 本来なら孤独なはずだった。


 だが俺は、一人の方が安心出来る。


 誰も襲って来ない。


 誰も裏切らない。


 警戒しなくていい。


 そう思ってしまう。


     ◇


 昔の俺は、

「強ければ安心出来る」

 と思っていた。


 だから鍛えた。


 格闘技もやった。


 身体もデカくした。


 だが違った。


 本当に欲しかったのは、多分。


「安心して誰かの隣で眠れる事」


 だったんだと思う。


     ◇


 だが今の俺には、それが一番難しかった。

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