やり切れることをやるしかない
一瞬ですごく三人の中が深まったように見え、レッドが
「仕方ない、気を取り直して俺が全員分紹介する。」
と言うのにそれほど時間はかからなかった。
「まずはイエロー、イータのほうだ。あいつは見た通り自分の痛みを相手にも感じさせることのできる魔法だ。その痛みの原因となった部位は取り外して武器にすることもできる。その間にも感覚は残ってるらしいからあまり叩いたりしないでやってくれ。」
自分の痛み、ということは絶対に自分が何かしらの苦痛を受けなければ発動できない、と言うことだ。戦闘において必ず後手に回るというのはどうなのか、とも思うが今は置いておくことにする。
「そんでブルー、ロセなんだが。あいつのはかなり特殊でな。自分の名前の分だけ自分が増えるんだ。いわゆる多重人格ってやつを名前の数だけ自分の中に飼っている感じだな。その多重人格たちは基本的に大本であるロセに従順なんだが、唯一あの『ブルー』だけはあんな感じで自分の元になったロセすらも制御できないほどになっちまってる。戦いでは役に立たなさそうに思われがちだけど、まああいつらは強いよ。本当に。」
「失礼ながら私にはちょっと個性が強い二人組にしか見えなかったんですよね…」
ヒラソルさんが言葉を漏らす。まあそう見えるのも無理ないだろうが。
「ああ、そう見えるのも仕方ないけどな。あれは間違いなく強いよ。タイマンならまだ戦えるけど二人相手にするのはごめんだね。」
ギエルさんがそう返す。『そういうものなんですね…』と感心しながらヒラソルさんも納得した様子。
「あと一人居るはずなんだけど…この部屋じゃねえのかな」
レッドが辺りを見渡す。俺を含め他の皆も部屋の中を見るが、そこには誰も居なかった。
「となるとほかに部屋もないし外か。ちょうどいいや、全員対一人でずつでちょっと腕試しといこう。」
唐突な提案でリビングにくつろぐブルーとイエローも連れて外に出る。
「残った一人はグリーンってんだが…まあそのうち来るだろ。とりあえずブルー、初戦頼む。お前の魔法を見せる感じで。リベルタ達は全員でいいぞ。ヒラソルは戦闘に向かなさそうだしこっちで見とけ。」
「なーんで私が君の指示に従わなきゃならないのかは微妙に不服だけど後で美味しいもの作ってくれるならいいよ?」
「一応立場上は俺が上司に当たるはずなんだけどな…まあ料理位作ってやるからやってくれ。」
「やったぁ!イーちゃんも聞いたよね?じゃあさっさと終わらせてくる!」
意気揚々と家の前の開けた場所に出てくる。
「それで、どういうメンバーでくるの?さっき彼が言ってたように全員?」
彼女の魔法はまだ未知数で、それを知るにはこれとない機会でもある。
それは同時に危険の多さも含んでいるわけで、これからヴェールの一件で戦うことにもなりかねない以上無駄な消耗は避けたい。となれば
「僕が出る。他の皆はこれ以降の戦いに備えてくれ。」
ここは自分で確かめておくべきだろう。イエローの魔法はさっき実際に見ることもできたしそれなりに理解しているがこっちはてんで分からないし、これからの戦いに不確定要素はあまり持ち込みたくない。
「あらら、一人で大丈夫ですか?後ろの皆さんも危なくなったら助けてあげてくださいね。」
ブルー自体はこっちの心配をする余裕があるようだ。…が、その言葉で
「さっきから黙って聞いてれば絶対にこっちが負けるみたいに!ジェイド様!あんな女なんて秒でコ
テンパンにノしてさっさと余裕の表情崩したうえで『侮ってましたごめんなさい』って謝らせましょう!そうしましょう!」
フィエリテがついにキレた。口数がやけに少ないと思ったら相当怒り心頭だったようだ。
自分が仮死状態にされた時より怒ってるのはどういうことなんだよ。
まあ、その意見には俺も同感だし
「そうだな、ちょっとは俺も戦えるってとこ見せてくるか!」
と返して、ブルーの前に向かった。
当の本人はそんなことは意に介さず
「可愛い子ですね。恋人さんですか?」
なんて聞いてくる。
「はいそれ以上煽らないの。じゃあルールは例のコロシアムの試合に則る感じで。」
ヴェールに止められ、コロシアムの時と同じくらいの距離に立つ。
この戦い、勝てる確証はまるでない。だが、自分の力がどこまで通じるのかを試すいい機会ではあるし、ブルーの態度はちょっとどころじゃなく気に食わない。
フィエリテの言葉もある。やれることをやり切ってみるとしよう。




