不可視に向けられる『死』
「まず、私だけど。多分そろそろ死にます。物理的にじゃなくて魔力的に。そうなったらいろいろまずいことになるのでさっさとオラリオンを奪還してしまいましょうということで私の脳内会議は終了しました。これが一つ目。んで、その事実を手繰ってみると原因は何とビックリオラリオンの内部にあるみたいなんだよね。こんなことある?あるんだよな。つまりオラリオンの奪還が完了して万事うまくいけば私死にません。やったね!」
「とりあえずそっちの言いたいことだけ言われたのはよくわかった。こちらにも分かるように『説明』してくれ」
「この状況だからかな。ネタが通じないね」
「この状況でふざけていられる方がおかしいんだからな?時間もないんだし早めに説明してあげなって」
「レッドもこういう時はちゃんと真面目なんだよね…まあいいや。ちゃんと説明するとしますか。」
「最初からちゃんとしてほしいのです(小声)」
「この人いつもこうだし、こっちが慣れるしかないんじゃない?(小声)」
「そこ女性陣二人聞こえているけど今はスルーしてあげよう……みたいなノリはそろそろ置いとい
て。私が死ぬかもしれないってのは本当。その原因がオラリオンから着ているっていうのもね」
「正直なんで死ぬのか見当もつかないんだが。なぜ、死ぬと確信を持てるんだ?」
「私は身体を魔力に変換して魔法そのものになっているって話はしたよね。以前来た侵入者。そいつ
らの目的はどうやらここの破壊でも偵察でも、ましてや勝利の勝ち鬨を上げる事でもなかったみたい
なんだ。あいつらの目的は一つ。ここに向こうの魔法を届かせるための中継点になることだった」
ジェイド達には依然として話が見えてこない。
「中継点…なのです?」
「そう、どうやらこの魔法は『死』という概念そのものを射出するもののようでね。この魔法自体は
見覚えがあると思う。報告でも聞いていたからね」
「あいつ…エリンの魔法、じゃないのか?」
『死』という概念の射出。この魔法はリィズとも旧知の中であったエリンが使用したものに他ならな
い。
「うん。彼も、使えたみたいだ。正確には、使えるようになってしまった、かな。かれはあくまでも副産物的にあの魔法を手に入れていたものと思われる。そして、この魔法の本来の持ち主はここに侵攻した手駒を中継点にして私に直接『死』の概念を突きつけてきたってワケ。わかった?」
「…なんとなくは。でも、それでそのまま死にますってタマでもないだろヴェールちゃんは。それに中継点ってのが何なのかはいまいちわかんないし」
「あー、とね。今居るこの場所が何なのかわかる?」
「ここ…は、ウェーデルっぽいけど明らかに違うよな。かといって全然知らないどこかって感じでも
ないし」
「いい線行ってるけど、分かるかどうかで答えてほしいかなー」
「あー、ごめん。わかんない。なんなんだろここ」
「はい正直でよろしい。ここはウェーデルをそのまんまコピーした外面だけの街。もちろん住民なん
ていないし私が通れるようにしたもの以外はここの存在を知覚もできない…はずなんだけどね」
「はず?」
「さっきも言った中継点の話にもつながるんだけど、ここは本来襲撃者が国境を通った際に迷い込むように仕掛けてあった罠なんだけどね。どういうわけか突破されちゃってるんだよ不思議なことに」
「その、『突破してきたやつ』ってのがエリスと…もう一人だったんだな?」
「正確にはもう二人だけどそこはいいや。問題なのは突破するときに、元から知っていたかの様に平然とこの罠を殺してきたことなんだよね」
「罠を、殺す?変な表現するけど、それは例の・・」
「そう。『死』の射出。あれを見えてないはずのこの罠に向けてバシュっと一発。それもだいぶ遠く
から」
「なんであたしの時はえらい食い気味に来るんですかね…っていうかそれは過去にこの罠にかかってた仲間がいたから知ってたとかそういうのじゃ説明付かないもんなんですかね」
フィエリテが問うが、それに首を振ってヴェールは答える。
「この罠にかかった侵入者は一切逃がしてないし、一人の例外もなく殺してきた。情報が漏れることはまずありえない…………はず。少なくとも、罠を知っていても見える状態には無かった。これは絶対といえる自信がある……んだけど…」
「おおすごい。こんなに自信のないヴェールちゃんは久々に見る。三人ともなかなかレアなもの見れてるなぁ」
「レッド後で話あるから。で、この罠があんなに簡単に破られるわけがないんだけど問題はその後。私の作った魔法に効くと見るや否やその『死』の射出先を私に向けようとしてきたわけ。その魔法が私の考え通り元々エリンの物でないとするなら、その本来の持ち主が自身の支配下にあるエリンたちに自分の魔力を潜ませておいた、って感じかな」
「潜ませた…なのですか」
「うん。多分、『その場において最も魔力の多い者に向かって放たれる』ように設定したとかそんな感じかな。普通こんな遠隔操作は出来ないんだけど、相当熟練した人物なら出来なくもないからね。んでもって、その標的になっちゃったのは当然…」
「ヴェールだったってわけか。まあ、俺達より魔力は多くて当然だわな」
「しかもこの魔法、私の罠を破ってるように魔法に対しても死の概念を植え付けるみたいでね。今こうしている間にもめちゃくちゃ魔力使ってるんだよね。正直ふざけてた時間もったいなかったかなって」
「そう思うくらいなら最初からふざけないでほしいかな…」
レッドも呆れているが、事態は一国を争うことはジェイド達にも伝わっていた
「それで、俺達をわざわざここに入れてこの話をしたってことには意味があるわけだろ?これからどうするんだ」
「もう、時間がない。それは紛れもない事実で、これまでのように受け身の体制でいるわけにもいかない。だから、私達はこのままオラリオンに突入しようと思う。少なくとも、私の魔力の浪費の原因を潰すくらいのことはしておかないと」
「このまま…って、今すぐなのです?」
「そう。今すぐ。この空間からすぐに国の出口までは飛ばせる。だからそこからは皆に頼みたいの。っていうか頼まれてくれないと困るかな」
「いや、待ってくれ。あの国、オラリオンは俺の父が『永眠』の魔法で時の流れが止まっているとヒラソルさん達から聞いている。そんな状態のオラリオンにどうやって突入するんだ?」
「まずもってその『時間の止まっているはずの国』から刺客が来ていることに疑問を覚えないとね。それは向かいながらレッドに説明してもらうから今は置いといて。じゃ、あとはよろしく!」
そう言ってジェイド達の背中を押してヴェールはいなくなる。
顔を上げると一行は国を一歩踏み出たところに立っていた。
いつも大事なことをちゃんと言わないでいなくなる。こういった状況に軽く慣れ始めている自分にジェイドは気付いてしまっていた。
今日から(この話は月曜日判定)毎日投稿をとりあえず今週はやってみようかなと。
予約投稿は使わないで毎回ちゃんと後書きもつけていこうと思っております。
超短いですが今回はこんな感じで!ではまた明日!




