明日の行く末は
「よし、この話ここまで!後は一発実戦やって解散にしよう!」
ぱん、と手を叩いてヴェールは明るく話しだす。
「今日はレッドが居ない分ちょっとだけ本気で行くからね~?」
「むぅ、まだ完全に本気ではないってのがちょっと不服なのです」
「まずは手加減できないくらいに強くなれってことだろ…やるぞ、リィズ」
ジェイド達に手加減する余裕はない。すぐに武器を構えた。
ヴェールがぴょんぴょんと後ろに下がっていく
「まずはジェイド君からねー」
特に何か特別な行動をするでもなく、ヴェールはゆっくりとジェイドに向かって歩き始めた。
一歩ずつ、確実に近づいていく。何かが仕掛けられているであろうことは二人にもマイカ国理解できた。
「あら、そういえばリィズちゃんが見えないな…彼女の魔法も相当に特殊だよね」
「考えてても仕方ねぇ…!」
ジェイドが覚悟を決めて踏み出す。
一歩ずつゆっくりと近づいてくるヴェールに対して大きく踏み出して走り込む。
その間にリィズは『薄化』しながらヴェールの後ろに回り込んでいた。
どこから見ても何もない、何の仕掛けも施されているようには見えない。
後ろに何かを隠し持っているわけでも、魔法で罠を張っているようにも見えなかった。
それでも、自信満々な様子で歩みを進めている。
振り下ろされたジェイドの剣先がヴェールに当たるだろうかというその瞬間。
「後ろからなら大丈夫だろうという考えは甘いですよー?」
と言いながら見えないはずの剣をひらりと避けてしまう。
「あれっ!?」
当たるという確信をもって振り下ろされた剣は地面に激突し、それなりの深さを抉り取った。
「本当に全く遠慮してないね…まあいいけどさ」
多少の驚きをヴェールに与えながらも、リィズの攻撃は外れる。
だが、それを避けた先に当たるようにとジェイドの一撃は既に振り下ろされている。
「これなら、どうだ!」
リィズのように縦に振りかぶった一撃ではなく、横に薙ぎ払う一閃。基礎中の基礎ではありながらもこれまでの模擬戦でヴェールに一度も見せていない動き。
「あっぶないなぁもう!」
それを、屈んで躱される。
それに反応してジェイドがとった行動は、蹴りだった。
薙ぎ払った遠心力を利用した回し蹴り。左足を軸にしながら屈んだ相手に当てるために低く回す。
「ちょっ・・・」
ヴェールも咄嗟に腕で受けるが、避けることは出来ない。
初めて、ジェイド達の一撃がまともに入った瞬間だった。
もしこの攻撃を戦場で放ったとしても、それは致命の一撃には到底及ばない。
そんなことはヴェールにも、リィズにも、当然ながらジェイドにもわかり切っていた。
それでも、自分の一撃が初めて当たったという感触は確かなもので
「っっしゃ!」
思わず声を上げるだけの理由には十分すぎた。
そして、それと同時に
「よーし、私に一撃入れられたのは凄いと正直に褒めてあげる。でもね、まだ喜ぶには早いんじゃないかな?」
さっきの攻撃の後から、リィズの声がしない。それに気づくのが遅かった。
「~~~~!」
声も出せない様に簀巻きにされたリィズが端の方に転がされている。
「大事な、仲間なんでしょ?ちゃんと見ててあげなきゃダメじゃない」
ゆっくり歩み寄りながらすれ違いざまに額を小突く
「でも、一撃入れられたことも事実だしね。明日からはもっと厳しくいくよ」
そう言い残して、ヴェールは去って行く。
言葉半分にジェイドはリィズに駆け寄り、拘束を解く。
「ごめん、俺は何にも見えてなかった」
「あれは見えなくて当然なのです。種明かしもしないでいなくなる辺り相当性格悪いのですよ」
リィズに話を聞くと、丁度ジェイドが放った蹴りが当たった瞬間。リィズの背後にはもう一人ヴェールが居たという。何の気配もなく現れ、抵抗する間もなく体勢を崩されて巻かれてしまった…という話だった。
「なんだそりゃ…そんな魔法も持ってるのかよ」
「全然勝てる気がしないのですよ…」
「後ろに回り込んだ時もばれてたもんな」
「…それは間違いなくジェイドのせいなのですよ」
「俺?」
「あの時、完全に私の方見ちゃってたのです」
言われてみれば、ジェイドにも思い当たる節があった。確かに、後ろに回り込んでいたリィズを見てしまっていた記憶がある。
「あー、それでだったのか…ダメダメじゃねえか俺…」
「今回してやられた分は明日返しましょう!でもまずは今日を楽しむのが第一優先です!」
「まあ、それもそうだな!引きずっててもどうにも……おい、あれ…」
明るくなりかけていた空気が一瞬にして冷え込む。その先にあるのは紛れもなく、死体だった。それも、一日二日では説明がつかないほどに腐敗が進んでいる。
「なんで、こんな……」
死体があること。それ自体はあり得ないことではない。以前の襲撃の際にはこの場所も戦場と化していたからだ。
ジェイドとリィズが絶句しているのはその存在そのものではない。それがある場所が問題なのだ。
人通りも多い中心通路。その歩道のど真ん中に、その男は横たわっている。
何物も写さない瞳はその男が死んでいると判断するには十分だった。その死体は歩道にさも当たり前ように存在し、そこにそんなものはそこに存在しないと言わんばかりに踏まれていく。
その光景の異常さは、これからの予定を全く明るくない物にするには十分すぎるものだった。
「本当はこんなに早く見せるつもりはなかったんだけどね…ごめんね」
自分以外の誰にも届かない言葉をヴェールは一人紡いでいた。
モウ、ダメダ…
という声とともになんとか描いております頑張れ俺。
書くことなんてもう一切ないんじゃないかと思うところもあるけどどうにか二、三行は紡ぐ…紡いだよねこれで自分ルール上のノルマは達成したハズ…はず…。




