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仮説と、石

「きっと、魔法は使用者の命、正確に言うと未来を代償にしているのではないのですか?」


リィズの口から放たれた言葉は、それこそジェイドには思いもよらない言葉だった。


「リィズ、それってどういう…」


「まあまずは聞こうじゃないか」


ジェイドの言葉はヴェールに止められる


「未来は未確定、それは間違いないのです。確定しているのならジェイドの魔法の意味が成り立たないので、これは絶対だと思うのです。でも、その先。最終的な終着点は定まっているのではないかと思う時があるのです」


「終着点…?」


「どんな道筋をたどっても、この人はこういう終わりを迎える。そういうものが、定められている気がするのです。魔法を多く使った人ほど、より劇的に、多くの人の記憶に残るように死ぬ…そう、思うのです」


「面白い考察だ。ところで、その根拠は?」


「ジェイドに限らず…周りの皆を見ていれば分かるのです。ギエルは戦場に出続けるし、リムは私の為なら何でもしてしまいそうな危うさがある。ジェイドは多くの仲間が居てもそれを救うためには前線に出続けなければならないし、本人がそれを望んでしまっているのです。この街もそう。全員に何かしらの魔法があるという状況で、誰一人として戦わずに避難に徹する…そんなことに普通はならないはずなのです。各々が魔法を使えるのならば戦える人も決して少なくないはず。ぞれをさせないというのは、何かそうしたくなくなる、もしくはさせるわけにいかない理由があるから。そう考えられるのです」


「オッケー。そこまででいいや。思ってたより鋭くて私ビックリしちゃった」


ヴェールがリィズの肩を叩いて座るように促す。


「正解は彼女の言う通り、に程近いかな。運命の選択権を絞り続けていくことで、今起こり得る事象をより豊かにしている…これが魔法。強いていうなら選択権の先取りかな。結果的に未来の終着点は一つに近づいていくわけだし、リィズちゃんの言葉でほぼ正解。良く気づいたね、私でも自分が魔法に堕ちるまで分からなかったのに」


「でも、待ってくれ。それが魔法の正体だっていうなら、俺の魔法はおかしくないか?」


ジェイドが問いかける。


「魔法は選択肢の先取り。そうだっていうなら俺の魔法は今の可能性を実質無限に模索する魔法だ。それは今後起こりうる未来を無限に近い量選べるってことでもある。これじゃ俺の魔法は魔法そのもののリスクであるはずの『未来の可能性の減少』を無視していることにならないのか?」


「うん、その通り。君の魔法は特殊で、異質すぎる。未来を見通そうとする人なんてこれまで居なかったんだろうし、未来を見ることに興味はあっても憧れを持つ人が居なかったっていうのもあるだろうけど。だとしてもその魔法、『試見』はあまりに異常だ」


ヴェールははっきりと答える。自分の魔法を以上であると断言されたジェイドは言葉に詰まるが、リィズが問いかけを続ける。


「でも、その魔法は現実にあって、私達を何度も助けてくれたのです。それは間違いないことで、否定しようもない事なのです。私達からしたら自らを魔法へと変貌させているあなたの方がよっぽど異質で、異常なのですよ。あなたは一体、何なのですか?」


「普通は私の方が異常だと思うんだろうね。でも、それならジェイド君。君の横にずっといる彼女。それは異常じゃないと言えるのかな?」


ヴェールが指差すのはジェイド。正確には、ジェイドが見に付けている『月の雫』だった。

ジェイドは思い返す。この国に来てからのルナを。この国に来てから彼女は何もしゃべらなかった。何も語りかけてこなかった。一度も、周りとコミュニケーションを取ろうとすらしなかった。今現在の持ち主である、ジェイドとも。


「……おかしいとは、思ってた。この国に来てから全然話さないんだもんな」


ジェイドの声に呼応するように、声が響く。


「うん、私のことをすぐに見抜いたこの人、ヴェールさん。彼女とは絶対に話したくなかったんだ」


「私はずっと話したいと思ってたんだけどね?最初に見た時は驚いたよ。こんな形で意思を持つことがあり得るのかって」


「私は、意思を持っただけ。それだけに過ぎない」


「意思は思考を生み、思考は人格を形成した。今のあなたは魔法と呼ぶにはあまりある存在。もちろん、一国の秘宝としては価値があり過ぎるしね」


「じゃあ、今の私はあなたにとって何?」


「私から見ればあなたはもう人間に程近い。八割以上は人間になっていると言っても過言ではないわ」


「………ふーん」


一言残して、声の気配は消える。

数瞬の静寂の後、ジェイドが口を開く


「人間に…って、どういうことだ?」


「いやいや、それよりあの声何なのですか。ルナちゃんのことは聞いてはいましたけどあんな感じなのですか?」


リィズも今の状況に理解が追い付いていない。


「あの子は、元々ただの石だったんだと思うよ。」


こともなげに語るその言葉は、信じられないものだった。


「石…?ルナが?」


「うん。凄く綺麗なだけの、ただの石。そういう特徴的なものは、人々の信仰や崇拝の対象になりや

すい。信仰の対象は、何を請け負うことになるかわかる?」


「願望や、目的の成就……私たちの魔法の条件でもある、強い願いなのですね」


「そういうこと。多くの人々の信仰対象になり続けたものは『月の雫』という名前を得て協力過ぎる魔法を得た。そして、その果てにあるのは私のような存在になる運命だった、と」


「私達の願いを受けすぎて意思を持った魔法になった、ってことなのですね」


「そう。人が魔法になったのが私で、人でないモノが魔法を介して人間になろうとしているのがルナちゃん。奇しくも真逆の道を歩んでいるわけだね。私と彼女は」


「それが、俺たちの今後にどう影響してくるんだ?」


「とっても影響するんだこれが。まず単純に、彼女という存在は私たちにとっての大きな戦力になる」


「戦力って、戦わせるつもりなのですか?」


「何も人を殺させようとか、そういう意味じゃないよ。でも、見る限り彼女の魔法は今後あるだろう戦いで絶対に必要になってくる」


「ルナの魔法……」


ジェイドは考える。ルナの魔法は、一体何なのだろうか。

彼女が作った世界を見た。そこに有る物も見た。何度も話をしているし、長い長いループに付き合わせてしまったこともある。


「あいつの、ルナの魔法って一体何なんだ?」


出来ていることが多すぎる。普通、魔法は使いようによってできる事を増やす。リムが身体の各部分の強化を使い分けたり、ギエルさんが相手の攻撃の威力を地面に流したり、逆に自分の攻撃を内部に通したりするのがその例だ。工夫によってその効能は大きく変わることもままある。

だが、ルナのそれはあまりに大きく効果が変わり過ぎている。

彼女自身の想像にある姿を実体化させる魔法。自分の言葉を口に出さずとも相手に伝える魔法。自分の世界を作って、他人をそこに招くことができる魔法。

言い始めてしまえばキリがないほどあまりに、多い。存在自体が魔法なのだからどこからが個人の魔法なのかも分からないところではあるが。


「その辺は、直接話してもらうほうがいいんじゃない?少しくらい邪魔者は消えておくから今のうちに話しちゃいな」


そう言ってヴェールは部屋を出ていく。

それを確認したからなのか、ジェイドたちの前にルナが現れた。


遅くなりまして…とても…

一応、書き溜めはあるのですがそれを上げる機会をなかなか作れずにいます…情けない次第

ここのところ出番がなかったルナがようやっと登場しますね。

登場キャラも増えてきて忘れている人も多いんじゃないかなって。

え、更新速度のせい?まさかぁ

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