帰り道の最中
「――ん?」
リムと話しながら宿に向かう途中。道端に人だかりができていた。
「お先に失礼します」
リムはそれだけ言い残して人の波に突っ込んでいく。
後ろから見ているだけでも分かるほど滑らかに、人の間をすり抜けてどんどん前へと進む。
その先に居たのは、リィズだった。そして一緒にあるのは机と、立て札。
『腕相撲大会 優勝賞金……』
ようは資金繰りのようだ。
「あ、リム!待ってて、もう少しで優勝だから………!」
「そう簡単にはいかせないんだよな!」
決勝のようで、相手はイータ。どちらも全く譲らず、接戦のまま時間が過ぎている。
辺りの見物客は思い思いの歓声をあげながら勝負の行く末を見守る。
「いい加減諦めたほうが、いいんだよな……」
「それはこっちの台詞なのです・・・」
お互いに余力は残っておらず、もうすぐ勝負は決しようとしていた。
そこに、ジェイドが人波を割って出てくる。
「えっ」
と声を出したのはリィズ。
その瞬間、握られていた右手が机に叩きつけられる。
「…ジェイド様、何やってるんですか。突然出てきたらリィズ様もびっくりしますよ」
リムからの冷ややかな視線。ジェイドは自体が呑み込めずに混乱するばかりだった。
「もうちょっとだったのです…」
帰り道もリィズはとても悔しがっていた。
「まあ、仕方ありません。次、今回の分も快勝してやりましょう。」
「次って言っても、それがいつになるやら分からないのですよ…」
「あー、俺のせいな部分もあると思うし、そんなに気にすることないと思う、ぞ?」
リムからの視線があまりに鋭く、ジェイドはかける言葉もしどろもどろになる。
だが、その様子を見てリィズが何かを思いついたような顔になる。
「そうなのです。今回の敗北はジェイドのせいだと言っても間違いないレベルなのです」
「そう…らしいな…」
どこか納得いかないジェイド。
「励ましてくれたりしてくれれば、元気も出ると思うのですけど、そんなことしてくれるような人は誰かいないもんですかねー?」
後半ジェイドをちらちら見ながら棒読みになっている。
「わぁ、こんな時なのにお買い物を忘れていましたー」
リムも、明らかに演技とわかる大仰な態度でその場を去ってしまう。
周りに居た町人たちも何かを感じ取りそっとはけていく。
まあ、実際はリム含め物陰から覗いているのだが。
「まさかこんなに人が居なくなるなんて、今なら何をやっても誰にも見られなさそうなのです~」
語尾も伸び伸びでジェイドに視線を送る
流石の彼も何かしないといけないとはわかる。
それと同時に、めっちゃ見られてることもわかる。
『どうすりゃいいんだよこれ…!』
全てを理解して、ジェイドは困っていた。
この状況、何もしないわけにはいかない。だが、下手なことは出来ない。その気配を感じた瞬間にリムに殺されそうな予感がする。ほぼ確信だ。
ここまでされておいてずっと沈黙もまずい。かといってこういう場面で『試見』は使いたくない。
『正解なんて、無い気がしてきた』
結局、彼は思うままのことをすることにした。
野次馬に聞こえない様にリィズの目線まで少しかがんで、そのまま耳元で
「俺のせいですまなかった。次、頑張れるように明日にでも一緒にどこか行かないか?」
彼自身、何言ってるのかと思う。良い言葉なんて思い浮かばないし、リィズの望みに応えられているかも分からなかった。
リィズはそのまま少し固まって
「は、はい。よろしくお願いします…!」
と一言残して宿に走り去ってしまう。
それを確認して、見ていた野次馬が出てくる。
「兄ちゃん、何言ったんだよ!」
「全然聞こえないじゃないか!まさか酷いこと言ってないだろうね!」
「いや、あれは悲しんでる顔じゃあなかっただろ」
「じゃあ何だっていうんだよ?」
「ジェイド様、後でお話が」
「そりゃお前、あの場で愛の告白とかだろ!」
「おいおいまじかよ兄ちゃん!」
「答えはもらえたんか⁉いや、あの感じからしてOKもらえたんだろ!」
何も答えないままに話が出来上がっていく。
「いや、あのー」
「客人って聞いてたけど隅に置けないね!あんなに可愛い子を落とすなんてさ!」
肩を叩かれながら大声で話す男性。ジェイドの声は空に消えていった。
まーーーーーーーーーーーた!
またです!めっちゃ空いてしまいました。申し分かりません。
全くと言ってもいいほど時間が取れませんで…
気長に待っていただけると嬉しかったりします。




