約束で掴む勝利
自分が死角になるように位置していたにもかかわらずさも普通のことのように自分の存在を言い当てられたレッド。だが、それに対して冷静に言葉を返す。
「やっぱり、ばれてるんだ。おっそろしい魔法だなそれ」
彼のこの言葉に一切の謙遜も世辞も含まれてはいない。
「見る限りノーモーション。一分の隙も無く強化部位を移し替えている。その上その移行がとてつもなく正確と来たもんだ。俺、これ抑えるの?」
三人の元に歩きながら愚痴を漏らす。
「だってレッド以外居ないじゃん。あの子と相手になりそうなの」
「まあ、ああいうタイプはもう小細工が届かないもんなぁ」
なんだかんだと言っているものの、槍も準備してきているしやる気は満々のようで。
「じゃあ私は全霊でレッドさんを抑えますので。今度こそきちんとあの人に一泡吹かせてくださいね。」
「ああ。三回も連続で負けてたまるか!」
「いいねえ。やる気があるのは大事だよ。じゃあ、始めようか」
ぱちん、と指を鳴らすと例の泥人形が現れる。
ジェイドは一直線に走り出す。もちろん、ヴェールの元に。
「まあ、そうなるよね」
彼女もそれは予期していた。なにせこの泥人形、斬撃では絶対に倒せないようにしてあるのだから、あとは打てる手がこれしかない。
「あんだけやればそりゃ気付くわ!」
懐からこれまで使わないでいた暗器を左胸めがけて投げる。
「狙いも正確、やっぱり才能は十分あるよ」
「うっせ、才能だけじゃだめだからこうして今さらながらやってんだよ!」
「そうそう、才能だけでも周りの子たちに余裕で負けてるもんね」
「わーってるよ!」
軽口を叩きながらジェイドはこれまでで一番の動きを見せていた。
自分と泥人形の間にヴェールが来るように動き、可能な限りヴェールとの一対一を作り出し。暗器でのけん制と近距離に詰めてからの剣さばきも、速度と制度が増してきている。
……相変わらず、一撃も当たらないが。
「大丈夫そうですかね?では、こちらも始めましょうか」
「お手柔らかに、ってね」
レッドが返答している間にリムは一気に距離を詰める。
「おいおいおい!そんなんありかよ⁉」
「あくまで『実戦』であって『試合』ではないようなので」
「はー、全く容赦ない子だ!君、これまでの間ずっとそれ隠してたの?」
「はい。リィズ様のご指示でしたから。」
「あの子より強いのに、立場はあの子の下でいいんだ。」
「私はリィズ様を絶対に『支える』と決めていますので。上に立っては私が支えられてしまいます」
「へぇ、面白い子だなやっぱり。」
会話の最中巻き起こる力の激突は数えられる数ではなく、それはそちらを一切見る余裕のないジェイドにも伝わっていた。
「さて、やっぱりあなたも強いのでもう少し頑張ってみますね。」
一瞬の間の後、先程の数倍の重さを纏った一撃がレッドに向けられる。
「それは、無理っ!」
これまでのすべての拳を受けきっていたレッドだったが、この一撃は飛びのいて躱す。
「なあヴェールちゃん、ちょっと約束してくれ!」
「なーにー?」
「ここ一戦、俺が勝ったら明日一日付き合ってくれ!」
「負けたら明日一日口きかないからね!はい了承!」
ジェイドの一撃一撃を綺麗に捌きながらヴェールは唐突な約束を結ぶ。
「よっしゃ、もう負けらんねえ!」
「そういえば、そんな魔法でしたね」
彼の魔法は自分の守らなければならない物事の数だけ自分の身体能力が上昇するもの。
「今の会話だと、明日のデートの約束って感じですか。そんなのでも発動するんですね」
「正確には約束は二つだから二個分だけどな!」
レッドが今度はリムに迫る。槍のリーチ差を活かせる位置取り。拳では到底届かない。
「ここ負けるわけには、いかないんでな!」
言葉とともに前に突き出した槍を間一髪、右足で地面を蹴って一歩下がり、ギリギリで避ける。
その槍を、レッドは足で蹴りつけた。
当然、その槍は勢いを増してリムの上半身に迫る。
「これで終わりだ」
そう言ってレッドはにやりと笑みを浮かべた。
今回はレッド君の魔法につて解説をば。
彼の魔法はまだ本編できちんとした名前が出ていませんが、彼が『守る』と心に決めたモノの数だけ自動的にバフがかかるものです。うーん、便利。
今回で言えば『約束』ですね。
勝ったら明日のデート。負けたら一日口をきかない。
どっちも、約束事です。なので一回の約束で二回分の名府になると、そういうからくりです。
言ってしまえば条件が明確になった分大きなバフをかけづらいけど天井知らずのバフが可能なリムですね…ここのキャラ達脳筋多すぎやしませんか。
さて、今回はここまで。
また次回よろしくお願いします!




