ただ、見つめる者
剣で戦う時に大事なのは間合いだとジェイドは教わった。
間合いより近くに迫られると思うように振り切れないと。
しかし、この敵は当たるのに切れないのだ。
「『泥』ってことは普通にやっても剣じゃ通らないし、どうするかな」
近づくとすぐに左拳がジェイドに迫ってくる。
「うわ、ほんとだ。すっげえ見えやすくなってる」
リムの拳よりは早くない。そう分かるだけでも彼にとっての心理的なアドバンテージは相当のものだった。
「これなら、いろいろ試せる!」
左右の腕、足、首、胴体。
数ヶ所にわたって刃を通すが、これといった手ごたえを感じることは出来なかった。
「どこだよ、わっかんねぇ……!」
相手は魔法で動くのに対してジェイドは生身。その差が如実に表れていた。
時間が経つにつれて鈍くなっていく動きは、ついに泥人形に捉えられる。
大きな泥の波をかぶったかのように全身泥まみれになりながらジェイドは吹っ飛ばされた。
吹き飛ばされた先にもやっぱり泥。
「げほっ、うえ、泥まみれってレベルじゃねえよこれ」
「いやいや、残念。こういった人形ってのはね、一部分をどうこうしただけじゃ止まらないものが多いんだよ」
自分だけ宙にふわふわ浮きながらヴェールが魔法について語る。
「だからね、君がやるべきはあの泥人形を一撃で破壊すること……」
そこで、ヴェールの言葉は止まる。ジェイドの思考を読み取ってしまったから。
「君、なかなか酷いこと考えるね」
「立派な戦術でしょう?」
そう、ジェイドは今この瞬間にヴェールを泥に引きずり降ろそうと画策していた。
ただの嫌がらせではない。
魔法によって動かされているのであれば、その魔法の使用者本人を狙うのは至極全う、当然のことだ。
「さっきリムも言ってた。戦場なら間違いなくヴェールを狙ってた、ってね」
「だとしてもやろうと思うもんですかそれ」
会話もそこそこに、ジェイドが飛び掛かる。
が、あえなく失敗。行動を予測されているのだから当然である。
……だが、そこで終わりではなかった。
ヴェールの背後。そこにはいつの間にやらリムが居た。
「えー、ここは一対一でしょ?」
「実戦形式、ですので」
にこやかな笑顔でヴェールの後頭部をひっつかみ。
そのままリムは容赦なくヴェールを泥の中に叩き落とした。
「ったいなあ。普通ならここはレッドとかが守ってくれるところだから慣れないや」
「言い訳は見苦しいですよ。まあ、ここからは向こうで見てるレッドさんも混じってきちんとしたフェアな『実戦』でいきましょうか?」
ジェイドからは視えない死角。そこからレッドはこの状況を見ていた。
主に、リムの魔法を。ただ、じっと。
自分で書いててあれなんですがリムちゃん強いな…って。
ヴェールはヴェールで舐めプの節もありますが。
さて、この戦いはどうなっていくのか・・・は、実はもう書いてあるのでそこまでは毎日投稿できるんですよこれが。
我ながら珍しい!
ではまた次回で!




