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ふと、思い返して

 物心ついた時には、魔法が使えた。

いわゆる、『天才』だったのかもしれない。

当時の自分は少しの間触れたものを見えなくする程度の魔法で、両親からも魔法の才能を認められていた。


「お前は本当に凄い子だよ!」


「これからも練習して、もっと凄い魔法にしていきましょうね!」


なんて言われて。俗にいう『特魔』だったことも合わさって有頂天だった。自分は特別で、凄いんだと。子供ながらに自負していた。

約一年。たったそれだけの時間でそれは起こった。当時五歳、延々と魔法の研鑽を積み重ねてきた私は、もう完全に気配を消すことができるようになっていた。その頃は、夜に隠れて母親のベッドに入り込んだりするのに使ったり、サプライズの時にプレゼントを隠したりしていた。

でも、ある日。いつものように母親のベッドで目を覚ますと、悲鳴が聞こえた。


「いやあああ!あなた、早く来て!」


母の声、それも尋常ではない。何があったのだろうと私も目を覚ます。


「どうしたんだ急に。……誰だ、君は?」


駆けつけた父の後ろに隠れる母、私に対して『誰だ』と聞いてくる父。

私は答える。


「わたしは     だよ、パパ、ママ。」


自分の名前をなんて言ったのか、もうわからない。


「あなたなんて知らないわ!私たちの子供のように声をかけないで!」


母、そのはずだ。自分の記憶にも信用が持てない。

父、のはずの人物は少しずつ私に近づいてこう言った。


「私たちは君を知らないが、ひとまず話を聞かせておくれ」


諭すように聞こえる、怯えた口調だった。


「……うん。」


両親の演技でないことはなんともなしに理解していた。

自分の魔法が、やり過ぎてしまったのだと、何故か理解できた。


「誕生日は…好きなこと…二人との思い出は…」


全部話した。何かで、思い出さないかと。少しでいいから、分かってくれないかと。

家にある物の配置、自分の部屋、何もかも。

でも、ダメだった。

全部を話し終えた時に、父だった人物はこう話した。


「やっぱり、僕たちは君のことを思い出せないみたいだ。ごめんね。でも、これからもう一度家族として生きてみないかい?」


その言葉に、頷こうと思った。でも。


「ふざけないで!私たちの家についてこんなに調べ尽くして、その上私のベッドに入り込んで『娘だ』なんて信じられないに決まってるじゃない!あなたもこの子の魔法か何かにやられてるんじゃないの⁉」


母だった人が、そう言い放った。


「なんてことを言うんだ!まだ子供なんだぞ?行く当てがあるようにも見えない。僕たちが引き取ってあげればいいじゃないか!」


彼も反論した。数時間に及ぶ言い合い、次第に感情的になって互いを罵り合う姿を、もう見たくなかった。


「私が、出ていきます。ご厚意、嬉しかったです。」


「出ていくだなんて何て言い草なのよ!元からここはお前の家でもなんでもない!」


母のような姿をした人から貰った最後の言葉はそれだった。

父のように見える人は、『せめて送らせてくれ』と言って孤児院に送ってくれた。

最後に言ってくれた言葉は


「ごめん、守ってやれなくて。きっと君のいうことは本当なのに、最期まで見方でいられなくて。」


との、事だった。


「仕方ないことだと思います。奥さんにも謝っておいてください。」


ああ、と一言残して彼は去って行った。本当に信じていてくれたんだろうか、なんて考えてしまうのはよくないことだけど。

でも、孤児院の方も一緒だった。数日で、忘れられてしまう。

それでもここは孤児院。いきなり新しい子供が居ても受け入れてくれた。

数日で繰り返される似たような会話に耐え切れなくなったのは私の方だった。

何十回、何百回と入院しては、引き取られることもなく延々と忘れられ続ける。

何百回目だったか。数年耐えたが私はそのループを辞めてしまった。

気になっていたので、いい機会だと元両親の家を見に行くと、別の夫婦が住んでいた。

聞けば、私が忘れられた日のすぐ後に離婚してしまったとか。今はもうどこに行ったのかすらわからないと、近所の人たちは言う。


「いよいよ何のあてもなくなってしまった。」


夕焼けに一人呟く姿はなんとも物悲しくて、まるで自分が本の主人公にでもなったかのように思えてくる。


「ふふっ、バカみたい」


自分の思考に呆れていながら、この状況でも笑える自分が凄いなぁ、と感心。

夜の寒さを凌ぐためにも、寝床は必要だ。でも、街の中にはそんな場所がなかった。

魔法で一片の無駄もなく作り上げられた町並みには、家も持たない自分が入り込む隙など無かったのだ。


「となれば、出国、ですね!」


自分で言っててワクワクしてたのを覚えてる。昔考えたことがあるのだ。自分のこの魔法なら、国の検問を通り抜けて他の国に行くのも簡単なんじゃないかと。戦争もあって危険だ、とは聞いていたけど自分は視えないわけで。それなら自由に歩けるんじゃないかと。

そしてそれが、今実現できるのだ。


「着替えも何もないですし、お金もないです…」


悲観的にはならなかった。


「まあ、なんとかなるのですよ!」


子供の頃の愛読書の主人公の口癖だった。

意気揚々と検問に近づき、魔法で通過する。

門番たちは私に一切気付くことなく、真面目に警備を続けている。


「本当にいけちゃったのです…」


自分の魔法の完成度に驚きながら、初めての国外を楽しんでいた。

荷物もない、名前もない、肩書なんてもちろんないし、なんなら家族も帰る場所もない。

ない尽くしがこんなに自由だとは思いもしなかった。


「少しは未練くらいあるかと思ったけど…我ながら薄情なもんだなぁ。」


独り言をつぶやきながら街道を進む。

しかして行くあてもないし、今日のご飯にも困る始末。


「盗む…のは避けたいし。」


絶対にばれない自信はある。でも、それは流石に良心が痛むというもの。


「大きな国なら、それなりに何かあるでしょう!」


希望的観測を胸に、歩を進めていった。

でも、そんなに現実は私を甘やかしてはくれなかった。


更新遅れまくってしまいました!申し訳ありません!

というのも、私事ですがこの度マイカー手に入れることになりまして。やっと。この時期に。

そっち方面も忙しくてなかなか手が回らなかった次第でございます…

そして本編のこの話ですが、ほんとはもっと重ぉく暗ぁぁくしようと思ってたんですけど。

書いててきつくなってきたのでちょっとだけマイルドにしてます。

では、次回更新はすぐ本日中に!

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