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一方、その街では

時は少し戻って、場所は街の外側。

私は、たった人でこちらに駆けてくる阿呆の姿をみんなに伝えていた。


「一人か~、そういうタイプってすっごいバカかすっごく強いかの二択だと思うんだけど、どう?」


ロセが軽口交じりに所見を聞いてくる。まあ、私から見たら…


「たぶんすっげぇバカ。走ってこっちに向かってるし。」


「それ本当ですか?何か見落としてるとかじゃないです?」


リムちゃんが聞いてくる。まあ、彼女が信じられないのもわかるけど。


「本当なんだよな…あ、来るよ。そろそろ着く。」


後ろではヴェールちゃんがヒラソルさんと一緒に住民を戦果の届かない範囲へ避難させている。少しは時間を稼いで、さっさと決めるのが楽そうかな。

そんなことを考えていると、走って来た大男が、息も絶え絶えに話し始める。


「街の中に用があるので…通してくれませんか!…そうですか!わかりました…通りますね!」


独り言にもならない言葉を堂々と叫んで、男は街に入って行こうとする。


「入っていいなんて、誰も言ってないよ?」


ロセがさっさと魔法を使い始めている。詠唱もないってことは考えは一緒みたいだ。

使った色は赤一色。色が発現した瞬間に男の周りは火の海になる。


「うわ、これじゃ通れないし熱いし嫌だよ通してくださいよ!」


「ちょ、これ私が何もできないじゃないですか!」


リムちゃんが叫んでるけど、そんなことは無い。だってこれはあくまで『イメージ』の産物。

そうと知っていれば恐れることは無い。

ロセ本人から事前に話はあったが、魔法のタネに気付かれない様にするための子芝居だろう。本当に忘れていたのかは後で聞いてみるかな。

ともあれ、リムちゃんは男に向かって突進、右ストレートを放つ。

でも、その威力とスピードが異常だった。

いつもレッドの暴走とかヴェールちゃんのアレコレを見たり体験したりしている私だけど、あんな勢いの素手の一撃は見たことが無い。

地面には深々と彼女の足跡が残り、拳の炸裂音は国中に響くのではないかと言うほど鳴り響いた。

男は一切反応することなく国外に吹っ飛んでいく。周りにあるイメージの炎を突っ切って。

外からは『痛い』だの『熱い』だのと叫ぶ声が聞こえる。


「…全く大したことないですね。」


リムちゃんが一言呟くが何を言うか。あなたがおかしいんだ。


「リムちゃん、今の何…?」


ほら、ロセもドン引きだ。


「一言でいえば、掌底です!スピードとかを上乗せして威力の底上げを少しだけしましたが!この戦い方はリィズ様が私の魔法を最大限有効に使って戦うために考えてきてくれたもので…」


えらく語る。だがまあ、つまりはそういうことか。あの一団の中で最も単純な『強さ』を持っているのは彼女だったというわけだ。


「わっかんないもんだなぁ…」


思わず声に出る。だが、あの男から目は離さない。


「熱いし、痛いし!なんなんだ!俺はそこを通りたいんだ!通らないとまた死んじゃうんだ!」


今度は立ち止まって私たちに話しかけてくる。


「また、死ぬ…ねぇ。あなた、生きてるじゃない。」


イータのいうことももっともだ。


「とりあえず拘束しましょう。それが一番手っ取り早いです。」


リムちゃんの言う通りかもしれない。聞くだけ無駄か。じゃあ、私の魔法の出番かな。

…正確には新しい魔法、か。


照準登録(ターゲットセット)弾道確保(ルートキープ)


あの男の頭に指先を向け、詠唱を始める。

私の新しい魔法は『代銃(たいじゅう)』というそうだ。命名はヴェールちゃんだから語呂合わせも適当が過ぎる。

私の中に銃火器を取り込むことでその機能を使えるというもの…なのだが。取り込んだ分だけ体重が増えるし、詠唱も長くなるというもの。単純に体重の増加は嫌だし、詠唱はなんだか恥ずかしい…


非致死において(今回はキツめの麻酔を)拘束すべし(ぶち込むんだよな)


今回使ったのは狙撃銃…首筋にばっちり狙いを定めて撃つ。

その直前に。


「そんなもの食らってしまったら動けなくなってしまうのでやめてほしいですやめてくれますかありがとうございます!」


と、後ろから声が聞こえた。

直後、衝撃が背中に走る。恐らくは殴られた。でもなぜ立ち位置が一番離れていたにもかかわらず一瞬で私の後ろに…?

地面に叩きつけられながら考えるが、男はそれ以上の攻撃をするでもなく街に向かって進もうとする。


「イーちゃん!」


ロセが叫ぶ声が聞こえる。大丈夫、超痛いけど死ぬほどじゃない。たぶん。

それを示すために親指を上にあげて合図しようとするけど、めちゃくちゃ痛いし。

どうしたもんかな、これ。

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