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閃光の戦乙女はムキムキになりたい。夢は、分割払いです。  作者: 浦賀やまみち


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第03話 64ビット遺跡




「おい~ら、トレジャーハンター~」



 遠くで、何かが衝突する音がした。

 衛星軌道上から落ちてきたデブリが、大気を裂いて地表に叩きつけられる。


 いつものことだ。

 俺は気にせず、歌を口ずさむ。



「おい~ら、トレジャーハンター~」



 ここは、はるか昔に『地球』と呼ばれたゴミ捨て場。

 いまいち当てにならない古地図によると、北米という領域らしい。



「ゴミの中から、お宝発見だ~」



 ゴミ漁りとバカにすることなかれ。

 世の中には、もの好きはいくらでもいる。


 最近は、『太古ブーム』なんてものまで来ている。

 どう見てもゴミでも、そこに値打ちが付く時もある。



「ガッポリ! やっぱり! 大正解!」



 ただ、この星は砂っぽいのが駄目だ。

 すぐに身体のあちこちのギアに噛むから、一日ごとのメンテナンスが欠かせない。


 ガイガーカウンターなんて、メーターを振り切っている。

 高い金を払い、対放射能ボディに変えて、本当に良かった。



「おーーい! みんな、来てくれー!」



 仲間の呼び声が聞こえた。



「おっ!?」



 俺はガラクタを放り投げる手を止めると、すぐさま駆け出した。




 ******




「深いな……。」



 見つかったのは、奈落かと思うほどの穴だった。

 ゴミと土砂が絶妙な具合に積み重なり、その隙間が竪穴を作っている。



「……どうする?」



 仲間が怖気づくのも分かる。

 さっき石ころを落としたが、音が返ってくるまで数秒かかった。



「そりゃ、行くだろ」

「でもよー……。」

「手つかずのお宝が眠っているかもしれねーんだぞ?」

「……まあな」



 だが、トレジャーハンターとして、ここで退くのは嘘だ。




 ******




「想像以上に深かったな」

「二百メートルは下りたかな?」



 三人で穴に入り、一人は途中で引き返した。


 あいつは、今夜の酒の肴だな。

 しっかり笑ってやるか。



「おっ、気をつけろ」

「すまねえ」



 ヘッドライトで前を照らす仲間が、段差で躓きそうになった。

 だが、俺は暗闇でも昼間同然だ。


 暗視熱探知眼球。

 トレジャーハンターの基本だよな。



「……ドアだよな?」

「俺に任せろ」



 ただ、俺はソフトに弱い。

 場所を譲ると、仲間は指先からケーブルを伸ばし、ドアボタンらしきものに接続した。


 仲間の目が忙しなく動く。

 ハッキングを行っているのだろう。



「すげぇ……。これ、二千年以上前の形式だぞ」



 やがて、仲間が息を飲んだ。



「に、二千年?」

「いや、もっとか? 原始的すぎる」

「いけるか?」



 胸が高鳴った。

 お宝の予感だ。



「楽勝だ。

 動力は……。なんだ、これ? 電力?」



 電力、聞き覚えのないエネルギーだった。

 今はナカマツドライブが標準だ



「はっはっ! 1ナノナカマツで足りるぞ」

「おいおい、大丈夫か? 俺の欠伸にもならねーじゃねえか」



 期待が一気に下がった。



「よし、開くぞ!」



 動作音が響いて、ドアが開く。

 俺は目を見開いた。



「こいつは……。まっさらじゃねえか!」



 それは、このゴミ捨て場の星で幾度も見てきた『遺跡』とは違っていた。


 荒らされた痕跡が一切ない。

 降り積もった埃だけが、静かに二千年以上の時を積み重ねていた。




 ******




「すげえ! これ、64ビット端末だぞ!」



 ここは、お宝の山だった。

 仲間は黒い箱を解析しながら、興奮している。



「64ビット? 128エクサ規格と互換あるのか、それ?」

「……あるのかな?」

「それより、あれだ。あれ」



 だが、俺はもっと気になるものがあった。


 この部屋のドアだ。

 やけに頑丈そうだった。


 遺跡自体はそれほど大きくない。

 一通り見て回ったが、この先が最奥だと、俺のトレジャーハンターの勘が言っている。


 そこに、何かがある。



「……だな。

 ちょっと待ってろ。この64ビット端末で動くはずだ」



 期待は、最高潮に達していた。




 ******




「なんだよ、もーー……。」



 ドアは開いた。


 しかし、天井が崩れ落ち、部屋は半壊していた。

 無事な部分には、金属製のタンクがいくつも転がっているだけだった。


 近くのタンクを覗いてみる。

 何もない。



「まっ、64ビット端末で十分だろ」



 仲間はそう言ったが、声には落胆が混じっていた。


 腹立たしさに、思わずタンクを蹴ろうとした。

 その時だった。



「いや、待て」

「どうした?」

「あれだけ違うぞ」



 俺の熱探知が、端に立つ二つのタンクの異常を捉えていた。

 タンク内はマイナス187度だった。



「……見なかったことにしてぇー」



 思わず目を手で覆う。

 嫌な予感がした。



「どうした?」

「たぶん、人だ。生きてる」



 仲間の戸惑いに、ため息で応える。



「……マジかよ」



 仲間も、ため息を落とした。


 宇宙には、三つの国がある。

 それぞれの主義は相容れず、二千年近く戦争を続けている。


 だが、たった一つの共通する法がある。

 生存者を発見した場合、救助は絶対義務だ。


 これがあるからこそ、人々は宇宙を探査できた。

 灼熱の星だろうと、極寒の星だろうと、ブラックホールへの突入すら。


 それが、人々の版図を広げた。



「ここへ来て、まだ一週間だよな」

「……大赤字だな」

「64ビット端末なら! 64ビット端末なら!」

「それ、この辺境まで来る燃料代になるのか?」

「たぶん……。きっと……。」

「お前が穴を見つけたからだ!」

「うるせー! お前、ノリノリだっただろ!」



 つまり、俺たちは帰らなければならない。

 地上ではなく、最寄りの文明圏へ。




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