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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
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43話 雷の街

 シランス領のヒューゴの元で暮らすようになったリアムは、のんびりと過ごしていたよ。


 住み始めた数日は毎日やっていた剣の練習もせず、部屋から出なくてみんなを心配させていたんだ。


 色んな思考が入ってきて、混乱してしまうらしいよ。


 ヒューゴが引きこもっても仕方がないから、毎日少しでもいいから人と話しなさいとアドバイスしてくれたよ。


 リアムはヒューゴやジョゼフィーヌと過ごすうちに、自分を取り戻していったんだ。


 ガレオとアルマンといえば、ヒューゴに雇われたことになっているけれども、リアムやフーの話し相手になっていたよ。フーが餌を狩りに行く時、誰かがついていないとみんなビックリしてしまうし、羽を抜かれたりするかもしれないからね。


 バヤールはというと、傭兵のお仕事していたけれど、大きな戦争が終わったからすぐにお仕事がなくて、日雇いの警備をしながらシランス領にいたよ。週の何度かはリアムのところに遊びに来ていたよ。


 ジョゼフィーヌはマリアス・カレのところで働いているから、リューリッシュまで電車で通っていたんだ。


 各々暮しが慣れてきて、夏の終わり秋の始まる頃、そのことを告げるようにシランスの夜の空は激変したんだ。


 空がピカピカ光るなとリアムはベランダに出ると、ドーンと森の方へ落ちたんだ。


「リアムちゃん、危ないから部屋に入りなさい」


 アルマンに言われて、リアムは部屋に入ったよ。


 カーテンを閉めているのに、外が点滅するように、ずっと光っていたんだ。


「シランス名物の秋の雷だ。始まったからには外に出るなよ?」


 ガレオが教えてくれたよ。シランスに初めて来たときに、お店とか街が焼けていたのをリアムは思い出したよ。


「本当にずっと鳴っているんだね。被害がないといいけど。フー大丈夫かな?」


 ヒューゴがお屋敷のお庭に、壁もない大きな屋根だけのフーの家を作ってあげたよ。


 またどこかに移住するかもしれないから、ちゃんとしたお家を建ててあげていなかったんだ。


 リアムはフーのことが心配になって、お庭に出たよ。雨は降らずにピカピカと黒い雲の隙間から光っていたよ。


「フー、大丈夫?」


 フーはいつもより身を縮めていたよ。怖かったみたい。


「ぱぱ。おそらがひかってる」


「うん。あれに近づいたら危ないから飛ぶなよ」


「わかった。ぱぱ、いっしょにねよう」

 

「そうしようか」


 屋根しかないから雷の音がよく聞こえたんだ。これだとフーは寝られないだろうなと思ったよ。


 プラット村の森にいたとき、フーは好んで洞窟をねぐらにしていたから、身を隠せるような場所で眠りたいんだ。


 キミたちはシランスの森にいればいいじゃないかと思うかもしれないけれど、フーはリアムと離れたくなかったらしいよ。


「何か塞ぐものがないか探してみるね」


「うん」


 リアムは草で覆ってあげようと思ったけれど、ここは人のおうちだしヒューゴの許可が必要だと考えたんだ。


 お屋敷の中に入ると、ヒューゴがリアムの部屋の近くにいたよ。


「リアム、フーはどうだったかい?」


 ヒューゴもリアムに外にあまり出ないようにと注意しに来たみたい。リアムがフーのところに行ったとアルマンたちに聞いていたんだ。


「ちょっと怖いみたいです。音や光が見えないように草で隠したいんですが、魔法使っていいですか?」


「隠してあげたほうがいいね。魔法使って構わないよ」


 リアムはガルシア領主からもらった杖を部屋から持ってきて、フーの住処に草をはやしたよ。


 そういえば、ランバート王がリアムから奪ったカリナの杖は、彼女のもとに返されたよ。王様は宝の持ち腐れってやつだったね。


「どうだ?雷見えなくなっただろう?」


「うん、みえなくなった」


 一度大きくドーンという音がすると、雷鳴が遠ざかっていったよ。リアムは安心したけれど、音のした方を見ると火の手が上がっていたんだ。


 シランスの繁華街の方角だったよ。


 リアムは反射的に走り出したんだ。


「ぱぱ、どこいくの?」


「雷が街に落ちたんだ。助けを求めている人がいるかもしれない」


「ふぅもいく!」


「フーは危ないから待ってろ!」


 と言ってもついてきちゃったよ。


「ぱぱ、のって!」


 走るよりフーに乗った方が早いよね。リアムは鞍なしだったけれど、フーに乗ったよ。あんまり高く飛ぶと雷が落ちたときに危ないから、低く飛んだよ。


 シランスの街は雷がよく落ちるから、高い建物はなかったんだ。


 あっという間に繁華街に入ると、その中の小さな公園に落ちたようで、近くの草木に燃え広がって近所の家にも火が移っていたんだ。


 近所の人たちが日本で言う消火栓のようなものを使って、消火活動をしていて、騎士団も集まってきていたよ。まだまだ人手が足りず、火の勢いが増していたよ。


「フー、家の火を先に消すぞ!」


「わかった!」


 フーの周りに魔力が漂うと、家に燃え移った火がパッと消えたよ。リアムは公園の方を杖を使って、水魔法で消したんだ。


 水魔法を展開しようとした兵士たちは、急に火が消えて驚いたよ。バサバサと大きな羽音に空を見上げると、火の鳥の姿があったんだ。


 リアムは鎮火した公園へフーと一緒に降りたよ。


「怪我人は!」


 兵士たちはハッと我に返って、怪我人の確認をしたよ。幸い先に公園に落ちたから、近所の人は避難できたみたい。


「リアム」


 カジミールが兵士たちの間をぬって近づいてきたよ。


「あ、カジミールさん。団長も出勤するんですか?」


「ああ。今年初めての落雷だからな。新人もいるから、手筈通りに動けているか確認の意味で私も出動したんだ」


 兵士たちは雷に打たれたように、ピッと背筋を伸ばしていたよ。剣術も武術も強く、無愛想なこともあいまって、カジミールは兵士たちに怖がられているみたい。


「そうなんですね。お疲れ様です」


 ニコニコと気の抜けたような言い方に、カジミールは慣れないみたい。マニュスモードのリアムの印象が強くあるらしく、カジミールはリアムを貴様と言わなくなったよ。


 ピカっと光ってバリバリという音に、リアムは思わず肩を縮めたよ。


「ぱぱぁ〜」


 水で濡れた地面をぺちゃぺちゃ音を立てながら、フーが突進してきたんだ。


「え?あ、止まれ!」


 リアムはフーの胸にぶつかって倒れたよ。あろうことかフーはそのまま座ったんだ。


「ぱぱぱぱぱぱ、こわいぃぃ〜」


「重い重い、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」


「フー。退きなさい。リアムが圧死してしまう」


 カジミールが冷静に火の鳥に言う姿を、団員たちは尊敬の眼差しを向けていたよ。フーがどくと、リアムは泥だらけになっていたんだ。


「さいあく…」


「帰って着替えなさい。雷が落ちても我々が対処するから」


「そうする。フー帰るよ。飛ぶと危ないから、歩くよ」


 リアムは水魔法で泥を落としたけれど、泥と灰が混ざった汚れは結構しぶとくて、洗剤ではないと落ちなさそう。


 公園を出て、屋敷に戻ろうとしたとき、カジミールが姿勢を正したから兵士たちも正したよ。


「消火の助太刀感謝する」


「このくらいしますよ。ただでごはん食べさせてもらってるし」


 リアムは人助けは当然と考えていたけれど、もしかして兵士の仕事を取っちゃったかなって帰りに思っていたよ。


 翌朝、ヒューゴに呼ばれて彼の執務室に行ったよ。カジミールと副団長もいたんだ。


「カジミールから話を聞いたよ。リアムとフーで、あっという間に消火してくれたんだってね。それでリアムにお願いがあるんだけど、広範囲の被害が出たとき、消火や救助に力を貸してほしいんだ」


 ヒューゴの提案にリアムはすんなり了承したよ。


「いいですよ。住まわせてもらっているし、少しは働かないと」


 その言葉に副騎士団長は吹き出したよ。


「失礼。貴殿は客人だと思っていたのですが、よいので?」


「ん?俺はヒューゴさんの客人だと思ってないです。外交面で色々迷惑かけているだろうし。

 広範囲ってどのくらいの被害ですか?昨日のも結構危なかったと思いますけど」


 副騎士団長はすっと笑顔を消したよ。ヒューゴも真顔になったんだ。


「そうだね。あれはリアムたちが消してくれなかったら、三、四軒燃えていただろだろうね。それが毎日のように三週間近く続く。毎日お願いしたいけれど、リアムたちの体力も持たないだろう。我が領の兵士たちの威信もあるからね」


「わかりました。俺はずっとここにいるかわからないし、頼りにされても何も解決にならないしね。避雷針が各所あるって聞いたけれど、それ以外の対策はしているんですか?」


 避雷針と消火栓は各所にあって、火災が起こると周辺の住民がまず消火するらしいよ。


 かなり昔に雷が多い時期に防御壁のようなものを使って、街全体を覆えないかという構想が持ち上がったらしいけど、莫大な魔力を使うから立ち消えたよ。


防御壁(デファンス)…。それならフーに乗っても雷を防げるね。その構想で考えられた対雷用の防御壁(デファンス)ってどういうものでしたか?」


「対雷用の防御壁(デファンス)や防御魔法はいくつかあるよ。カジミール、教えてあげなさい」


「承知致しました」


「それと、リアム。広範囲の水魔法について、騎士団に教えてあげてほしいんだ。限られた装備で出来る限りのことはしているのだが、水神王と呼ばれた神帝の知識をお借りしたい」


「千年前の知識でいいなら、ですけど。今の魔法具や一般的な兵士の魔法レベルも知りたかったので、ついでに教えてもらえると嬉しいです」


 シランスにいる魔法の使い手で、師匠クラスが自力で可視化魔法が使えなかったことにリアムは驚いていたんだ。魔力ゼロのヒューゴは苦笑していたよ。


「では、我が領の誇る大学の図書館で、禁書まで閲覧できる権限をお渡しする」


 リアムは何か期待されてしまったぞと思ったけれど、ヒューゴはニコニコしていたよ。


 カジミールに連れられて、騎士団の訓練場に行ったんだ。


 まずは雷用の防御壁を見せてもらったよ。


 バヤールの静電気レベルなら土壁や木の板でも防げるけれど、雷では通してしまうよね。


 どの属性の、どのくらいの防御壁の強さなら雷を通さないかリアムは知らなかったんだ。


 ハイドランジアでもゴムがあって、ゴムのような絶縁体系の防御壁は生み出されていたよ。


 あ、ゴムは電気を通さないと言われてるけれど、雷はめちゃくちゃ電圧高いから、ゴム製のレインブーツを履いていれば雷が足元に落ちても感電しないって思っちゃだめだよ。


 雷レベルの電圧が流れると絶縁破壊っていう現象が起こって、ゴム製のレインブーツレベルでは耐えきれなくて電流が流れてしまうよ。


 そういうわけで、強い防御壁をリアムは勉強しに来たんだ。


 シランスのお屋敷に施されている魔法陣の防御壁を見せてもらったよ。屋敷の防御壁なら魔法具で作った魔力で足りるけれど、街全体となれば莫大な魔力が必要なんだ。


 魔力の増産は兵器にも使われることから、帝国は輸出を規制しているし魔力生産系の魔法具はとても高いんだ。


 ヒューゴをはじめ、歴代の領主が街の空に防御壁を作れなかったのはそのせいでもあるよ。


 リアムは対雷の防御壁の魔法陣を書写させてもらってから、人が身につけるタイプの防御魔法具を使っているところを見せてもらったよ。


 実際に弱い雷を魔法で起こして、受けるという訓練なんだ。


 雷が鳴っている中で、兵士たちは消火や救出しなくてはならないから、自分に落ちてきたときのために備えてるよ。


 落雷時の音、光り、そして衝撃がどういうものか。落雷を受けたあと動けるのか。兵士たちは日頃訓練して慣れさせていたんだ。


 リアムも訓練に参加してみたよ。しかも消火活動中に雷が落ちるという設定だったから、集中している時に頭上から衝撃が来るという不意打ちに思わず目を瞑ったり、魔法が止まってしまったんだ。


「魔法が止まっている!消火出来ていないぞ!」


 新人の兵士たちがカジミールに怒られていたよ。ベテランの兵士たちは雷が落とされても、手を止めていなかったんだ。


「強いな…」


 シランスの兵士たちをリアムは見直したよ。魔法具と兵士の訓練のお陰で昔よりは被害が減ったというよ。


 昨日リアムとフーがこの対雷用の防御魔法具を持っていなかったから、現場に来てしまった二人に早く帰るようカジミールは促したんだ。


 この魔法具は永遠に魔法を出せるわけではないよ。連続使用は三十分くらいなんだって。とても強い防御魔法だなら、魔力をたくさん使うんだ。


 極めつけは値段が高いため、兵士は二つ持っていて、交換して使っているよ。


 だから広範囲の被害が出たとき、長時間活動できなくて対応しきれないんだ。


「性能を落とさず安くするか…」


 需要が多ければ大量生産して安く作るという流れは、この時代も行われていたよ。ただ雷に特化した魔法具は、ほぼほぼシランスでしか使われないなら、高いままなんだ。


 防御壁は街全体に覆えない、魔法具はたくさん買えない。兵士たちの消火や救出能力を上げて被害を最小限にするしかない。


 誰しも広範囲の水魔法が使えれば消火は早くできるけれども、自力の魔力は少なく魔法具に頼っている。その魔法具も高価。


 シランス領は交易は盛んだけれども、雷の時期と冬にかけて人とモノの流れは著しく下がるよ。


 どうしてかというと、雷は怖いからよその人はシランス領に入りたがらない。冬になればデスペハードは雪に閉ざされるため、往来が少なくなるという感じ。


 交易で得られる利益は時期が限られていて、目立った産業もない。落雷で被害が広がれば街の修繕費に使われる。あまりお金がないんだ。


 という問題はあるようだけれど、リアムができそうなのは兵士の能力とシランスが保有している魔法具を見て、手助けしてあげることだったよ。


「この中で可視化魔法使える人はいますか?」

 

 魔法や武術の上手い人たち五十人が集まっていたけれど、手を挙げたのは十人ほどだったよ。


 手を挙げたカジミールは部下のいる前で、素直にどの程度使えるか言ったんだ。


「私が視えるのは強い魔法のみ。魔法具があるから、自力を上げる必要はないと考えていた」


 他の兵士も自分の能力を素直に話したよ。普通上官なら部下の前で、見栄を張ったり、低い能力について話したがらないけれど、カジミールの率直さのおかげか、兵士たちは恥ずかしがらず話してくれたよ。


 カジミールいわく、能力を高いと申告を偽られて、不相応の任務に当ててしまうことは、お互いに不幸でしかないということなんだって。


 兵士の中で魔法が使えるけれど可視化魔法を習得していない人に、リアムはアドバイスしたよ。


 これは練習するしかないから、すぐに出来るとは考えていなかったよ。


 リアムも臨時だけれど出動することになるから、防御魔法具を借りることになったよ。ガレオたちがくれたものでは雷は防げなかったんだ。


「リアム。頼みがあるんだが」


 兵士たちの休憩中にカジミールが言ってきたよ。


「何でしょう」


「剣の手合わせをしてほしい」


 くつろいでいた兵士たちが引き締まった顔になったよ。


「だ、団長。その人がいくら魔法が強くて、統一王の転生者だからって」


 兵士が止めようとするから、リアムは余計にカジミールの腕が気になったよ。


「いいですよ。俺はまだまだ半人前なんで、お手を柔らかにしてもらえれば」


「もちろん考慮する」


 兵士たちは立ち上がって場所をあけたよ。

 

 防御魔法具が作動しているか互いに確かめてから、向かい合ったよ。


「勝ち負けはなし。手合わせといったが、練習だと思ってもらえればいい」


「わかりました。魔法はなし、剣術のみでいいですね?」


 剣を抜くとカジミールが行くぞと先手を打ってきたよ。


 初手だからリアムは真っ向に受け止めたよ。ズシンと重い剣に、よろめきそうなのを足で踏ん張って、横に受け流して相手の体勢が整う前に斬り込んだよ。


 さすが若くして騎士団長に登りつめた人というべきかな。リアムの剣をすかさず受けて弾き返したよ。今度はカジミールが攻撃に出たよ。


 数手でリアムは負けるだろうと思っていた兵士たちは、二人の剣捌きに手に汗握って見ていたよ。


 カジミールは二回目の攻撃で手抜きをやめて、リアムの急所を狙っていったよ。どれもかわされたり、剣で防がれてしまったんだ。


 しかも剣は流され、妙に誘導されて体勢を崩そうとしてくる。


 カジミールの父エドガールが得意とした剣術なんだ。それを息子ではなく、赤の他人のリアムが継いだ。


 カジミールの動きが一瞬鈍ったから、リアムは突こうと思ったけれど、カジミールの表情が集中していないように見えたよ。


「あんたが戦うべきなのは、頭の中のものじゃないだろう?」


 ハッとなって見た相手の目は、カジミールの思考を見透かしたようだったよ。いつも冷静なカジミールには珍しく、カッと本気の一撃を振り下ろしたんだ。


 リアムの剣は力を受けきれず弾かれて、その切っ先はリアムの肩へ落ちたよ。防御魔法具が作動したけれど、カジミールの剣は強いのか防御魔法の薄い膜はビリと割れたんだ。


 カジミールは止めようと腕をあげようとしたけれど、リアムの肩のところで止まってしまったんだ。


「あ、魔法使っちゃいました。俺の負けですね。あ、勝負なしでした」


 リアムはニコリと笑って、数歩後ろに下がってから、カジミールへかけた魔法を解いたよ。本気になった自分が恥ずかしく、カジミールはリアムから目をそらしたよ。


「いや…」


「カジミールさんって噂通り強いんですね。剣やる人少ないんで手合わせ出来て嬉しかったです。ありがとうございました。

 防御魔法の魔力補填したいんですけど」


「それなら、そっちの部屋の」


 カジミールに教えてもらったところに行くと、兵士たちが集まってきたよ。


「魔法も凄いけど、剣も強いんですね!団長が本気になっているのを久しぶりに見ましたよ」


「誰に習ったんですか?あ、補填方法、ちょっと変わってて」


 普通はコードに繋ぐタイプか、補填機に置けば魔力が入るんだけれど、ここにある補填機はとても大きくて、置く台がなかったんだ。


 小さなカバーを外すと魔法具を置けるようになっていたよ。兵士たちも雷用の魔法具を魔力補填をしていたよ。


「噂に聞いていたが、エドガール殿に師事していたらしいが?」


 四十代くらいの人が補填機のある部屋に来たよ。隊長さんだって。


「そうですが…」


「やはりそうですか。見た事ある剣筋だなと。受け流されて相手にされないと怒った兵士はいましたが、よくエドガール殿はこれが敵兵や魔物でも文句言うのかと言い返してましたね。

 懐かしいものが見られました」


 握手を求められて応じるけれど、リアムはチラリと訓練場を見たよ。隊長も察していたよ。


「団長の前では言いません。エドガール殿を一番気にされているし、剣の腕も見てみたいと思っている方ですから」


 この場にいた兵士たちに内密にと念を押して、隊長は訓練場に戻ったよ。


 魔力補填が終わるとリアムも戻ったら、ヒューゴと副団長がいたんだ。


「雷の対策はなにか思いついたかな?」


 ヒューゴはリアムとカジミールが手合わせしたのを聞いたけれど、話題にしなかったよ。


「今できるのは大規模魔法ではなく、小さな魔法でも確実に火元に当てて消火するという方法ですね。可視化魔法が使えると家の壁など障害物があっても、うっすら火元が視えるようになります。

 あとは火は水で消すものという考えがあるからか、火属性が得意な兵士も水の魔法具を使っていました。フーが火の魔法で火を消したように、火属性は火を操れるので、その練習をすべきかと。

 現代は魔法具の発達で、個人の属性は関係なく魔法を発動できます。でも得意不得意、向き不向きはあります。

 もう一度兵士の適正を見直して、部隊の編成をしたらどうでしょうか?」


 フーが一瞬で火を消したことを説明したよ。


 リアムはフーの魔法を解析してみると言うと、兵士たちからどよめきが起きたよ。


火の鳥(オワゾ・デ・フウ)の魔法を?」


「いや、俺は水属性なので、できるかわかりませんが」


 慌ててつけ加えたけれど、リアムは妙に兵士たちの期待も背負うことになってしまったよ。

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