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流刑の覇王  作者: 卯月よひら
第二章 賢王リアムの話
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44話 魔鳥に乗った英雄

 雷が鳴り始める夕方になる前に、早い夕食をガレオたちと食べに行ったよ。前に行った魔物の肉を出すお店だよ。


 ジョゼフィーヌは行ったことがないというから、とても楽しみにしていたんだ。


 ガレオが店主と顔見知りだから、店の奥の個室を取ってくれたよ。リアムはテレビに出ちゃってから、ウィッグをつけていても気づく人もいて、声をかけられて人が集まってきてしまうんだ。お店でゆっくり食べられないから、ガレオが店主に頼んでくれたんだ。


「昨日の夜の落雷でまた有名になりましたぜ。魔鳥に乗った英雄だって」


 店主が、魔物の肉盛り合わせを持ってきてくれたときに教えてくれたよ。


「俺は英雄じゃないよ。英雄は騎士団の人たちなんだ。訓練見たけど凄かったよ」


 普段騎士団の人は訓練を話さないからね。ガレオたちも気になっていたみたいだから、話してあげたよ。


「雷受けながら、消火活動?ヤベ…」


 食費はヒューゴ持ちだから、タダ肉食べられると聞きつけたバヤールもいたよ。兵士の訓練内容に引いていたよ。


「そうだ、雷の使い手がほしいって言ってたから、仕事なかったらバヤール行ってみたら?短期でもいいから探してるって」


「いや、こいつ。ノーコンだから」


 同じくタダ肉を食べられると聞いたジョゼフも来ていたよ。ノーコンと言われて、バヤールは言い返せなかったみたい。


「ノーコンでもいいって。どこに誰が中るかわからない方が訓練になるから」


「それはそれでいいのか?」


 ノーコンが必要な人材扱いされているのが、バヤールは胡散臭く思っていたよ。


 後日試しに自慢の魔法具を使って、兵士たちの訓練に参加したら、同じ人に二回落としちゃったらしいよ。


「それでもいい。自然の理不尽さを感じる練習にもなる」


 真顔のカジミールに言われて、フォローされた気はしなかったらしいよ。




「オヤジさんは魔物の解体できるの?」


 この前、フーが獲ってきた魔物の肉が大きすぎて、ヒューゴの屋敷にいたシェフさんが困っちゃったんだ。


 魔物の肉を出すお店ならいい解体屋を知ってるかもと思って、リアムは聞いてみたよ。


「うちで出す肉は俺がやってますぜ。どんな魔物だったんで?」


 特徴やサイズを言うと解体できるというよ。お肉を分ける約束で今度フーが持ってきたら、お屋敷に来てもらうことになったよ。


 この頃、フーがシランスの空を飛んでも住民たちは驚かなくなったよ。むしろ、消火してくれるありがたい魔鳥として親しまれていたんだ。


 何度か店主に出向いてもらって、魔物を解体してもらったよ。ついでに調理してくれたんだ。


 フーに焼いた肉を出したけれど、「なまがいちばん」らしいよ。ビールじゃないからね。


 この日の夜も雷が鳴っていたよ。リアムの出動はなかったけれど、街の外れに落雷があったみたい。


 被害がなかったと朝食の時に聞いて安心してから、大学の図書館へ向かったよ。


 千年間の魔法の変遷を追うのは大変だから、さらっと魔法学の本を読んで、現代の魔法が書かれている本を手にとったよ。いかに魔法具で魔法が再現できるかと、そして使いこなすかに重きが置かれているみたい。


 魔法具の種類や仕組みが面白くて、夢中で読んでいると声をかけられたよ。


「熱心に読んでいるけど、お昼ごはん食べたの?」


 アルマンとガレオが、いつの間にかリアムの前に座っていたよ。


「あれ?もうそんな時間?」


「もう十四時過ぎてるぜ。リアムは勉強好きだったとはな」


 ガレオが関心しているよ。


「難しい文字は読めないから、辞書引きながらだから時間かかるけど、魔法陣や魔法具は割と絵が多いからわかりやすいんだ。

 アニバル…神帝は魔法陣とか魔法具好きだったから、その影響もあるかも。お昼食べ損ねちゃったな」


「本借りられるから、借りて部屋で読んだら?おやつ食べに行きましょうよ」


 アルマンが甘い物を勧めるから、ガレオは女子がたくさんいそうな店かと気が滅入っていたよ。


 そんなガレオの気持ちを察して、オシャレカフェではなく、純喫茶店系をアルマンは選んだよ。


 リアムはお店に入るとコーヒーや食べ物のいい香りがして、お腹が鳴ったよ。


 ごはんを食べたあと、部屋に戻って借りた本を読み始めたんだ。


 雷対策や消火に使えそうな魔法陣と魔法具を書き写していると、ペンのインクがなくなったよ。


 ボールペンは開発されていなくて、ペンにインクを入れて持ち運べる万年筆があったよ。


 インクの予備がなくなったから、買いにいこうと玄関に行くと、カジミールが屋敷の門をくぐったところだったんだ。


「お疲れ様です。お仕事は終わりですか?」

 

「昼の報告をヒューゴ様にするところだ。リアムはどこに行く?」


「インクを買いに。あっウィッグ忘れちゃった」


 リアムは頭が涼しいなと思って触ったら、ウィッグをつけていないことに気がついたよ。秋になったとはいえ、シランスはまだ暑い日が多かったんだ。


「有名になると大変だな」


 カジミールは最近世間話もしてくれるようになったよ。


「予定外ですよ。こんなになるなんて。千年前までは肖像画だってなかなか出回らないから、自由に街中歩いてても問題なかったのに。テレビって面白いけど、そういうところ困るって思います。

 そうだ。昨日はでしゃばってごめんなさい。試行錯誤があって今の軍の体制ができたのに、属性見直せとか偉そうなこと言ってしまいました」


 反省しだしたリアムに、カジミールはキョトンとした顔になったよ。


「属性に合わない魔法は苦手な兵士は多い。当たり前のことを言われて、気づかされた。リアムが謝ることではない。

 そのことを今日はやっていたんだが、明日時間があるなら見てくれないか?」

 

「俺でいいんですか?田舎者で千年前の知識しかないですけど」


 話しているとヒューゴの執務室まで来たよ。


「そう謙遜するな。あの杖を簡単に使いこなせる使い手はいないだろう。莫大な知識と魔法を理解していないと出来ない」


 褒めてくれているみたい。リアムはふふと笑って、ではと部屋に行こうとしたよ。


「インクなら使用人に言ったら持ってきてくれる」


 当然のようにカジミールが言うから、リアムはまた笑ったよ。


「そういうところ、貴族ですよね。俺は平民なんで自分で買いに行きますよ。それにまだまだシランスの街を見たわけじゃないし」


 カジミールは眉を寄せて、自分のどこが貴族っぽいのか考えたみたい。


 ヒューゴに午前中の騎士団の活動や事件などの報告していると、考え事をしていると見破られてしまったから、素直にリアムとのやり取りを話したんだ。そういうことを生真面目に考えるカジミールに、ヒューゴは面白いなと思って笑っていたよ。


「使用人を使うのが貴族っぽいということだね。彼は居候で身分は平民だ。同じ平民で、領主である私の使用人を使うのが気が引けたのだろう。

 でもリアムが一人で街に出るのはよくないかもね。過激なシエロ教徒もまだいるわけだし」


 夕食時にリアムを招いて、ヒューゴは一人で出歩かないようにと言ったんだ。リアムは窮屈な思いをしているけれど、一度シエロ教徒に無理矢理連れて行かれそうになったからね。


 外に出るときはガレオかアルマンがついていることになったよ。


 ヒューゴはリアムがインクを補充するペンを使っていると聞いたから、魔法具のペンをプレゼントしたよ。これでリアムはインクを買わずに済むよ。


 魔法具のペンは高いから、リアムは受け取っていいのかと思ったらしいけれど、ヒューゴは自分の領のためにリアムが勉強しているからってお礼だよって言ったから受け取ったんだ。


 食事が終わり、リアムは部屋で図書館で借りた本を開いたよ。


 雷が鳴りはじめて、本に集中できなかったよ。気になってしまって、窓の外を見ていると大きな稲妻が、シランスの森へ落ちたんだ。


「被害がなければいいけど」


 集中集中と言って、読んでいると魔法の属性に関する研究があったよ。魔力には種類があるから属性が分かれていると書かれていたんだ。


「魔力には種類がある。だから水属性なら水しか出せないんだね。

 人それぞれ魔力って違うのかな?フーが俺の魔法を辿ったって言っていたけれど、魔力を嗅ぎとったのかも」


 雷の音が小さくなると、リアムは被害がなかったかなってカーテンを開けて街の方を見たよ。すると森の方が真っ赤に燃えていたんだ。


「大変だ!」


 森が燃えているだけかもしれないけれど、近くに住んでいる人はたくさんいて、民家まで燃え広がっているかもしれない。


 リアムは急いで着替えて、腰に剣をさして杖を持ったよ。


 階段を駆け下りると、玄関にヒューゴとカジミールがいたよ。


「森が!」


「リアムも見たみたいだね。森の方に落ちたけれど、燃え広がっている。早くしないと街へ炎がくるかもしれない。手伝ってくれるかい?」


「もちろんです」


 ヒューゴはすでに森の周辺住民に避難指示を出していたよ。


「私もいく。リアムも車に乗れ」


 騎士団の車が門の外に止まっていて、カジミールを待っていたよ。


「わかりま…」


「ぱぱ!」


 フーが鞍をくわえて来たよ。


「ここさむい。あっちいく」


 燃えている森へ顔を向けたよ。さすが火の鳥というべきかな。火の近くがいいみたい。


「馬鹿いえ。そばにいると焼き鳥になるよ」


「えー。ぱぱ、いかない?さむくない?」


 プラット村よりシランスの方が年間の平均気温はニ、三度違うし冬になれば半袖だと夜は冷えるよ。


「俺はこのくらいの気温がいいな。フーはここにいて。俺らは火を消しに行く」


「みんなのおうち、もえちゃう?」


「うん、燃えちゃう」


「ふぅもけす!」


 フーも行く気みたい。リアムは鞍をしっかりとつけたよ。


「リアム、空は危ないよ」


 ヒューゴが心配するけれど、リアムは杖でフーを覆うくらい大きい対雷の防御魔法を展開したんだ。


「多分これでいけると思う」


 リアムはフーに乗って飛んでいってしまったよ。


 この日、街には落雷はなかったみたいだけれども、道には兵士たちの姿以外なく、息を潜めているように静かだったんだ。


 防御魔法を展開しながら、天候に気をつけていたよ。


「フー。もう少し右へ行って!」


 言われた通り、フーは森へまっすぐ飛ぶのではなくて、右方向へ進路を変えたよ。


 直進しようとしていたところに雷がドーンと落ちたんだ。


「うん。視える。いける」


 森へ近づくと煙と炎が充満していたよ。すでに民家のそばまで火が迫っていたんだ。


「フー、火を消せるか?」


 まだまだ遠かったのか、フーは無理だって言ったよ。


 リアムも雷を気にしながら、魔法を使うのは難しかったよ。


 魔法の射程距離に入ると、フーは魔法で民家に近いところの火を消したよ。でもまだまだ炎は広がっているんだ。


「なら…」


 雲はたくさんあるから雨は降らせやすい。リアムは杖を使って雨を降らせたよ。


「ふぅも、ひをけす!」


 どちらがたくさん火を消せるか競争になったよ。


 もちろん、雷に気をつけながらね。だからリアムはちょっと不利だったかな。


 森の火は三十分ほどで消えたよ。リアムもフーも疲れちゃったんだ。


 森の近くで兵士たちの姿が見えたから、降りたよ。


「怪我人はいませんか?」


 兵士たちは火が消えたから、被害の確認をしていたみたい。消火活動中に負傷した兵士は治療中だったよ。


 森の火が鎮火する少し前にカジミールも現場に到着したんだ。


 あっという間に火を消していくリアムたちに、住民も兵士も歓声をあげていたよ。


「英雄が現れたぞ!」


「ランバートの英雄の再来だ」


 リアムの父シャルルは生前シランスの街で落雷の被害があったとき、消火を手伝っていたんだ。それもあって、シャルルはシランスの街の人たちに今も人気なんだよ。


 それを聞いてカジミールは、リアムが果たして喜ぶかなと思っていたよ。


 降りてきた二人をカジミールは労ったよ。


「大規模魔法を使って大丈夫なのか?」


 フーも魔法連発していたから、いくら魔鳥でも魔力が枯渇すると思ったんだ。


「俺は杖があったけど、雷を避けてだったから気が疲れました。フーは大丈夫だと思います」


 おなかすいたぁと森に行きたがっていたから、行かせてあげたよ。


「元気だな」


「本当にだめなら、手伝ってくれないし、さっさと獲物狩りに行ってますよ」


「では、フーは問題ないとして、杖の魔力は残っているのか?」


「使い切っちゃいました」


 騎士団用の魔力補填機を使わせてもらうことにしたよ。


 被害や安否確認が終わる頃、フーが戻ってきたよ。何やら足に魔物を掴んでいたんだ。


「あさごはん!」


「いいのが捕れたな。そろそろ帰ろう」


「うん!」


 フーが足に握っていたのは、部隊を組んで討伐するような凶暴で知られる魔物だったよ。それを朝ごはんにするとは、カジミールや兵士たちも驚いていたよ。


「さすが伝説の魔鳥だな。強い。フーがいれば魔物の被害も減りそうだ」


「弱い魔物は怖がって、フーがいるだけで近寄らないですけどね。でもフーも魔物なんで、暴れたら被害は凄いだろうし、いつ野生に帰るかわかりませんから」


 一瞬で広範囲の火災を消してしまうということは、逆に燃やせるということだよ。燃やす方がフーは得意みたいだけどね。


 カジミールもフーが、リアムが怪我をして怒って暴れたのを見ていたからね。野生に戻らないよう願うばかりだったよ。


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